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転生チート魔法使いだったのに、世界は意外にシビアだった話  作者: たかなしコとり
第2章 追放。そんでザマァ

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その17 神様との約束


「あたり前田のクラッカーあぁ!」


何十回か叫んだ頃には、もう夜も白み始めていた。


爆散するので、辺りは血と肉片で大変なことになる。


でも「怯え」も「つむじ風」も「地震」も、足留めにしかならないので、倒すのは「火花」に偏りがちだ。


騎士団の人と連携出来ればいいけど、魔獣は町中に広がって暴れているので、誰がどこで対処しているのか、全然分からない。


あぁ。

社畜時代の、非常に効率悪い事が分かっていながら、誰が・どこで・何をしているか全然把握出来ないまま、ひたすら目の前のタスクをこなしていた時の事を思い出す。


「セレネ!」


疲れてちょっとぼうっとしていたら、エドモン先生に押し倒された。


わあぁ?


頭の上を、デカいトンビが獲物を捕らえ損ねて飛び去って行く。


あ。助けてくれたのね。


「少し休め。」

そっと助け起こして座らせてくれる。


「でもまだ魔獣がいるし。」


「かなり城壁外に押し戻した。騎士団は交代で戦っている。君だけぶっ通しで戦う必要はない。」


あー。それもっと早く言って欲しかったー。


そう思った瞬間、目の前がふわ~ッと霞んだ。


オヤスミ。


「やぁ、久しぶり。」


気づくと、目の前に男の子が立っていた。


誰だっけ?


「えー。薄情だなぁ。こっちの世界に転生させてあげたの、僕だよ。」


目の前の子は、十歳ぐらいに見える。


あー。そう言えばこんな感じだったかも。


「神様?」


「厳密には神様じゃないけどね。」


男の子はにこにこしている。


「君さ。せっかく転生させてあげたんだから、もうちょっと、華々しく何かしようよ。」


え、なんの話?


「ほらほら〜。これとかさ。『転生聖女は異世界で成り上がる』。」


神様っぽい男の子は、傍らの派手な文庫本を指差した。


それ、どう見てもラノベなんですが。

しかも、結構何冊も山積み。


神様、ラノベ読むんだ。


「これもいいよね!『異世界救済』。」


「あのー?」


「せっかく君を転生させてあげたのにさ、なんかあんまり面白い展開がないんで、つまんないんだよ。」


ちょっと、ちょっと待って欲しい。


オレ、別に面白い展開を望んで、転生を願った訳ではない。


どっちかといえば、むしろ逃避?


それに、転生したかも知れないけど、割と普通の女の子だ。庶民だ。


抗弁してみる。


「そういうのって、大抵『めっちゃハマった中世風ゲームの世界に転生した』話でしょ。貴族の姫とか。王子様とか。『次の展開知ってます』的な感じで。でもここ、全然知らない世界だし。」


神様っぽい男の子は、ポンと手を打った。


「なるほど!」


「それに魔法も。何だ、あの呪文。オヤジギャグって、ひどくない?効果もレベルも分かりにくいんですけど。」


「えー。僕は面白いけどなー。君が絶叫する度に爆笑してるよ。でもイヤなら取り消す。」


「他のに替えてくれます?」


「いや、取り消すだけ。転生時の特典だからさー。変更出来ないんだよ。でも発動しないようには出来るよ。」


神様は、残念そうに傍らの本を手に取った。


「それか、もう一回転生し直す?」


やめて。


「確か他にも特典ありましたよね?」


一応聞いておこう。

神様は、にっこり笑った。


「必要になったら思い出すよ。」


「えー。ケチ。」


つい口走ったら、神様は不満そうに口を尖らせた。


「そんな事言うなら、思い出さないようにしてもいいよ。」


「あ、ごめんなさい。オレが悪かった。」


「どのみち、君の今後の活躍次第では、特典は全部無しにする。」


「えっ。」


「転生させた甲斐がないんじゃ仕方ないしね。じゃ、頑張って。」


神様はスーッと消えた。

え。何それ。どゆこと?


オロオロしているうちに、現実の感覚が戻って来る。

あ、夢見てたのか。


寝てた。

多分どこかのベッドの中。


疲れて体力の限界だったので、ちょっと意識が起きても、目は開けられない。


ひどい夢だった。

神様がラノベ読むって、滅茶苦茶だな。


もうちょっと寝たい。


なのに、隣の部屋から声が聞こえて来て、気になる。


どうやっても眠れないので、逆に耳を澄ませてみた。


「あの娘を渡してくれ。」


聞いたことをすぐ後悔した。アルダーの声だ。


「頼む!イッショーのお願い!」


それに誰かが返事している。こちらは声が小さくて聞こえない。


「そんな事言わずにさー。俺も反省してんだって。」


何を反省しているんだ。


「えっ。いや、ほらそれは。未成年だしさ。」


アルダーの声が、跳ね上がった。


「あんまり大金も良くねぇじゃん?親心ってかさ。」


なんか不穏な言葉が聞こえてくるぞ。

いよいよ目が覚めた。


「じゃあ、交換条件といこうじゃないか。俺は、金を返す。あんたはあの娘を返す。」


「バカか、お前は!」

初めてエドモン先生の声が聞こえた。


「金は当然返すに決まっている。セレネに、だ。俺にじゃない。」


なんか情報量が多いぞ。


聞きたい。

でも出ていきたくはない。


そろ〜っとベッドを出て、ドアの横の壁に耳をあてた。


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