4-8 決め手はピンッ!
「あっ……えぇっ…………!?」
今ラキアは何て言った?
暴発させる? どうして? 何が目的で?
そもそも暴発“させる”――その言葉が意味するところを、彼女はちゃんと理解しているのだろうか?
「(というか…………『暴発』って)」
そう――さも当然のように使っている訳だが、そんな馬鹿な言葉はこの世に存在しない。
単に異能『禁欲魔導』を宿しているヨハン自身が、その能力を管理する為に造った言葉に過ぎないのだ。
それを何故、彼女が知っている?
「(あっ、俺が“あの時”叫んだから……)」
ヨハンは思い出す。ラキアと初めて出会った日、彼女の裸を目にして暴発してしまった時のことを。その時自分は思いっきり「暴✩発!」と叫ばなかったか?
……ちょっと待て。それだとあの時思いっきり下着の中で濃厚な液体を吐き出しているのを彼女は気づいていたことになるのでは?
「(いやそうだとしても、今この場でこんな――)」
つんっ……。
「おほっ」
こんな…………テントを張っているズボンの上から、ツンツンしてくる(してくれる)ことへの説明にはならない!
「(何か目的があるはずだ……!! それを見抜くまで――)」
つんっ、つんっ。
「おほっ、おほっ」
抜かれるわけにはイカないのにぃぃぃぃ!!! 下半身への刺激で考えが纏まらない!!
「ははっ! 何ということだ!
周囲の女を等しく夢中にさせ! ボク自身も己の生物としての雌雄を意識させられる……最強な魔導士であり魅力的な男であるキミが!」
つんっ! つんっ! つんっっ!!
「おっ、おっっ、おほおおお!?」
「こんなか弱い少女でしか無いボクの指先一つで……こんなにも無様な顔になるとは!」
痛快愉快――そんな感情に浸るように、ラキアは己の背後にそそり勃つズボンの膨らみを指先で突いて高笑いする。
「今朝はボクなんかで大丈夫だろうかと思っていたけど…………この様子なら、簡単そうだな」
小さな顔に不釣り合いな大ぶりの眼鏡越しに光るその眼光は、己が捕食者側であることを認識した――そんな鋭さを含んでいた。
無論……その少女の下で動けずアへ顔のヨハンは、被食者側――
ツツ……
「うぅっ!?」
そしてラキアは、ズボン越しの刺激を続ける。ただし、先程までの“悪戯感”を含んだ動きではない。より扇状的であって、知らないながらも“こうすること”が男の性情を刺激するだろうという予想を基に行われる手の動き。
ヨハンの“下半身”――その裏側。そこを根元からゆっくりと…………指先でなぞっていき……ゆっくりと、先端へ向かう。
その動きが正解であったことは、ヨハンが思わず返してしまう反応でラキアも察することが出来た。
「ゾクゾク…………するねぇ……?
――キミも、ボクも」
ヨハンの反応が心から好ましく感じていると理解できる、その赤らんだ表情。
それを見て、
「(ラキア…………!)」
ヨハンの脳裏に、一つの可能性が浮かぶ。
目的? 企み?
そんな打算的な物とかは、無くて。
もしかしたら……彼女が“個人的に”自分とこういうことをしたいと思ったから、こんなエッチなことをしているのではないだろうか?
「(まずい)」
そんな都合の良すぎる考えが浮かんでしまったことで、ヨハンは自分の枷というものが少しずつ壊れていくのを自覚した。
男が繁殖するためには、自分のことを受け入れてくれる女という存在が必要不可欠。
その為“自分のことを受け入れてくれる・受け入れてくれそう”な女性を前にした時、限られた生殖機会を逃さないよう……男はその女性に対して本能的に魅力を感じてしまうように出来ているのだ。
そう…………今こんな時に、本能からの魅力を彼女に感じてしまったら……!!
本能が、理性を喰らっていく――!!
