↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生チート魔法使いだったのに、世界は意外にシビアだった話  作者: たかなしコとり
第3章 結婚

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
35/47

その35 山椒の木

もしかしなくてもタダ働きでした。


まぁいいんだけど。

移動中にも食事にも、全然お金かからないから、その分報酬が払われているとも言える。


先に戦っていた警備隊と合流し、サクッと魔獣退治する。

あらかた片付けて一息ついていると、


「魔女妃殿下!」


警備隊の人から声をかけられた。

えー。それ、私ですか?ダサー。


「わざわざのお越し、痛み入ります。」


感謝されるのは悪くないけど。

これ、毎回魔獣が出る度に呼び出されるのかな。

どうしたらいいんだろう。


「今まで、エドモン君も参加してたんですか?」

聞いてみる。

「いや。まあ。」

言葉を濁すエドモン君。


分かった。

つまり、私がいるから、行ってこいという話になったんだ。

ノーブレスオブリージュとか何とか言いながら、契約も契約金も要らない即戦力。

安い派遣さんよりタチが悪い。

ボランティアだ。


もー。

それならそれで、考えがある。

魔獣退治の度に駆り出されては敵わない。


踏み荒らされた小麦畑を見ながら、エドモン君に声をかけた。

「この先に、万里の長城を建てましょう。」


「え?ばん・・?」

「前から不思議だったんですよね。あの森から先は、開拓難しいんですよね?」

「そうだな。開拓村を作ろうとする度に、魔獣の大襲来がある。」

「だったらもうこれ以上は諦めて、魔獣が入ってこれないような、高い壁とか堀とかを作ればいいんじゃないですか?」


実は西の国境には、そう言うのが作られている場所もある。

でもずっとじゃないから、切れた所から魔獣が侵入して来る。


そこ、繋げちゃいましょうよ。


「どうやって。」

「ふっふっふ。」


私には必殺技がある。


翌日、苗木をいくつか手に入れて、小麦畑と森の間の荒れ地に向かう。


その苗木を数メートルおきに植えて、唱える。


「驚き桃の木山椒の木!」


ぐいっと苗木の枝が張った。

もう一丁。


「驚き桃の木山椒の木!」


カラタチに似たトゲトゲの木は、グイグイ伸びて、隣の木と触れ合う程になった。


やっぱり声が大きく届く所ほど、大きく育っている。

なので、全部が大体同じぐらいになるように声をかけて、高さが5メートルぐらいの生垣を作る。


「どうです?」

ドヤ顔をエドモン君にむけたら、我が夫は目を丸くして、生垣を見上げた。

「凄い。」


手間いらず。


今は、苗木が十本ほどしかなかったから、生垣もせいぜい百メートルって所だけど、苗木さえあって、ちまちま植えて行けば、いつか西の国境全部をカバー出来るだろう。


「一考の余地がある。」


エドモン君にそう言わしめて、満足した私はその夜、夢を見た。


「困るな〜。」


あの神様っぽい男の子だった。


「何が?」

「あんな生垣作られたら、困るよ。」

せっかくの名案に水を差されて、ムッとする。


「どうしてよ。」

「魔獣たちが、通りにくくなるでしょ。」

「通りにくくするのよ。魔獣が来ないように。」

「それが困るんだよ。」

「何で。」


男の子は、言いにくそうにつま先で足元をグリグリしている。


「言ったら、やめてくれる?」

「そりゃ理由によるけど。なんなの、勿体ぶって。」


「怒らないでね。」

「もう怒ってる。」

「えー。じゃあ言わない。」


男の子はくるりと踵を返す。


「ちょっと!もー。分かった。怒らないから。教えて。」


慌てて腕を掴んで引き止める。


「ホントに、怒ったらやだよ?」

「分かったから。」


男の子は、私の引きつり笑顔を見て、恐る恐る言った。

「魔獣のエサが取れなくなっちゃうからさ。」


ん?


一瞬理解できない。


「もう一度言って?魔獣のエサ?」


男の子は頷いた。

「この大陸の人間は、魔獣のエサとして連れてきたんだよ。だから、ヒトを捕れなくなると困るんだ。」


その言葉が、脳内で意味を持つまでちょっとあった。


「ヒトは魔獣のエサ用?」

恐る恐る聞くと、男の子は頷いた。

しばらく呆然としていると、その子はポツポツと説明し始めた。


「この大陸は、そもそもドラゴンの住処なんだ。ほぼ全域に住んでる。」

ああ。エドモン君が追い払ったという。

「それでね、ドラゴンの好物がコチューンて呼んでる、クマの大きいやつなんだけど。」


時々見る。オオカミっぽいのとかイノシシっぽいのとかナメクジっぽいのとか色々いるけど、コイツは最悪。


そうコイツの好物は、ヒトだ。

出たら必ず何人か犠牲になる。そして、警備隊とかが急いで駆けつける頃には、さっと森の奥に引っ込んでいる。


「食べないと増えないからさー。」


ぼぅっと聞いていて、はたと我に返る。

「え、待って。」


食べないと、増えない。

ヒトを食べないと、コチューンが増えない。


「つまり、ドラゴンの好物のコチューンを増やすために、その好物のヒトを連れて来た?」

「そう。」


連れて来た。太陽の国から。


「どこから?ていうか、ここ以外にヒトが住んでいる所があるの?」


「君は特別だから教えるけど、むしろ、ここ以外の大陸では、どこでもヒトが住んでるよ。」


つまり、この大陸に住んでいるヒトは

「養殖されている。コチューンのエサになるために。」

「そう言う事。」


神様っぽい男の子は、まだ足元をグリグリこすっていた。


「だから、ホーゴイとかケレヘンとかいくら狩って貰ってもいいけど、コチューンがエサを食べに来られるように、あんな垣根はやめて欲しいんだよね。」


なんかクラクラしてきた。

おかしい。

これは夢だ。これは夢だ。

でも夢の中で目眩がしそうってどうなの。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。