Ⅰ-3:vs渓谷蜘蛛
昨日は予約投稿をミスってしまったようで申し訳ないです。
今回は、前話の別視点になります。あとちょっと世界観の補足。
カチュアの森。大霊峰の南東の裾野に広がる大森林だ。
このカチュアの森には、悲しみの爪痕と呼ばれる大きな地溝が走っている。
その地溝の北端には、いくつかの川が滝を作り、その滝の裏が侵食された洞窟の中に、失われた古代文明の遺産が封じられた地下室につながっているものがある――という噂が流れていた。
失われた古代文明。高度な魔導具を生み出す技術力をもっていながらにして、なぜ滅ぶことになったのかなど、未だに謎の多い文明。
俺たちは連合の依頼で、カチュアの森に既知の全十三の滝へ赴き、その噂の検証をしていた、という訳だ。
調査の結果は――噂が真実であるとは認められなかった。
調査対象の滝の裏に周り、洞窟――というかほとんどただの窪みみたいなものだが――を調査したが、いくつか魔導具やその破片の発掘こそあれど、他の大きな空間につながっているような洞窟と呼べるような洞窟すらなかった。
噂なんてそういうものだ。でも、発掘できた魔導具や欠片を鑑定してもらって、いくつか研究員に回せば収支的にはそれなりにプラスになるだろう。
とっととタオ・ターミナルに戻って報告しよう。そう最後の洞窟を出ようとした時、事件は起きた。
この洞窟が今までの洞窟の中でも一番深かったということ、後は帰って報告するだけと浮かれていたこと、暗いところから明るいところへ出るため色々見えにくくなっていたこと……いろいろ原因はある。
その結果……入るときは細心の注意を払っていた、洞窟入ってすぐの渓谷蜘蛛の巣に引っかかってしまったのだ。
すぐに気づいて巣を破壊できたので最悪の事態は免れた。が、それに怒った巣の主に追われる羽目に。
カチュアの森の魔族や魔物たちは、特に競争せずとも地脈から十分な量のマナを得られる。
その分彼らは強く、そして温厚だ。だからこそ……怒らせたときは、とても危険なのだ。
洞窟を出て、すぐに川から離れ、森の中に入る。作戦会議だ。
「さて、どうする?」
「どうするも何も、渓谷蜘蛛の足は速いから、逃げるしかありませんよ」
「アタシもそう思うなぁ。とりあえず、アイツが立体的な動きの取れない広い場所まではね」
方針は決定。俺たち三人は再び獣道を行くことにした。
開けた場所に出た。
まず渓谷蜘蛛の動きを確認する。
……ん? なんか、動きがおかしいような……?
「あの渓谷蜘蛛、一番後ろの足を引きずってないか?」
「……たしかに、そうも見えますね。でも、それなら好都合です」
ローレンスはそう言うと、≪自己強化≫をかけて渓谷蜘蛛に突っ込んでいった。
ってちょっと待て、油断を誘ってるだけかもしれないのに。
「あの馬鹿……」
「まぁまぁ、トシフは考えすぎよ。じゃ、アタシも援護しに行きますか。{水泡弾}!」
ローレンスとテタニの攻撃にのけぞる渓谷蜘蛛。
その隙にローレンスはいったん戻ってくる。
(トシフ、コイツの外殻は他の個体と比べても硬い気がします。節を狙うべきでしょう)
(おう、わかった。情報サンキュ!)
渓谷蜘蛛がテタニを攻撃する。
けれども、その動きは、圧倒的に、遅い!
テタニは危なげもなく奴の攻撃をかわし、その前足は地面に突き刺さる。
その一瞬を狙って、俺は{回転斬り}でその節を切り飛ばす。
もう片方の前足で俺を狙う奴の攻撃も、ローレンスが受け止めたことは音で分かる。
それにしても。
さっきから、奴の一番後ろの一対の足が全く動いていない。不気味だ。
それどころか、腹がどんどん下がってきているようにも見える。
(テタニ! 水じゃなくて土属性で攻撃できるか?)
(え、土? ……わかった、まっかせて! {小石弾}!)
俺は残り六本の脚に気をつけつつ、腹の下に潜り込んだ。
そして、テタニの放った石の礫が、奴の頭に直撃した、と思われるタイミングと同時に。
「{弾性反射}、です」
「{横殴り}!」
ローレンスと俺の攻撃が奴を投げ上げた。
そして……奴はひっくり返った。その後ろ脚をついに動かさぬまま。
奴は倒れた瞬間、ピクリとも動かなくなった。
明らかにこの渓谷蜘蛛、調子がおかしかった。それに……
俺は見逃さなかった。奴の完全に倒れる直前に、奴の尻の近くから黄色い三角錐の抜けるのを。
俺はその謎の三角錐を拾い上げると、仲間たちの元に向かった。
戦闘場面、思ったようにうまく書けないもの。
ナチュラルにオノマトペを入れられる方ってすごいですよね、尊敬します。




