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転生チート魔法使いだったのに、世界は意外にシビアだった話  作者: たかなしコとり
第3章 結婚

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その47 最終話 え、くそ、だす?

Exodus=脱出。大量出国



出航する時に、何隻かの船が、護衛について来てくれた。

確かに、港からある程度離れると、遠くに大きな魚のヒレらしきものがいくつも見えるようになった。


「隣の空き地に囲いが出来たってね!へー、カッコイー!」

すわ水棲魔獣か、と戦う準備をしたが、結局近寄って来なかった。


そして近寄って来ないのを確認すると、一隻を残して護衛船は下がった。

「あれは一緒に行く船ですか?」

「うん。」


東の大陸に着いたら、直ちに住居を作り、柵をおいて、高速移動陣用の塔を作らなくてはならない。

そのための工作兵が二十人ばかり乗っているらしい。


「いきなり基地作りなんですねー。」


ちょっと感心する。

普通は何度か行き来して、最適な場所を探してからなんじゃないかと思うけど。


「あの魔獣の群れを、君無しで突破出来るか分からないからね。僕は別に戻りたくはないけど、部下はそうはいかない。故郷に戻る手段を確保しておかないと。」


なるほど。優しい。


時折「布団が吹っ飛んだー」を小声で唱える事で、帆船は順調に進む。


「君のそのデタラメ魔法、国の外に出たら使えなくなるかと思ったけど、大丈夫そうだな。」

「うん。この魔法くれたカミサマがね、外を見て来いって。」


カミサマというか、ご先祖様。

実体だったのか、幽霊だったのか。

少なくとも四百年から五百年は前の人って事だ。


旧約聖書では、ノアの方舟で助けられた人々は寿命が百年とかになったけど、それ以前の人々は、寿命が途方もなく長かったらしい。

そういう事かな。


三センチ浮くクッションを持って来ているので、ありがたい事に船酔いはそんなにない。

一緒に来てくれた護衛士の人達は、甲板でゲロゲロ吐いていたけど。

これは残念ながら、治癒魔法があんまり効かない。効いても一瞬だ。


一日だけ雨に降られたものの、ひどく荒れることもなく、十日ほど経ったある朝。

「陸が見えるぞ!」

声が上がった。


おお。

今まで水平線しか見えなかった東の彼方に、山と思しき黒い影が見える。


陸地だ。

東の大陸に来た。

うおぉと、あっちとこっちの船から歓声が上がった。


甲板に出て来たエドモン君が、両手を振り上げて喜んでいる。


「君のおかげだ、セレネ!」

私を抱きしめた後、顔を覗き込んでキスした。

「泣くほど嬉しい?」


そう言われて、やっと自分が泣いていることに気が付いた。

「世界がちゃんと広い事に、感動しているんです。」

「そうだな。俺もそうだ。」


ーーー


もちろん、上陸するのにはさらに三日ほどかかった。

山が高過ぎて、見えてから近づくのに相当かかったのと、海岸線を周っても船を寄せられる港が全然見当たらなかったせいだ。


結局帆船は沖に停泊させたまま、上陸船を使って浜辺に上がった。


護衛士さんたちがずいぶん探ったけど、人の気配はなかった。

いくらか人が住んでいるって話だったけど、この辺りにはいないのかも。


ま、いずれ会えるかも知れないけど、とりあえず上陸してすぐの所に天幕を張って、ユール王国の旗を掲げた。

「ここを、ユール王国の領土とする。」

エドモン君が宣言した。


もっとも、結局四年後には、私達夫婦を含めた希望者全員で一旦引き上げる事になる。


それまでにはそこそこ開拓も進み、一緒に来た十六人が食べていけるだけの小麦畑も出来ていたし、領土の境に壁を作り、高速移動陣用の塔の建設と保全も完了していた。


いやー。役に立ったね、オヤジギャグ魔法。


船を使って東の大陸の海岸線を計測し、東南部については地図も作成している。


ところが、どこかからやって来て領地の隣に住み着いた集団があった。

そこがちょいちょい泥棒に来るので、サクッと戦って折伏し、奴隷にしたところまではよかったんだけど。


でも残念ながら私もエドモン君も、支配者ってガラではなかった。

奴隷にした五十人余りを持て余したのだ。


武器も服もお粗末。ちゃんと食べてないのでガリガリ。言葉も通じない。

これをどうしろっつーの。


それに、こっちで生まれた息子は三歳になったけど、遊び相手もいないし、一人で野山を駆け巡って野生児化している。勉強もそろそろ心配だ。


なので、母国と連絡を取り、こんな僻地でも領地が欲しい、という貴族の次男とか三男とかを領主として寄越してもらい、治めてもらう事にしたのだ。


来るのも大変だけどね。

何しろ高速移動陣使っても、ユール王国からここまで丸二日とかかかる。


あれはかなり精密な魔法陣で、大勢を運ぶのには向いていない。


従って、向こうから来たコーヒーカップに、こちらから帰りたい人を乗せて戻る、という事を二カ月以上も繰り返して、人員を移動させた。

後は新領主に丸投げ。


私達はカリン姫にバレないよう名前を変えて、王都の隅に魔法医の診療所を開いた。

カリン姫は、さすがに諦めたのかそもそもの婚約者とちゃんと結婚したらしい。すでに一児の母だと言う事だった。


「で、どうだった?」

ある日、あの神様っぽいご先祖様っぽい男の子がやって来て、二人目を妊娠して診療所を夫に任せっきりにしている私に聞いた。


「楽しかったよ。」

結構な冒険だった。楽しかった。


「この国の印象は変わった?」

ここはドラゴンのエサをヒトの肉で養殖する国だと言う事を、向こうで暮らしているうちに思い出していた。

それでも戻って来たのは、どんな国でもいい所ばかりではない、と身に沁みたからだろう。


この国は神様の箱庭だけど、だからこそ居心地良く、安心して暮らせる。

とにかく、自分だけなら冒険もいいけど、子供は安全な所で育てたいよね。


このご先祖様の男の子も、きっと同じ事を考えて、自分の子孫のために手をかけて世界を育てたんだろうと思う。


「いい国だよね。」

私の言葉に、男の子はにこっと笑った。

「良かった。」


《完》

迷子になりまくった話も、これで一応完結です。

軌道修正を何度か試みましたが、どうにもなりませんでした・・笑


無双のチート魔力を持っていても、世界が平和なら使い道困るよね、という話だったんですが・・・。

すっかり道を見失ってしまいました(涙


ここまでお読み頂き、ありがとうございましたm(_ _)m

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