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転生チート魔法使いだったのに、世界は意外にシビアだった話  作者: たかなしコとり
第3章 結婚

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その25 ど田舎出身


翌日、お妃教育のために王宮の客間に行くと、しばらくして、しずしずと三十代半ばの奥様がやって来た。


第二親王妃殿下のネリア様だ。


立っておはようございますと挨拶したら、私の事を扇子越しに上から下まで眺めて、さらにもう一度上から下まで眺めて、第一声、


「ふーーん。」


えー。そんな挨拶ってある?


「その服しかないの?」

「は?」


あんまり服のことを気にした事がなかった。


ユール王国では、平民女子は大体ワンピース・スカートだ。丈はミモレ。

余程の田舎でなければ、上下水道が整っているので、トイレの心配がない。


逆に田舎の人は、スカートが長め。

その辺でお花が摘めるようにね。


なんだかんだ、感覚としては日本の近世から現代に近い。


私は魔法学校の制服を来ている。

私服のワンピースの上から、紺のローブ。

着飾るほどの服もないし、これなら失礼にもあたらないだろうと思ったんだけど。


ネリア様は、大きなため息をついた。


「こんな山出しを教育して、何かの役に立てるようになるのかしら。エドモン様もお気の毒に。」


おお。

これが小姑というヤツか。


昔、オレの姉貴と嫁との間も微妙な雰囲気だった事を思い出す。


しかし気の毒ってなんだ。

こちらからお願いして結婚してもらう訳ではない。


「じゃあ結婚やめます。」


ネリア様はえっという顔になった。


「気の毒と言われるような結婚はしません。帰ります。お時間取らせて申し訳ありません。」


身を翻す。

唖然としているネリア様は特に追いかけて来なかった。


王宮の一部屋が、私の私室として整えられていた。昨夜はここに泊まった。


身の回りの物をカバンに詰めて、衛兵さんに断って王宮の建物の外に出ると、後ろから血相を変えたおじさんが追いかけてきた。


「セレネ様!お待ち下さい!」


昨日紹介された、ナントカ大臣。

えーと。

内務大臣だったか。息を切らせている。


まあ、待てと言うなら待ちますが。

「何でしょうか。」


「こ、こけっ、こっ」


ニワトリのモノマネか。

内大臣のおじさんは、目の前で立ち止まると、大きく息を吸って、呼吸を整える。


「ご結婚を、取りやめにすると仰ったそうですが。」


「あー。そーですね。」

エドモン君がお気の毒と言われたので。


私は、故郷に診療所を出すのが夢だけど、幸せな結婚生活だって、それなりに憧れている。


見合い結婚だって構わないけど、周囲に祝福されないのは真っ平ごめんだ。


と、おじさんに伝えると、おじさんはハンカチで汗を拭きながら、

「そうですよね、分かります、分かります。」

と、ひたすら頷いた。


「殿下にも、すぐ伝えておくので心配ないです。まぁ私は山出しだし?十個も年下だし?釣り合いが取れてないことは分かっていたので。さっさと故郷に帰ります。」


卒業証書を貰えたので、もう王都に用はない。

開業資金もある。

くだらない引き留めなんぞ振り切って、当初の予定に戻ればいい。


つい一昨日引っ越したばかりで、また引っ越しかと思うと面倒だけど、荷解きはしてないのでそこは楽だ。


「いやいやいやいや。お待ち下さい。ネリア様にはちゃんとお話が通っていなかったようでございました。私の手落ちでございます。」


おじさんの、汗を拭く手が止まらない。


「いえ、気にしないで下さい。」

「そう仰らず。このままお帰ししては、私のクビが飛びます。」


え、そんなの知った事じゃないし。

とは思ったものの、さすがに少し気が咎めて、


「ではどうしろと言うんです?」

一応聞いてみる。


「とりあえず、その、とりあえず、お部屋までお戻りいただけますか?」


おじさんのハンカチは、汗ですっかり色が変わっている。

「えー。やだなぁ。」

ごねてみる。


「お部屋がお気に召しませんでしたか。では、急ぎ他のお部屋を用意致します。ご希望を仰って頂ければ、是非そのように・・。」


「部屋の問題じゃないんだよねー。」


なんと言うか、ちょっと冷めた。

イケメンの王子様との結婚で、さすがに舞い上がっていたみたい。


よくよく思い出せば、漁師の娘で、ど田舎出身。

そんな私が急に親王妃殿下なんて、無理に決まっていた。


そりゃドレスにも憧れはあるし、お妃様の身分にも憧れはあるけど。他のお妃様は、みんな貴族の姫君だもんね。


毛色が違いすぎて居心地悪い。

という事に、さっき気が付いた。


それでさらに思った事は、まぁ別にこの国に固執しなくっていいんじゃない?って事。


「お妃教育を受けないと、この国に」

「セレネ!」


割り込まれた。

エドモン君だった。小走りに近寄って来る。

おおっと。


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