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ツモ姫  作者: 耀
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18/31

兄の約束②

麻雀卓を挟み、一輝と謎の敵は向かい合っていた。

静かな空間に、牌の音だけが響く。

カチッ。

一輝の表情は変わらない。

普段の穏やかな姿とは違う。

長男として。

兄として。

守るべきもののために戦う顔だった。

「面白い。」

敵は笑う。

「妹のために、そこまで変わるか。」

一輝は牌を見ながら答える。

「当たり前だ。」

「結咲は俺の妹だから。」

その言葉に迷いはなかった。

一輝の打ち方は、派手ではない。

しかし、隙がない。

相手の流れを読み。

危険を避け。

勝つための道を確実に進む。

彰はその姿を見ていた。

「……強い。」

思わず口に出る。

雀力だけではない。

一輝は、自分が何のために戦っているのかを理解している。

それが強さになっていた。

敵は大きな手を狙っていた。

「ここで終わりだ。」

強烈な一手。

しかし。

一輝は静かに牌を置く。

「それは読んでいた。」

敵の表情が変わる。

一輝は流れを変えた。

少しずつ。

確実に。

追い詰めていく。

「なぜだ。」

敵が問う。

「なぜ、そこまで冷静でいられる。」

一輝は答える。

「守りたいからだ。」

「怒りや焦りで戦えば、守れるものも守れない。」

「兄なら、大切なものを守るために冷静でいる。」

その言葉に、彰は静かに頷いた。

それは、護衛としての考え方にも通じていた。

そして。

最後の一局。

一輝は牌を引く。

その瞬間。

幼い頃の記憶が蘇った。

小さな妹。

初めて抱いた結咲。

家族みんなが笑っていた日。

そして――。

雀キング大会で優勝した日。

あの日。

勝利の知らせを聞いた直後。

結咲が生まれた。

一輝にとって、あの日は二つの奇跡が重なった日だった。

「だから……。」

一輝は牌を置く。

「俺は負けない。」

「結咲が生きる未来を守るために。」

勝負は決着した。

敵は静かに立ち上がる。

「なるほど……。」

「光一が守ろうとした理由が、少し分かった気がする。」

彰が反応する。

「光一を知っているのか。」

敵は答えない。

「まだだ。」

「真実を知るには、時間が必要だ。」

そう言い残し、姿を消した。

静かになった場所。

結咲は一輝のもとへ歩いていく。

小さな手を伸ばす。

「にぃ。」

一輝はしゃがむ。

「どうした?」

結咲は一輝の手を握った。

そして、嬉しそうに笑う。

その笑顔を見て、一輝も微笑んだ。

「ありがとう。」

「結咲。」

「兄ちゃん、これからも頑張るからな。」

帰り道。

彰と一輝は並んで歩いていた。

「今日は助かった。」

彰が言う。

一輝は首を振る。

「俺は兄として当たり前のことをしただけだ。」

彰は少し笑う。

「それができる人間は、強いと思う。」

一輝は少し驚いたあと、笑った。

「彰に言われるとは思わなかった。」

二人は顔を見合わせる。

立場は違う。

彰は護衛。

一輝は兄。

でも。

大切な人を守りたいという気持ちは同じだった。

その夜。

和光界。

光一は静かに地上を見ていた。

そこには。

結咲の笑顔。

一輝の優しい表情。

彰の信頼。

光一は何も言わない。

ただ――。

優しく微笑んだ。

「……。」

受け継がれたものは、力ではない。

誰かを守りたいと思う心。

それが、人を強くする。

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