長女の涙⑤
その日の夜。
志希は静かな部屋で、今日一日のことを思い返していた。
ずっと怖かった。
家族に本当の気持ちを話すこと。
「才能がない自分」を見せること。
でも、実際は違った。
誰も責めなかった。
誰も離れていかなかった。
むしろ、ずっと自分の味方でいてくれた。
「……私、何を怖がっていたんだろう。」
志希は小さく笑う。
その時、部屋の扉が開いた。
「志希。」
祢音だった。
「少し話さない?」
志希は頷く。
二人は静かな時間を過ごす場所へ向かった。
祢音は志希の顔を見ると、優しく微笑んだ。
「今日の志希、本当に強かったね。」
志希は首を横に振る。
「全然強くないよ。」
「ずっと泣いてたし。」
「でも……。」
祢音は言葉を続ける。
「泣きながらでも、自分の気持ちを伝えた。」
「それは、とても勇気がいることだよ。」
志希は少し照れながら笑う。
「優梨にも同じこと言われた。」
「優梨は本当に大切な友達だね。」
「うん。」
志希は頷く。
「私、ずっと麻雀の才能だけで自分を見てた。」
「でも今日分かった。」
「私にも、できることがあるんだって。」
祢音は静かに頷いた。
「そう。」
「志希は誰かを守りたいと思える人。」
「それは立派な力だよ。」
志希は空を見る。
「いつか……私も結咲ちゃんを守れるかな。」
祢音は迷わず答えた。
「もちろん。」
「結咲ちゃんが必要としているのは、強い雀力だけじゃない。」
「優しい人の存在も必要だから。」
志希は笑った。
「ありがとう。」
「祢音さん。」
二人の間に、穏やかな時間が流れる。
その頃――。
和光界。
静かな光に包まれた場所で、光一は地上を見つめていた。
そこには、笑顔を取り戻した志希の姿。
そして、小さな手で周りの人を繋ぐ結咲の姿があった。
光一は何も言わない。
ただ、優しく微笑む。
自分が残した想いは、確かに受け継がれている。
白。
発。
中。
大三元の力。
それは勝つためだけの力ではない。
誰かを大切に思う心。
誰かを守ろうとする想い。
それこそが、本当の力なのだ。
光一は静かに目を閉じた。
これから先も。
結咲たちは、迷いながら進んでいく。
でも大丈夫。
もう一人ではない。
繋がった想いが、未来を照らしていく。




