2話 序章 七年前の辛い出来事。~それからの様子~
少女は夢を見ているのだと気がついた。
何故なら目の前に映る光景は、実際に体験した出来事だからだ。
もう七年前から、少女自身の心を深く掻き乱す嫌な思い出である。
バキッ。
と大きな衝撃音がすると、ーー
髪を纏めた勝ち気そうな少女が芝生の地面へと、勢いよく倒れる。
その少女は、夢を見ている本人自身である。
ここは、とある豪華で立派な屋敷の庭先。有名な騎士爵の家であり、また彼女の実家でもある。
庭では主人である父親によって直々に、子供達と剣の稽古をつけていた。
「どうした、もう終わりか!…さっさと立て!」
と父親は大声で少女を叱咤している。
対して少女は、踞りながら痛さに打ちひしがれ、悶え苦しんでいた。
彼女の様子を、離れた位置から他の三人の兄達が見下した様に下卑た笑顔を浮かべ、後ろ指を指している。
また父親も厳しい目付きを向けて、あからさまに溜め息を吐きながら、文句を言う。
「全く、なんて無様なんだ。…この程度も、まともに剣を振れないとは。……」
「あ、あう、…」
と少女は口を開こうとするも、上手く呼吸が出来ずに喋れない。終いには咳き込んで、胃の中の物を地面にぶちまける。
余計に父親は腹立たしく感じていた。助けもせずに踵を返して、屋敷へと向かう。
彼の後に続いて、兄達も歩いて追いかけていく。離れていく際に、
「情けない。…あれで僕達と血が繋がっているのかよ。…」
「あぁ、全くもって恥さらしだ。…あれじゃ、どう頑張ってもエーデルヴァイス家の守護役には、選ばれないな。」
「やっぱり力ないクズは駄目なんだな。」
と囁く様に言っているのが聞こえてくる。
少女は言葉を耳にして涙を堪えて、苦虫を噛み潰した表情をしていた。ゆっくりと立ち上がると、無理矢理身体を動かして自分の家である屋敷とは別の方向へ、よろよろと歩きだした。




