2話 序章 七年前の辛い出来事。~それからの様子~2
やがて辿り着いたのは、同じ敷地内に存在する隣の屋敷だ。
此方も魔術で武勲に名を馳せた伯爵家である。騎士爵の家と比べても、見劣りしない立派な建物と広大な敷地を有していた。
因みに二つの家柄は主従の関係である。
しかし少女は、伯爵の屋敷に目もくれず、真っ直ぐに裏手の方を目指している。
そこには同じ年頃の気弱そうな少女がいた。膝を抱えて座り込んで泣いているようだった。
時折鼻を啜る音が聞こえてきている。
まるで外壁の一角に身を隠しているようだ。
勝ち気な少女は、ゆっくりと近づく。
気弱そうな少女も気配を察知し、すぐさま顔を上げて視線が合うや否や、声にならない声で大泣きしだした。
すぐに勝ち気な少女は傍らに寄り添いつつ、
「大丈夫ですか、ーー様。…」
と優しく問いかけながら、力強く抱きしめる。相手から返事は返ってこない。しかし相手が泣き止むまで、ずっと慰め続ける。
しばらくして、気弱そうな少女は落ち着きを取り戻すと、段々と今日あった出来事を、しどろもどろになりながらも吐漏する。
「あのね、…お父様と、お母様がね。…」
「はい、…そうなのですか。…」
「また、あたしに、…」
「…またなのですか、…」
「それでね、…今度は、将来は…と結婚しろって…」
「そんな、…」
「嫌だって言っても、許してくれないの。…他の事は好きにしていいから、我慢しなさいって……でも、嫌。…あたし、そんなの、嫌。」
再び少女の泣く声がしていた。
その後も、同じ様なやり取りが続いていく。
勝ち気な少女は嫌な顔ひとつせずに、ずっと耳を傾けて相槌を打っていくのである。




