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転生チート魔法使いだったのに、世界は意外にシビアだった話  作者: たかなしコとり
第3章 結婚

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その46 出立式

親を連れていきたいか、と聞かれて断った。

これは観光旅行ではない。冒険であり、開拓だ。

うちの家族には、それぞれの生活がある。

連れて行くのはムリ。


出航前日、王宮で盛大な壮行会が執り行われた。

みんな、晴れがましい顔半分、不安半分の表情をしている。


どこにも辿り着けないんじゃないか?

辿り着いたとしても、不毛の荒野なのでは?


でも大丈夫。

他の大陸にもちゃんと人が住んでいる事を、私は知っている。


何で知ってるのかと聞かれても答えられないけど、なぜか知っている。


「ホントに行くの?」

その夜。さすがに気が立って眠れないでいると。

あの男の子が不意に現れた。


久しぶりな気がするし、ついこの前会った気もする。


「実体?」

「だって君、いつまでも寝ないし。」


男の子は、私が使っている王宮の客室の、ベッドのそばの椅子に座った。


「ちょうどいい所に。聞きたいことがあったんだ。外洋にでたら、あなたにもらった魔法は使えなくなる?」

「そんな事はないよ。僕が取り消すまでは、ずっと使えるけどさ。」


男の子は、椅子の上であぐらをかいた。

「何かさー、つまんない。もっとこう、敵国の姫をぎゃふんと言わせるみたいな、痛快アクション、ないの?」


寝間着の私は、腕組みして男の子を見つめた。

「何言ってんの。ちゃんとお望み通り、傭兵団から追放されて、アルダーをぎゃふんと言わせて、エドモン君に溺愛されてるじゃん。強力魔法で、誰にも行けなかった外海に出航して、伝説になるのよ。ラノベのネタだったら十分でしょうよ。」


ちなみにエドモン君はまだ、出航の準備に追われて、戻って来ていない。

男の子は、口を尖らせた。


「そりゃそうだけどさ。」

「なんだったら、東の大陸で何かしら活躍してやるわよ。」

私がそう言うと、


「うーん。まぁいいけどさ。東の大陸は、いくらか人が住んでるけど、文化レベル、ここよりずっと低いよ?」


男の子は、クローゼットに掛けてある私のドレスを見た。

「インフラ整ってないし。あんな素敵ドレス着ても、泥汚れとウ○コ汚れで、すぐ着られなくなるよ。」

「ウ○コ汚れとか言わないで。」


うちの田舎もそこそこインフラ不備だったので、まぁ分かる。


「ずっと隣村といがみ合ってる感じで、食べて行くのに精一杯。それでもホントに行くの?」

「行ってみたいのよ。」

「ふーーん。」


男の子は肩をすくめた。

「まぁいいか。たまには僕の子孫を外に出しても。」

「子孫?」

「うん。この大陸に住むヒトは、三分の一は僕の子孫。君で大体二十代ぐらいの曾孫になるかなあ。」


頭が真っ白。

「お、おじいちゃん・・」


「その言い方、傷つく。」

神様ではなく、ご先祖様だった男の子は、可愛らしくぷぅと頬を膨らませる。

「とにかく、そんなに行きたいなら、外を見て来るといいよ。」


何か色々突っ込み所はあるけど、あんまりびっくりして、それ以上は聞けなかった。


というわけで。

翌日は出立式。


大型の帆船を付けられる港は、王都を流れるゼート河の河口の街にしかないので、とりあえずそこまで、もう少し小型の船で移動する。


大勢に見送られて、色とりどりの布で飾られた船へのタラップを渡る。

観衆の中にはカリン姫もいた。貴賓席に座っている。

遠くからでも分かる、真っ青な顔をしている。


ふっふーん。

エドモン君は、あなたと結婚するぐらいなら、明日をも知れぬ冒険の旅に出た方がマシなんですってよ。


とか言ってやりたい。


でもどっちかというと、どさくさで自分の願望が叶って、エドモン君は超ご機嫌。

カリン姫のことなんか、全然眼中にない。

むしろちょっと可哀想になる。


「カリン姫に挨拶したの?」

横に立って父王や兄王子達に手を振るエドモン君に、こっそり聞いてみる。

「あ」

すっかり忘れていたらしいエドモン君は、貴賓席のカリン姫を探して、おそらく目があったんだろう。

満面の笑みで手を振った。


わなわなと肩を震わせているのが、ここからでも分かる。

ごめん。なんか火に油を注いだかも。


出航します、との声がかかる。

もやってある綱が解かれ、船はしずしずと動き出した。

歓声が、一段と大きくなる。


とりあえずみんなが見えなくなるまで甲板に立って手を振る。

そして、勧められた椅子に座った。


「この日を待っていたんだ。」

エドモン君は嬉しそう。

私も嬉しい。

この国は、あの神様っぽい男の子の箱庭だったので、ちょっと納得出来なかった。


外から見ることが出来れば、色々腑に落ちる事もあるだろう。


河を下ること、三日。

ずっと天気も良く、すれ違う猪牙舟に手なんか振ったり、のんびりの船旅。


河口の港に着くと、今度は本当の大型帆船に乗り替える。

さぁ、外洋へ出発だ。


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