その27 キンコンカンコンk
結婚式には、親兄弟親戚のみならず、二百軒ほどしかない村の、ほぼ全員が神殿に集まった。
娯楽少ないからね。
私はずっと実家に泊まっていて、エドモン君は当日の朝、町から神殿まで馬でやってきたんだけど。
地味目の、ちょっと丈の合わない礼服を着たエドモン君は、超男前だった。
おおー。
背中まであるワンレンの髪が、いつもはだらっと顔の半分ぐらいを覆っているのに、今日はキリリと後ろでひとまとめにして、形のいいおデコも丸出しだ。
びっくりするぐらい、カッコイイ。
あれ?
エドモン君ってこんな感じだったっけ。
神殿の控えの小部屋でぼうっと見やる。
「どうした。ぼけっとして。」
声はいつものエドモン君だった。
ワンレンの向こうに隠れていた青い目が、射し込む日の光にキラッと輝く。
何かずるいな。
「準備は?」
「一応、出来てますけど。」
お母さんのウェディングドレスを着て、髪をまとめて、花を飾った。
ブーケもばっちり。
介添を、幼馴染の女の子たちにお願いしようとしたら逃げられたので、神殿の女性神官様にお願いした。
私は、同じ年代の女の子たちの中で超勉強できたので、まあまあやっかまれている。
その上、貧乏という触れ込みとはいえ貴族様と結婚するとなれば、そりゃ妬みの対象にもなるだろう。
寂しいけど、諦めている。
女友達同士の温かくもあり心強くもあるが、ねっとりと息苦しく重い付き合いは、オレには無理。
「お揃いになりましたか?」
神官様が、呼びに来た。
いよいよ結婚式だ。
「ん。」
エドモン君が肘を差し出すので、何だろうと思って見る。肘?
そしてエドモン君を見上げると、
「馬鹿者。右手で掴まれ。」
あー。エスコートしてくれるのか。
いやもう、昔やった結婚式をちょっと思い出すね。
神式だったけどね。
恐る恐るエドモン君の肘に掴まって歩き出す。
さっさと片付けて、色々面倒な事無しに、私は私の道を行きたい。
礼拝堂に入ったら、後ろの方まで立ち見の人がいて、さらに開けっ放しの両開きドアの向こうにも、人がいた。
まあ、娯楽少ないからね。見たくなるのは分かる。
その中から、エドモン君を見てふわ~みたいな女の子たちのざわめきが起きる。
うん。分かる。
イケメンとは思ってたけど、思ってたより破壊力のあるイケメンだった。
さすが王子様。
結婚式は粛々と進む。
王都の神殿は、それぞれ祀ってある神様ごとに拝殿があるけど、田舎の神殿は、みんな一緒くただ。
礼拝堂の正面に主神ルーク、両脇にその妻の運命女神アサーリア、娘で豊穣の女神アルテア、息子の海神ヴァリシスなどの彫像が並ぶ。
特にアサーリアは大事にされている。万物の生死を司る主神ルークだが、妻の尻に敷かれていて、気分屋の彼女の機嫌を損ねると碌な目に会わない、と言われている。
ただ結婚式はアルテア女神の名で執り行われ、子孫繁栄を願われる。産めよ増やせよ地に満ちよ。
はいはい。
そうは言っても、名目だけの結婚だし。
「夫エドモンは、この妻となるセレネと添い遂げなさい。妻セレネは、この夫となるエドモンと添い遂げなさい。アルテア様は、二人の仲睦まじい姿を望まれています。」
キリスト教とも違うし、勿論神式とも違う。
でも大体、似た感じではある。
小さい頃からよく知っているおじいちゃん神官様のお説教を、頭を垂れて聞く。
やがて、結婚式用の言葉が終わって、
「では誓いのキスを。」
「えっ。」
「えっ。」
エドモン君もびっくりして顔を上げたけど、私もびっくり。
この衆人環視の中で、チューするの?
どうする?と思って隣を見たら、エドモン君は形のいいおデコの、髪の生え際まで真っ赤になっていた。
もー。
この人のこういう所が、すごく可愛いんだよね。ちょっと好き。
仕方ない。結婚式の段取り上、やんないといけないなら、キスもやむなしか。
「ん。」
目を軽く瞑って顔を上げると、恐る恐るエドモン君の両手が頬に触れて、それからむにょっと柔らかい物が唇に触れた。
目を開けると、エドモン君の真っ赤な顔が目の前にあった。
「二人の結婚はここに成った。アルテア様の祝福がありますように。」
老神官様の言葉で、結婚式の一連の儀式は終わった。
あとは礼拝堂から退場して、披露宴だ。
すぐそばの酒場を貸し切ってある。
礼拝堂の真ん中を歩き出すと、周りから祝福の花びらが舞った。
「おめでとう!」
「おめでとう!幸せにね!」
涙ぐんでいるお父さんお母さんの顔が見える。
ああ。なんか、結婚式っていいな。
25話と26話、投稿の順番間違えました(汗)
あれ?と思われた方、すみませんでした。。




