小さな雀士
居間には、牌を混ぜる心地よい音が響いていた。
「たまには家族で打とう。」
父の一言で、父、母、祖父の三人が卓を囲む。
曽祖父は少し離れた場所で、お茶を飲みながら静かにその様子を眺めていた。
その横では、一歳の結咲が小さな麻雀牌を手に遊んでいる。
「チー!」
「またその言葉。」
母は苦笑した。
「『お母さん』より先に『チー』や『ロン』を覚える子なんて聞いたことないわ。」
「ポン!」
結咲は嬉しそうに笑い、父の膝によじ登る。
「じゃあ、結咲も一緒にやるか。」
父は冗談半分で、小さな麻雀牌を結咲の前に並べた。
結咲は一枚ずつ牌を並べていく。
「ロン。」
家族は微笑みながら見守る。
最後に結咲は一枚の牌を引くと、満面の笑みで高く掲げた。
「ツモ!」
父は何気なく結咲が並べた牌を見る。
「……え?」
母ものぞき込む。
「うそ……。」
祖父は思わず立ち上がった。
そこに並んでいたのは、誰が見ても見事な和了の形だった。
しかも、高得点の手。
部屋は静まり返る。
その沈黙を破ったのは、曽祖父だった。
「……やはりか。」
ゆっくりと立ち上がり、結咲の頭を優しくなでる。
「この子は、生まれながらに雀に愛された子。」
「小さな雀士……いや。」
曽祖父は穏やかに微笑んだ。
「今日から、この子は『ツモ姫』じゃ。」
結咲は意味も分からず、小さな麻雀牌を握りしめたまま、にっこりと笑った。
「ツモ!」