「今は…………難しいことを考えずに、集中したらどうだい?」
この感触に――その言葉に代えるように、ラキアの指先は最も敏感な先端へと至る。
ぴくんっ、ヨハンの身体が僅かに跳ねた。
身体の感覚が。意識が。
ラキアに触られている部分に集中してしまう……させられて、しまう……。
「………………」
目を細めて見下ろしてくるラキア。彼女も指先に意識を集中しているのだろう。ヨハンの顔から目を離さないまま、後ろに伸ばした手で器用に彼を追い詰める。
先端にまで至った指先が、ゆっくりとその出っ張った部位の外周を撫でるように……くるり…………。
そして再び先端から根元へ、淫らな指筆が沿って動いていく。
全身がこうも硬直してしまっているのは。
恐らくは麻痺薬だけが理由ではない。今のこの状況を享受してはならないと理解しているのにも関わらず、身体は決して動いてはくれない。頭も快感以外の何かを考え、感じることを許しはしない。
そして指筆が根元へ到達した時。
ラキアの指は筆を模した物から形を変えた。
人差し指と親指を付けて、輪を形作る。他の指は開いた状態で……その輪の中に、ヨハンのモノを迎え入れた。
そして根元を――
「ぅあっ……!」
ギュッ――甘く締め付ける。
その圧力は、その男性部位を持たないが故の無遠慮さと戸惑いが混在した強さ。だがそれ故に、ヨハンが自分自身を慰める時のような“全てを支配下に置いた快楽”を楽しむ時とは全く趣が異なっていた。
何をされるか分からない――どんなことを、どんな強さで――一切の予想が出来ない刺激が、彼の思考の全てを奪っていく。
「こうすると…………どうなんだ……?」
根元に圧力を掛けつつ、ラキアは開いた中指――薬指――小指――それぞれをゆっくりと……閉じていく。そして順番に指先に甘く力を込めて彼の全体を包んでいく。
「ううっ……!」
その動きは、牛の乳を搾る時の様子を思わせた。
彼女の方もきっと、それを意識したに違いない。今己が握っているモノと、記憶の中にある牛の乳搾りの光景――それらを連想付けて、乳を沢山搾り取る為の動きを模倣……彼を搾り取るための動きとする。
人差し指の締め付けだけはそのままに。中指、薬指、小指を開いたり閉じたりして……圧力を強弱して刺激を与える。その度に、自分に跨がられて動けない状態のヨハンの反応を探っていく。
そして――
パッ……。
ひとしきり強めにモノを握りしめた後、ラキアは手のひらをゆっくり開く。それはつまり圧力からの解放であり、
「……っ…………はぁ……はぁ……!」
圧力により僅かに滞っていた血流が、再び秘部に流れ込んだことを意味していた。激流のように流れゆく血流の凄まじさで、己の興奮の度合いを強く認識させられる。
そして同時にヨハンは、自身がいつの間にか呼吸を止めてしまっていたのを自覚した。
それ程までの……支配。
「クスッ…………」
手に取るように。思うがまま。抵抗出来ないヨハンを見下ろし、胸中に溢れ出す全能感に浸りながら、ラキアは再び指筆を再開する。根元から先端へ、蠢くように刺激を与えていく。
その動きと連動するように、
「なっ……!?」
ラキアはオーバーサイズのローブの下……身にまとう膝上丈のワンピースの裾を、ゆっくりと持ち上げ始めた。
彼女は肌色を見せないストッキングの日もあれば、今日のように黒のニーソックスを着用している日もある。不幸にも今日は後者。
つまり――
「(パ……パンツッ……!!)」
その“持ち上げ”が行くところまで行けば、その奥地にあるサムシングをお目にかかれるということ。
目を瞑らなくては――そう考えても、下半身の感覚に支配された脳は言うことを聞いてくれない。
だがしかし。
彼女の狙いはソコでは無かった。
「…………フッ――」
裾まくりの動きに気を取られていたが故、ヨハンは気づくことが出来なかった。
ラキアが勝ち誇ったような笑みを漏らしたことを。
先端まで到達していた指が、一瞬彼のモノから離れる――そして、
ピンッ――!
「――!?」
唐突に訪れた、強い刺激。
先程までのもどかしく、じんわりとした……だが同時に甘い感触とは一線を画す感触。
それもそのはず。
まるで悪さをした子に罰を与えるかのように……額を指で弾く動きをもってして、彼に刺激を与えたのだ。
その矛先は――ヨハンの部位の中で最も敏感な、先端部分。
「あぁ……!! あぁぁぁ…………!!!」
完全なる不意打ちだった。身構えていれば耐えられたかもしれない。
しかし、ラキアの“パンツ見えるかも!?”攻撃で気を取られた彼の下半身は、その防御力を著しく低下させていた。そこへ差し込まれた、緩急をも付けられた不意の攻撃。
もう、これは――
「(止まらないっ……!!)」
押し寄せる奔流を留めることなど――
「ボクの勝ちだよ、ヨハン――」
彼の枷が崩壊したことを悟り、己の勝利を確信したラキア。
もはや彼の男性部分に触れることもやめ、覆いかぶさるようにヨハンの肩に両手をそっと置いて……耳元で囁いた。
その言葉を口にする余裕すらないヨハンに代わり。
彼女に似つかわしくない、甘く猫を撫でるような声で――
「……………………暴✩発――♡」
――ドクンッ!!!!!!!
その刹那。
彼の下着の中に白濁の海が現れた。
過去一濃厚な、膿にも似た白濁の海が――




