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転生チート魔法使いだったのに、世界は意外にシビアだった話  作者: たかなしコとり
第3章 結婚

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その34 倒産

エドモン君の言った通りだった。


診療所を開いてたった三カ月で、そこは閉めざるを得なかった。


通常、魔法医は患者の症状を聞いて、ギリ効果のある範囲の魔力で、怪我や病気を治す。

怪我なんか、外科手術よりキレイに早く治る。当然治療費は高い。


私もそれに倣って、治療費を設定していた。

だけど。


私の治癒魔法は、何もかも全部一緒くたに治す。

大げさな例で言うと、ジャガイモ剥いていて指切った、というのを治そうとして

「ヨッコイショー○チ」

と唱えると、切り傷はもちろん、その人が抱えている糖尿病とか腰痛とか蓄膿症とか、とにかくありとあらゆる不調を治してしまうのだ。


そりゃ患者さんは大喜びだ。

でも医者って、患者さんがいないと成り立たない職業だ。


そもそも高めの治療費に設定していて、最初の頃は、

「煙突掃除をしていて屋根から落ちた!」

みたいな重症患者しか来なかった。


ところが、その人の怪我が治った後、ついでに前から患っていた関節リウマチまで治った、なんて話がじわじわ知れ渡ると、開業から一ヶ月後には、外まで行列が出来る盛況ぶりだった。


他の医者から苦情が来るほど。


ところがさらに半月たったら、患者さんはぱたりと来なくなった。


つまり割高な治療費を払ってでも治したい病気を抱えた人が、もうこのギーネ町辺りにはいなくなったって事。


皆バリバリ元気になって、長年通院していた病気もなくなり、ちょっとした怪我や風邪なんかは、割安な普通の医者で良くなった。


毎日毎日お茶を挽く日々。

ちょいちょい実家に寄って、家業を手伝ったりしたけど、とにかく昔は小さかった弟や妹も、まあまあ猫の手よりマシになってきたし、おばあちゃんも元気満タンて感じで、手伝う事があんまりない。


仕方ないので、せっかく作った診療所だけど閉める事にした。


「長続きしないって分かってたんですか?」

エドモン君に愚痴ると、副学長はフフンと鼻で笑った。


「君は、経営戦略に関しては、全くの無知だからな。」

王都と、私の実家のある海辺の町を、なんだかんだ楽しそうに行き来していたエドモン君である。


「言ってくれたらいいのに〜。」

「言ったって、納得するまで君は引き下がらないだろう。」

「まぁそりゃそうですけど。」


愚痴は止まらない。

「他のお医者からも恨まれちゃうし。」


「そりゃ、捻挫を治療する値段で、慢性の膝痛も治すとか、ただの腹下しで来た患者の肝硬変まで治すとかするんだからな。」

「おかげで全然儲かりませんでした。」

「だろうな。」


エドモン君は楽しそうだ。


「あの辺りの住人の健康状態が、劇的に良くなった事は確かだし、アレはアレでいいとして、もう少しやり方を考えてみるといい。」


「例えば?」

「自分で考えろ。思考を放棄したら、脳が腐るぞ。」


嘯くエドモン君。

変な所で先生風を吹かせるなあ。


「ケチ。」

「生徒の成長を促すのも、教師の役目だからな。」


結婚しても、エドモン君は副学長のまま職があるんだけど、私は魔法医をやめてしまったら無職だ。


どうしようかな~。

ちなみに護衛というか、監視の人は、外出すると、常に私の周りをウロウロしている。

ストーカーぽくて鬱陶しいけど、護衛と思って割り切っている。


経営戦略か。


前世の世界なら、スマホで検索するとか、本屋でその手の本を探すとかするけど、今の世界では、なかなか厳しい。


「例えば〜。キッチンカーみたいなー。」

「え、何だって?キッ・・?」


診療所を閉めたらすることなくて、食っちゃ寝生活を堪能している。

たまに図書館に行って、本当ならやるはずだった医療魔法を独学で学んでいる。


「巡回診療所みたいな。」

「いいな。」

のんびり昼ごはんを食べている。


エドモン君はエドモン君で、まめに新しい古代語魔法を研究している。

パンをかじりながら、本をペラペラめくっている。


「汚れるでしょ。」

「防汚魔法かけてる。」

「え、そんな便利な魔法があるんだ。」

「医療魔法の一つだな。」

どんなに血で汚れても、払えば落ちる。


「いいなー。私ももう一回入学し直そうかな。」

取り留めのない話をしている所に、王宮の制服を着た人が近付いて来た。


「エドモン様。陛下よりお手紙でございます。」

「はいはい。」

エドモン君は無造作に、丸めて封蠟を押した手紙を開いた。


「・・またか。最近頻度が高いな。この季節、魔獣はまだ冬眠しているだろう。警備隊で対処出来るはずだ。」


「実はフラメ王国からの・・。」

「は?何故うちが隣国の魔獣退治をせねばならん?」

「そうではなく、隣国から追い立てられて、こちらに来た魔獣のようでございます。」


普段来ないはずの、国境近くに出たらしい。


「何だと?魔獣は最初に出た国で責任を持って狩ると、相互条約で、」


言いかけたエドモン君は、ぐっと言葉に詰まった。

なるほど。カリン姫の嫌がらせか。


仕方ない、と立ち上がったエドモン君は私を見た。

「行くぞ。」

「え、私も?」

「王族の端くれだからな。要請があれば、税金分は働かなくてはなるまい。」


え!タダ働きなんですか?

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