その28 二回目
故郷で結婚式を挙げたあと、王都でも、こちらは王家主催の盛大な結婚式を挙げた。
政府の要人とかも大勢参列しちゃうような、王宮から神殿まで四頭立ての馬車で移動しちゃうような、そんなヤツ。
頭の上から、つまんだだけで破れそうな繊細なレースのベールを被り、長い裾を引いたドレスはそれこそ二カ月突貫でお針子さん達が仕上げてくれた、見惚れるような華やかさだ。
形だけ、内務大臣の親戚の伯爵家に養女になったので、一瞬セレネ・ハル・フォーザと呼ばれたり。
まぁでも、二回目の結婚式は、みんなの前でチューを披露しなくて済んだ。
あと、エドモン君が取り計らってくれたように、他の王族に比べれば、相当地味な結婚式ではあった。
第三王子の結婚式の時でさえ、馬車は六頭立てで、神殿から王宮に戻る時は、前後を美々しく着飾った近衛騎士団が隊列を組み、花びらと山のような銀貨や銅貨が撒かれたらしい。
ま、近衛騎士団は仕方ないとして、そんなパレードはご遠慮致したい。
という訳で、普通に国王が移動する時のような、王族の馬車とはいえなるべく地味に王宮へ戻った。
本当にいいのか?とエドモン君に聞かれたが、クラスメイトに顔バレするの絶対嫌だし。
控えの部屋に戻ると、豪華ドレスをそっと脱いで、しばらく下着姿でゴロゴロする。
ちょっと休憩した後、神殿から移動してきた来賓が大体落ち着いた頃、披露宴が始まる。
薄い紫の花びらをいくつも重ねたような、それはもう手の込んだドレスを侍女さんたちに着せてもらって、髪も全然違う形に結い上げてもらう。
私だって女の子だし?綺麗な物は大好きだけど。
肩が凝る〜。
支度が終わるとエドモン君が現れて、エスコートしてくれた。
エドモン君は、服が変わっていない。
王子の第一級礼装のままだ。不機嫌そうな顔もいつもの通り。
「感想とか言ってくれてもいいですよ?」
ちょっとだけからかい気味に言ってみる。
服が変わっても中身がな、とか、その色は似合ってない、とか言われるかなと思ったけど、エドモン君は耳たぶをピンクにしながら言った。
「まあ、悪くないんじゃないか?」
「え。ホントですか?」
どうなの。もしかして、エドモン君私の事好きなの?
「嘘は言わん。」
思わずエドモン君の、破壊力のあるイケメン姿を見直す。
「エドモン君て、私に惚れてます?」
「ドアが開くぞ。」
ホールには、ずらずらっと人がいた。
引きこもりのエドモン君には、なかなか荷が重かったらしい。
最初の挨拶は国王陛下がやって、結婚祝いの祝辞を述べに近寄って来た来賓は、第三王子が捌いていた。
いい人だ。
この人の後妻の道もあったと思うと、不思議な気持ちがする。
エドモン君は、明らかに人酔いしている顔で、目の周りにうっすら隈をつくりながらも頑張って
「ありがとう。」
とか
「畏れ入ります。」
とか繰り返していた。
披露宴は夜中まで続き、最後はなんと、
「では皆様、これより花婿花嫁は、初夜を迎えるため、お部屋に下がらせていただきす。ユール王国に繁栄あらんことを!」
の言葉で締めた。
ちょっと〜〜?ナニソレ。
めっちゃ恥ずかしい。
セクハラだ。セクハラだ。セクハラだ。
怒りと恥ずかしさでぐるぐるしていると、いつの間にか王宮の奥の、最初に控え室として用意された部屋まで来ていた。
はぁ、とエドモン君がため息をつく。
ようやくエスコートのために曲げていた肘を下ろした。
「そんなに怒るな。結婚式の常套句だから。」
「だってー!」
侍女さんたちが寄ってきて、衝立を立ててドレスを脱がせてくれた。
夜着ではないけど、あっさりしたワンピースに着替える。
あー。楽になったー。
「部屋まで送る。」
え。
部屋って。どの部屋。え、まさか本当にしょ・・
「君が使っている客間だ。俺は王子宮に自分の部屋があるから、そっちに戻る。」
あ、そーなんだ。
「しばらくはあちこちからお茶会の誘いがある。」
はい、聞いてます。
「明日は王太子殿下からの招待ですよね。」
今日も、王太子夫妻がいるのは分かっていたけど、話は出来なかった。
何なら明日の茶会は、第二親王殿下夫妻も同席で、絶対欠席出来ない。
本当なら明日も披露宴の続きだったのを、エドモン君の手配で、一日だけにしてもらったのだ。
その代わり、国の主要人物には個別のお茶会で挨拶する。
翌朝、あー寝不足だわーと思いながら、起きて顔を洗ったりしていると、侍女さんが一人飛び込んで来た。
「大変です。フラメ王国のカリン王女様が、もうすぐこちらにいらっしゃるそうです。」
え。隣国の王女。
「なんで?」
式に招待してたっけ?




