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転生チート魔法使いだったのに、世界は意外にシビアだった話  作者: たかなしコとり
第3章 結婚

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その20 選択肢

おかしいなぁ。


確か私が故郷の村に着いた時で、残りの夏休みはまだ半月以上残っていたはずだ。


その後の魔獣退治も、相当手際よく片付けたと思う。


睡眠時間を削ったせいで、ニ、三回ぶっ倒れたけど、そんなに時間を無駄にしたつもりはない。


なのに王都に戻ってきたら、夏休みはあと四日しか残っていなかった。


ひどい。


ただ報酬はたっぷり貰った。

アルダーからも、退職金だという名目で、結構な額のお金が支払われたらしい。


なので、例の高速移動陣を使って、実家に何とか一泊する事が出来たけど。


なんか忙しなくて悲しいなぁ。


新学期の準備をしながらリリアに愚痴っていると、またしても、副学長に呼ばれた。


「私の事を雑用係とか思っているに違いないよ。」


とか怒りながらも、仕方ない、行かない選択肢はない。


やれやれと思いながら副学長の部屋へ行く。


エドモン先生は、魔獣退治から帰って来た時よりも疲れた顔をしていた。


「何か用ですか?」


「ああ。まず、」


そう言った後、先生はしばらく言葉が出ない。


どーしたのかね。

お疲れみたい。


はぁ、と大きなため息をついて、先生は言葉を継いだ。


「まず、君は今日を持って魔法学校を卒業とする。」


「ええー!」


思わず叫ぶ。


「なんで?」


「この前の魔獣退治の折、君は一日で三百名以上の怪我人を治療した。通常の魔法医でもなかなか出来ない功績だ。もはや学校で教える事は何もない。卒業証書については追って授与する。」


あ、そうか。

そう言えば、一昨日実家に帰った時も、おばあちゃんの膝を治してあげたっけ。


おおー。私、正式に魔法医になれるんだ。

いつの間にかって感じだけど。


「あざっす!」


礼を言って、部屋を出ようとすると。


「待て。話は終わってない。」


あ、そうだそうだ。

「まず」って言ってたもんね。


「はい。何でしょう。」


もう一度、先生の机の前に戻る。

でも顔が緩むのを我慢できない。


これで学費の心配は要らないし、実家に戻って魔法医を開業出来る。


などと考えているのを見透かすように。

副学長は重々しく言った。


「君の、治癒魔法の功績は素晴らしかった。」


はい、ありがとうございます。


「素晴らし過ぎて、王国騎士団から直接国王陛下に報告が上がった。」


「はい。」


へー。なんかご褒美くれるのかな?

のんきに構えている私に。


「君が、俺の婚約者だという話と一緒にだ。」


「えっ。」


「一応否定はしたが、それだけの能力が、国外に流出しては一大事だという話になって。」


「えっ。」


「確認するが、君、故郷の幼馴染とかアルダーの隊とかに、好きな人や言い交わした相手はいるか?」


「まぁ・・いませんけど。」


え。話の行き先はどこだ?


「それは、まあ、よかった。それで、候補は三つ。」


何の。


「今の王太子の二番目の息子は、君の一歳年下だ。それと、俺のすぐ上の兄上が、去年妻を亡くして、男やもめだ。あとは、俺。どれにする。」


「な、な、何の候補なんですか?」


「だから、結婚の。」


「ええー!」


頭の中が、真っ白になった。


「年回りは、甥のルカスがちょうどいいかと思うが。セレネ?」


絶句して立ち尽くす私に、エドモン先生は、あんまり話が急過ぎた、と反省したらしい。

椅子を勧めて、それからゆっくり説明してくれた。


「君のデタラメ魔法が皆の知る所になれば、あちこちからそれを狙う者が現れるだろう。君自身が悪意に染まる事も有り得る。」


なんか、やな感じ。


「そんな不満そうな顔をするな。可能性の話だ。」


そうかも知れませんけど。


「君が王族になれば、堂々と護衛をつけられる。王室歳費で暮らせるし、ルカスの妻ならこの先、王妃になれるかも知れないぞ。」


そんなに嬉しくないなぁ。


「ルカス様って全然知らない人ですけど。」


「貴族の結婚なんて、そんなもんだ。いい子だぞ。」


「・・でも王宮にほとんど帰ったことがないんですよね?甥っ子の事も、実はよく知らないでしょ。」


図星だったらしく、エドモン先生はぐっと言葉に詰まる。


正直〜。


そこは嘘でもなんでも、売り込まないといけないのでは?


「この話を断ったら、どうなるんです?」


「うーん。政府の中に君の役職を用意する事になるかな。どのみち監視はつくだろうが。」


考え考えエドモン先生が言う。

あーあ。監視って言っちゃったよ。


「それだけ君の魔法が凄いと言うことだ。」


「なんか嬉しくないんですけど。」


「まあゆっくり考えてくれ。卒業証書授与まで三日ほどある。今後、故郷に戻るにしろ、役人になるにしろ、基本的には君の希望を尊重する。」


訳が分かんない。

私の魔法がデタラメに強いので、それを囲い込みたい、て事だけ分かる。


ヨロヨロ部屋を出ようとして、ふと思い付く。


「あのー。」

「なんだ。」


「副学長っていくつでしたっけ。」


エドモン先生は怪訝な顔になった。


「俺か?二十五だ。」


うーん。九つ上か。

あ、ちなみに私、この前十六歳になりました。


「エドモン先生と結婚するんだったら、いいですよ。」

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