2話 二章 ギルドの屋敷のあれこれ 8
「はい。…すみません。」
とリキッドも、頭を下げて謝罪を繰り返す。背中を丸めながら、みるみる小さくなっているみたいだった。
暫しの間、同じ様な光景が続く。
やがてダフネは「ふん。」と鼻を鳴らして説教を止めると、此方に向き直ってきた。さらには、
「アルフォンス。」
「はい。…なんでしょう?」
「あなたは、ヒルフェ様を部屋にお連れしてください。」
「はい。…それで、ダフネ先輩達は?」
「私は、これを執務室にお連れして、溜まった仕事を片付けさせますので、後はお願いします。」
「わかりました。」
「お願いしますね。」
と、再び話をしながら指示をだしていた。
それからアルフォンスも、ハキハキと的確な動きで、瞬く間に行動へと移り、
「ヒルフェ様、此方でございます。」
と、俺を椅子から丁寧に立ち上がらせたら、素早く出入口の扉まで促してくる。
俺も流れに身を任せるままに、指示に従いながら移動していき、出入口の扉を潜って廊下に出ていた。
その後に、ダフネも部屋から出てきた。ただリキッドを逃がさない様に、腕を引っ張りながら無理矢理に連れていき、先に廊下の奥へと進んでく。
ふと俺は彼等の方を一瞥する。
するとリキッドも視線を此方に向けてきていた。今にも泣き出しそうであり、悲壮感漂う表情をしていた。まるで助けてほしいと目や表情で訴えている。
しかし、俺は敢えて無視して移動をする。アルフォンスの先導に続いて付いて行き、廊下の反対方向へと進んでいく。
「ヒルフェくぅぅん!…………」
背後からは、リキッドの情けない声が聞こえてくる。
だが次第に遠ざかっていき、最後には離れていく足音しかしなくなったのだった。
※※※
建物の二階より上の階層全て、ーー三階から五階まで、が屋敷の居住区となっているようだった。
此処でも、メイドや使用人達が齷齪と働いている。
俺とアルフォンスは黙ったまま、三階の板の間の廊下を歩いていた。
「なぁ、…ダフネは此処でも、あんな感じなんだな。」
と俺は沈黙に耐えきれず、適当に頭で思った事を聞いてみる。
「え?…あぁ、先輩はそうですね。」
すぐにアルフォンスも、前を向きながら頷き、丁寧に説明してくれる。
「あの人は、特別なんです。…私やギルド及び屋敷にいる他の使用人達よりも、ずっと前からリキッド様に御奉仕している方なのですよ。」
「…アンタより年下っぽいのに、だから先輩か。……ずっとって、何時からだ?」
「さぁ、正確には存じません。…私は二十代後半に冒険者を辞めて、…それから仕えまして十五年以上のお付き合いですけど、…さらに前からですね。」
「ふ~ん。」
ゆっくりと俺は、相槌を打っていく。話を聞いたとて、謎は深まってしまうばかりだった




