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転生チート魔法使いだったのに、世界は意外にシビアだった話  作者: たかなしコとり
第2章 追放。そんでザマァ

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その16 私の夏休み

「王子様。」

もう一回言ってみた。


「うん。」


「あれが?」


「そう。だからさ、そんな偉い人がお供も無しでわざわざついてくるぐらいだからさ、てっきりあんた達、付き合ってるのかと思ったんだよ。」


えええー。

ウソだ。

びっくり。そんな事ある?


「人違いなんじゃない?王子様だなんて、聞いたことないけど。」


「魔法学校で、同じクラスだったんだよ。」


「え、同い年?」


「それは分かんない。」


そりゃそうか。え、いくつ?

リナ姐さんは、夜着の胸を張った。


「だから、人違いはない。ま、しばらく会ってはないけどね。とにかく超優秀な魔法使い過ぎて、王宮出されたって噂は聞いてたよ。それが、副学長ねぇ。」


リナ姐さんは、感心するように頭を振った。


「なんであんたについてきたのか分からないけど、いい機会だからさ、距離詰めちゃいなよ。」


いやいや。

驚き過ぎて、飲み込めない。


あのいつ見ても不機嫌そうな副学長が、王子様。


全っ然分かんなかった。


どの辺が王子様っぽいか頭の中で探してみたけど、かろうじて、並よりイケメンな所と、常に不機嫌そうなのにその事で気を悪くしている人がいなさそう、という事ぐらいしか、思い当たらない。


「王子様なのに、こんな所にいていいの?」


リナ姐さんに聞いてみる


「さぁねぇ〜。」


あんまりびっくりしたので、その後リナ姐さんが自分の部屋に戻った後も、よく眠れなかった。


翌朝、女将さんはリナ姐さんに隣村まで送ってもらう事になった。


で、私たちは北の辺境警備隊に合流するために、出発する。

姐さんは、気が向いたら合流すると言っていた。


アルダーがいる町まで、徒歩で丸一日。


いやーなんかもう、私の夏休み、どこかで補償して欲しい。


「エドモン先生〜?」


「なんだ。」


「なんで先生も一緒なんですか?アルダーに呼ばれたの、私だけなんですよね?」


「馬鹿者。国王軍の半分が、魔獣退治のために西の国境に派遣されている。魔法使いもだ。」


副学長にも要請があったが、王都にいない私を呼び戻すために別行動をとったと言う。


「へぇー。でもそれなら、お付きの人とかに任せても良くないですか?王子様なんですよね?」


ざっざか歩きながら、傍らを歩く副学長にそう言ったら、返事に間があった。


振り仰ぐ。


エドモン先生は、日除けのフードを鼻の下まで引き下ろしていた。


「君の場合、俺の独断でアルダーの隊に所属させたからな。」


えーと。

どういう反応?


「エドモン殿下?」


「それはやめろ。」


「でも王子様なんですよね?不敬罪とか問われたりしないですか?」


「問う気なら、とっくに捕まっているだろう。」


まあ、それもそうか。


遠くに、何か燃えている黒い煙が上がっている。しかも幾筋も。


「あれですよねぇ。」


「そうだな。」


まだ距離がある。


「でも不思議ですよね。開拓中の畑とか、牧場が襲われるならともかく、魔獣が町を襲うなんて事、あるんですね。」


「西の森は、まだ誰も踏破したことがないが、奥にはドラゴンが住んでいると言われている。」


昔、追い払ったという噂の。


「ドラゴンがあくびをすれば、魔獣が家畜を襲い、寝返りすれば町を襲う。そんなくだらない噂がある。」


「わー。くだらな〜。」


考えてみれば、本当に不思議だ。


西の森から先は、地図を作ることさえ出来ないほどの未開の地なのに、こちら側は魔法を使って、それなりに文明が進んでいる。


なのに、じわじわ開拓が進んでいるとは言え、あっちを開拓すればこっちが森に呑まれ、こっちを開拓すればあっちが魔獣に襲われるといった具合なので、一向に国土は広がらない。


それはお隣のフラメ王国も同じ。


何かの意図を感じるなあ。


「この赤大陸で、ヒトは生かさず殺さず、いい感じに養殖されている気がしますね〜。」


そう言ったら、エドモン先生が驚いた顔でこちらを見た。


「君もそう思うか?」


君も、てことは、エドモン先生も、そう思っていたってこと?


「なんか、普通の発展の仕方と、ちょっと違う気がします。だってこの赤大陸、形も分からないでしょ。」


漁に出ても、ある程度まで沿岸を回ると、水棲魔獣が出る。

うっかりすると船を沈められてしまうので、漁師も限られた漁場にしか行かない。


ヒトに許された場所は、この赤大陸の東側だけ。

誰もそれを不思議に思わないのだろうか。


人の叫び声が、遠くに聞こえてきて、足がだんだん速くなる。


一昨日も聞いた、鈴虫の鳴き声みたいな呪文を、エドモン先生が唱え始める。


「そのリーロンロンて、なんの呪文なんですか?」


唱え終わってから聞いたら、エドモン先生は目をパチパチさせて、

「リーロンロン?」


そして

「フィールールリーディオン、な。気配を消す魔法だ。」


「自分だけ?」


「必要なら、自分で覚えろ。」


うー。

安定の冷たさですな。

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