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転生チート魔法使いだったのに、世界は意外にシビアだった話  作者: たかなしコとり
第3章 結婚

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その36 世界の秘密

「でも、だからってやられっぱなしは嫌だ。」

私はエサなんかにならない。


「だからさー。個体数を調節しているんだって。お互いにウィンウィンになるように。」


男の子は大真面目に言った。

なんか急に、目の前のこの子が得体の知れない物に見えてくる。


「調節?」

「コチューンは、別にヒトしか食べない訳じゃない。ヒトが減り過ぎたら、そっちに行かないようにして、小麦を豊作にする。そしたら十年ぐらいでヒトが増えるから、コチューンに食べさせる。」


怖っ。


「あんた一体何者なの。神様なんじゃないの。」

「だから違うって。前に言わなかったっけ?」

男の子は首をかしげる。

「僕はねー、まぁ羊飼いみたいなもんだよ。増え過ぎないよう、減り過ぎないよう見張ってる。」


飼っているのはヒト?コチューン?


「じゃあ、わ、私はあなたの、何?」

羊?

男の子は笑った。ホントに邪気のない笑顔。


「この仕事、すっごく退屈なんだよね。ちょっと面白い事ないかな~と思って、別の世界の人を呼んでみた。」


羊ではなく、気晴らしのおもちゃでした。

ひどい。

「あなたはドラゴン側の人って事だよね。」


そう言うと、男の子は首をかしげた。

「そうなのかな。最終的には、ヒト側だと思っているけどね。」


「何で。」


「ドラゴンはさ、コチューンでお腹いっぱいなら大した悪さをしない。でもお腹が減ってくると、火は吹くし、雷も降らせるし、雨も大量に降らせるし、後始末がホントに大変なんだよ。ヒトも大勢死ぬしね。それぐらいなら、最初からドラゴンを満足させておいた方が、よくない?」


理屈は、何となく分かる。

でも納得は出来ない。


「もし私が、垣根を作り続けたらどうするの。」

「それは困る。君につけた特典を、取り消さないとね。」


そうすると、どのみち垣根は作れない。

そして魔獣の襲来は定期的にやって来る。


「他の大陸の人は、どうしてるの。ここの人達が、犠牲を払ってドラゴンを養っていることを知ってるの?」


「知らないよ。君たちがここを離れられないように、向こうからも来られないようになっているから。」


「犠牲になっているのは、ここの人達だけなの?」

「だってその為に連れてきたんだもん。」

太陽の国から。

気持ち悪くなってきた。


「じゃ、よろしくね。垣根は、まぁ所々なら大丈夫だけど、全面は遠慮してね。」


男の子の姿はスーッと消えた。

目が覚めた。

起きるなり、吐きそうになった。


寝た気がしない。


しかもこのタイミングで、あの神様っぽい男の子にもらったもう一つの特典を思い出した。


『こっちで死んだら元の世界に転生し直す』。

これ、特典なのかな。


なんかもうベッドから起きたくない。

この国はヒトの養殖場だった。

何も知らずに、順番にエサになるのを待っている。

気持ち悪い。


ちなみにエドモン君は別の部屋だ。

一応結婚はしたものの、一緒のベッドだった事はない。


私がベッドの中で唸っていると、そっとドアをノックする音がした。


「セレネ?起きてるか?」


「・・ふぁぃ」

「朝食の時間だが。具合が悪いのか?」

朝日で部屋の中が明るい。


「気持ち悪いので、今日は起きたくないです。」

「・・入っていいか?」


返事を待たずに、エドモン君が入って来た。

「珍しい。自分の治癒魔法はかからないのか?」

「ちょっと、気持ちの問題で。」


毛布に潜り込んでいる私に、エドモン君はそっと近寄って、丸まった背中に手を当てた。

低い声の詠唱。治癒魔法だ。


少し楽になった。

意外。ストレスにもちょっとは効くんだ。


「どうした。何かあったか。」

声が優しい。泣きそう。

「エドモン君て、私の事、好きですか?」

毛布の中から聞いてみた。


しばらく間があった。

「好きか嫌いかのどちらだと言われれば、好きだが。」

「愛してます?」

「それは・・分からない。妻だから大事にしたいとは思う。」


正直者め。

涙がポロポロ出て来た。

「私が今死んだら、ちょっとは悲しいですか?」

「どうした。君は簡単に死ぬようなタマじゃないだろう。」

「悲しくない?」


返事には、またしても間があった。

「俺は他の女性と付き合った事がない。君しかいない。多分、君が死んだとしても、君しかいないだろう。」


毛布からちょっとだけ顔を出す。

振り向くと、美しい青い瞳と目が合った。

「それは悲しいって事?」

「無二の物を失いたくない。」

「それは愛してるって事だよ。」


腕をその首に絡めて引き寄せたら、キスしてくれた。

「じゃあ、私か、ユール国か、どっちを取るって言われたらどうする?」

「君を取る。」


即答だった。

むしろ私がびっくり。


「いいの?」

「いい。」

もう一度キス。


「俺からも聞いていいか?」

「何?」

「抱いてもいいか?」


思わず破顔した。

「そういう時は空気を読んで、押し倒すんだよ。」


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