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Ⅰ-2:はじめてのたたかい 2

 さて、どうやってこの蜘蛛を倒そうか。

 よく考えれば、私はどうやって戦えばいいのかなんてひとっつもわかってない。


 切る? このぷよぷよボディで?

 殴る? こんな小さな体で?


 はてさて、どうしたもんか。

 私だって、小さい、やんちゃな子供だった頃に喧嘩したことはある。

 だけどそれで学べたのは人の戦い方。カビの戦い方じゃない。

 カビの戦い方と言えば、言えば……何だ?

 だいたい、今までカビなんて、塩素消毒とか、カビた食べ物を捨てるとか、そんな対策しか……


 ん? 待てよ? カビた食べ物を捨てる?

 それは、どうして? なぜならば……毒があるから。

 毒! そうだ、毒だ。

 私は今カビなんだ。ならば、毒の一つや二つくらい作れてもおかしくはない!

 でも、どうやって毒を出すんだ? っていうか、どうやって作るんだ?

 ……いや、作り方なんて、私自身が理解している必要なんて、ない。

 毒を作れるってことは、その毒の作り方を、頭では分かっていなくても体が知っているはずだ。

 つまり、体は毒の「設計図」を持っている!

 この体に、設計図があるのなら。


(頼むぞ! ≪中心教義(セントラルドグマ)≫!)


 ≪中心教義(セントラルドグマ)≫の扱いにくい点として、設計と原料の双方がそろわなければ、動くことが決してないという点がある。

 だから、毒を作れたのか――そもそもその毒は即効性なのか――わからないけれど、でも、今はうまくいくことを祈る以外に方法が思いつかない。

 匙はいま、投げられた。


 さて、毒が効くまでの間――まあ直接流し込んでるから半日くらいだろう――、例の三人組の様子でも見ておくか。

 三人組は、頑丈そうな鎧を着ている大きい人と、軽装で杖を持った小柄な人と、動きやすそうな鎧を着ている中くらいの人。

 走る速度は、蜘蛛も彼らもだいたい同じくらい……いや、彼らの方がほんの僅かだけ速いか?

 もうちょっと情報が欲しいけど、これ以上は確実に酔うからやめた。蜘蛛って乗り心地あんまりよくないんだね。

 とはいえ、何かしていないと流石に暇だ。

 さっき≪中心教義(セントラルドグマ)≫が自分の体にも使えること自体はわかったので、菌足で三つ編みをしたり、布を織ってみたりして時間をつぶす。

 これ、お金に困ったときにいろいろ使えそうだ。この世界にお金があるのかは知らないけど。

 それにしてもこのスキル、効果がシンプルなだけあって汎用性が高い。

 よくカードゲームとかで「テキストがシンプルなカードは強い」って言われるのって、こういうことなんだな……


 そう考えていた時。急に蜘蛛の動きが変わった。

 菌足を出して外を覗くと……三人組の、小柄な人の杖の先から水の球がいくつも飛んできていた。

 ……魔法? いや、魔力やスキルがあるならあってもおかしくはないか。

 蜘蛛はその攻撃をはねのけると、のけぞった状態からいきなり前足をその小柄な人のいたところに突き刺した。

 小柄な人はジャンプしてそれを避け、代わりに中くらいの人が長剣で切りかかる。

 そして刺さった足の節を切れば、蜘蛛はもう片方の一番前の足で反撃。

 それを大きい人が受け止めれば、後ろから小さい人が今度は岩の礫を打ち出し、蜘蛛がのけぞった隙に二人が離脱。

 ……ほー、いいチームワークじゃないか。

 この人たちなら多分蜘蛛に勝てるな。巻き込まれかねないし、脱出準備を、を……あれ? 天地がひっくり返って……?

 あ、体が勝手に抜けた。

 状況を確認するために蜘蛛を見る。なんとなく予想はついていたが、蜘蛛ごとひっくり返されていた。

 うわ、この蜘蛛後ろから二対目の足が完全に伸びちゃってるよ、どんだけバカ力なんだあの人たち……

 その三人組を見ようとした時。


 あれ、体が浮いて……?

 さっきの中くらいの人に持ち上げられちゃってる――!?

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