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転生チート魔法使いだったのに、世界は意外にシビアだった話  作者: たかなしコとり
第3章 結婚

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その37 更生は期待しない

数日は、宿屋のベッドから動けなかった。


様子がおかしい事を、エドモン君は特に問い詰めたりしなかった。

四ヶ月遅れの新婚旅行を、ただゴロゴロイチャイチャ過ごした。


最初の頃は、お互いにお互いの素っ裸を正視できなかったけど、もはや服着るの面倒くさいぐらいまでになった頃、ふと思い出す。


「学校の授業とか、あるんじゃないの?」

「んー。まあ、ある。」


私の裸の肩に、キスマークつけながらエドモン君は応じた。

「いいの?」

「魔獣退治に出掛けると言った時点で、一ヶ月の有休になる。」


「でももう、ここに来て半月は経ってるよ。」

「そうだな。君がいいなら、王都へ戻ろうか。」

「うん。」


思い立ったが吉日。

早速荷物をまとめて、宿屋を引き払った。

半月引きこもっている間に、辺りはもう早春の気配だ。


「あの垣根・・ばん・・ナントカはもういいのか?」

馬車で、高速移動陣の駅まで送ってもらいながら、エドモン君が聞いた。


「アレは、警備隊の人が、時間のあるときにやればいいかと思って。」

言葉を選んでそう言うと、エドモン君は怪訝そうだった。


「名案だと思ったがな。」

あの勢いで育ったら、魔獣に踏み潰される心配はない。


「止められたので。」

「誰に?」

「今は言わない。」

信じて貰えないかも知れないから。


「分かった。君が話してくれるまで、待つ。」

エドモン君は、自分がトラウマ持ちだからか、絶対に無理には踏み込まない。


例のコーヒーカップに乗った後、流れる景色を見ながら、聞いてみる。

「魔獣の中に、ヒトを食べるのがいるでしょ。あれ、ひどいよね。」

「そうだな。俺もどうかと思う。ヒトの味を覚えたら、次もヒトを狙うからな。」


いつものように寝転がりながら、エドモン君は応じる。

「しかし、うちもフラメ王国も、死刑は基本的に西の森に放逐という形を取る。」


「えっ」

そうだっけ。


「余程の重罪を犯した者は、西の森の刑場に連れて行かれる。一ヶ月後には骨になっている。」


そう言えば、罪人の刑務所って割に国の西側に偏っている。

開拓を進めるのに人手が必要だから、と聞いていたけど。


実はエサ候補。


「悪事を働くヤツには、更生を期待出来ないのも多い。善人が平和で幸せに暮らせるようにするには、それもまたやむを得ない事かも知れない。」


半分うつらうつらしながら、エドモン君は言う。

「しかしそれで魔獣がヒトの味を覚えて住人を襲うんじゃ、問題があるとしか言えない。」


うん。

でももしかしたら、それも国策の一つなのかも。

国王陛下とか、もしかしてこの世界のカラクリを知っていて、見て見ぬふりなのかも。


王都に戻って、私は魔法学校の図書館に引きこもった。

どうせ私にはする事がない。

何か昔の事が分からないかと、片端から本をめくる事にしたのだ。


でも歴史については、あんまり記述がない。

中学で習う縄文時代みたいに、ざっくり。


いくつか見たけど、祖先は太陽の国からこの国の東端に降り立った、と判で押したように書いてある。


「ダメかな〜。」

独り言をつぶやいていると、エドモン君が上から覗き込んだ。


「王族は禁書庫にも立ち入れるぞ。あと、王宮にも書庫がある。」

「そうなの?調べてみたい。」

「分かった。申請しておこう。」


夕食を取るのに、二人で食堂へ向かう。

「エドモン君。」

「なんだ。」

「私と国とどっちを取る?って聞いたら私って言ったよね。」

確認する。


「言ったな。」

「私が、船で、海を渡るって言ったら、一緒に行く?」


食堂の入り口でトレーを取りながら、さすがにエドモン君は目を丸くした。

「渡れるのか?」

「ほら。海棲魔獣をやっつけながら、外洋に出られたら。後は東に向かって進んだら、太陽の国ってのに辿り着けそうな気がする。」


適当に料理を取り分けて、席に座る。

しばらく呆気に取られていたエドモン君だが、やがて表情が楽しそうにほころんだ。

「本当なら、話に乗る。」


「帰って来れなくても?途中で沈没するかもでも?」

突っ込んで聞いてみる。


「君はいいのか?両親や兄弟を置いて、行けるのか?」

「うちの親兄弟は、連れて行く。」

「沈没するかも知れなくても?」

「うん。」


みんな、ここが養ヒト場とは知らない。

大体平和で、すごく治安も良くて、魔法文明も進んでて、大抵は自分がエサ候補だった事も知らないまま、普通に生きて、寿命が来て普通に家族に看取られて死ぬ。


幸せかも知れないけど。

それっていいの?


そう言えば、アルダーの傭兵団もそうだけど、割に荒っぽい人が多い。

仕事が仕事だけに、そういうもんかと思っていたけど。

遊びで猫を殺したとか楽しそうに話して、女の子達にドン引きされていた。


そういう人達を狙って、西に送り込まれていたとしたら。

治安も良くなり、魔獣のエサも調達出来る。

一石二鳥。


国策としてはいいのかも。

でももし、それで足りなくなったら。

品行方正で、おとなしくて、働き者の国民ばかりになった時、誰が、魔獣のエサに選ばれるの。


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