その7 追放された
さて。
二年たった。
十五歳になった私がどうなっているかと言うと。
「セレネよ!お前のような無能は、我が『赤い稲妻団』には不要だ。今日をもって追放する!」
と、リーダーから指を差されていた。
あんまりにもテンプレで、絶句する。
いやーホントにこんな事言う人、いたんだ。
と同時に深夜、カップラーメンを啜りながら見た、いくつかの深夜アニメが脳裏をよぎる。
いっぱいあり過ぎて、何が何だかもう覚えていないけど。
「ちなみに、どの辺が無能なんですか?」
一応聞いてみる。
他の魔法使いが、古代語魔法を一生懸命に詠唱している間に、「地震」「火花」「つむじ風」「怯え」の魔法を駆使して、魔獣を追い払う事八度。
最近では魔獣も、恐れて近づかなくなって来た。
それで無能とは、恐れ入谷の鬼子母神とはこの事よ。
「呪文をまともに唱えられない無能だろう!しかもその格好だ!」
赤い稲妻団は、ユール王国から依頼を受けて辺境での魔獣災害対応にあたっている。
いわゆる傭兵団だけど、リーダーのアルダーは、自分で「勇者」を名乗っちゃうような、ちょっとイタイ所がある。
剣士としての腕はまあまあなんだけど、女の子にキャーキャー言われるのが大好きで、なんと赤い稲妻団のメンバーは、アルダーよりハンサムは入れない。
そして女子はみんな、ビキニみたいな防具にマントという格好に統一させられていた。
私を除いて。
いやいや。
あの谷間へそ出し服のどこが防具なの。
まだ裸エプロンの方がマシだよ。少なくとも揚げ物の油ハネぐらいからは、体を守ってくれそう。
「服が問題って事?」
全力で抵抗したので、私は普通の服だ。
分厚いシャツに、作業服っぽいズボン。ゴツい長靴。
日曜日に庭掃除するオッサンの格好だ。
でも魔獣退治なんだから、怪我しないのが1番でしょ。
だけど。
「そうだ!我が『赤い稲妻団』は、協調性を重んじる。和を乱し、自分だけ良しとするその心根を、無能と断じる!」
うわ、キモ。水着着せたいだけじゃん。
と思う十五歳の私と、いっそ清々しいな、と思う四十七歳のオレがいる。
もうちょっとで裸みたいな服、そりゃ男は嬉しいよ。それを堂々と口に出せる、その意気や良し。
清々しい馬鹿だ。
周りを見ると、そうだそうだと頷く連中と、マジか、とげんなりしている主に女子たち。
赤い稲妻団は、総勢十七人。
傭兵団としては小さい。
その分精鋭で、小回りが利くとも言える。
「契約金は返しませんけど?」
一応、確認する。
赤い稲妻団に入る時に、それこそ一年ぐらいは医者が雇えるぐらいの契約金を貰った。
ほとんど使っちゃったので、返せと言われたら困る。
「俺はそんなみみっちい男じゃねぇ!そんなはした金、持ってどこでも失せろ!」
アルダーは格好よく啖呵を切った。
ヤッター!ラッキー!
丸儲けだよ。
「じゃ、そーゆーことで。」
詰め所になっている、村唯一の宿泊施設のドアを開けた。
「お元気で!」
○いイナズマが〜僕を責める〜
などと昔のアイドルの歌を歌いながら、歩き出す。
とりあえず、エドモン先生に報告しに行こう。
二年前。
魔法学校副学長のエドモン先生に呼ばれた私は、デタラメな魔法の事がバレて、1つの提案をされた。
このユール王国は、赤大陸で最も東に位置している。
とは言っても、赤大陸にはこのユール王国と、南側にあるフラメ王国の二つしかない。
で、両国とも西側が広大な森に面しているんだけど、ここの開拓が一向に進まない。
定期的に魔獣の襲来があり、農地も広げられないし、人口も増えない。
で、王国から、優秀な魔法使いをぜひ魔獣退治に送って欲しいと、毎年魔法学校に依頼が来ているのだそうだ。
戦術系の学科に進んだ生徒は、ほぼもれなく打診がある。
ただ命の危険もあるし、二十四時間三百六十五日なブラック職場だし、そもそも卒業生がヒトケタなので、応募は常に足りていない。
そしてその分、驚くほどの高給が約束されている。
「君のそのデタラメな魔法なら、命の危険は少ないし、他の仲間も無駄死にを防げる。どうだろう。」
ずいぶん迷ったけど、毎年契約という形で、魔法学校の方は休学扱いにしてもらって、何時でも戻れるという条件なら、と引き受けた。
何しろ、魔法学校の学費だってそこそこかかる。
卒業してなくても高給取りになれるなら、そっちの方がいい。
そこから二年。
赤い稲妻団に配属になって、辺境を転戦してきたけど。
魔獣より、むしろセクハラリーダーの方がきつかった。
今日でお役御免だ。
超ラッキー。
「アルミ缶の中に、あるミカン。」
これもいつだったか、思い出したオヤジギャグ。
唱えると、手持ちのカバンとかポケットに、ミカンが一個現れる。
唱えれば唱えるだけ出て来る。
しかも美味い。
若干飽きるけど、当分飢え死にはしない。
あともう一つ。
「隣の空き地に囲いが出来たってね!へー、かっこいー!」
これ、何も起きないのかと思ったら違っていた。
魔法障壁が発動する。おそらく大抵の攻撃に有効だ。
では魔法学校まで、徒歩で十日はかかるけど、のんびり遠足といきますか。




