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Ⅱ-22:売却

「じゃあ本題に戻ろうか。僕としてはスコトリアが召喚を模索しているという前提が、一番飛躍していると思うんだけど」

「その話自体はスコトリア生まれ(ターレンシス)にして連合(ユニオン)に所属する信頼のできる者が話していたと、サーシャから聞きました」


 トシフのその言葉にノリュークは一度目を細め、私の方を見やった。


「サーシャ君、それは誰なんだい? 君は一月前に所属したばっかりだから、一応裏を取っておきたいんだ」

「ロセさんです。ロセ・ヨコスカ・カナガワ・ダイニッポン」

「蒼の方舟か。トシフ君、この話を彼女に伝えても……」

「構いません」

「わかった、こっちで彼女と連絡を取ろう。他に報告事項はないかい? この件は事実だとしたらとんでもない話だから、今は少しでも情報が欲しい」


 ノリュークが全員の顔を見て確認する。応接室が静かになると、今まで口を開かなかったユゥが恐る恐る口を開いた。


「アヴ、そしてユーキという者の他にあの場にはもう一人、ターレンシスの神官が居りました。その神官の言葉の中に一つ、妾の気になった単語がありました」

「ユゥ君、それは?」

「『勇者』です。神官はユーキに『あなたは、いずれ勇者となる』と呼びかけていました。ここからは妾の推測となりますが、彼ら(ターレンシス)は『勇者』を探すために召喚をしているのではないかと考えられます」

「ターレンシスの言う『勇者』は、魔物を滅ぼす者のことだ。当然連合(ユニオン)の組合員も含まれるだろうね。留意しておこう。他には?」


 目で合図を送りあう。多分これで報告は全部のはずだ。


「分かった。とりあえず、ファージスライムの報告書はうちで預かり、総連(アライアンス)の件についてはロセからも話を聞いてから本部に送ろう」

「アナトルの、スコトリア国境に近い冒険者組合(ギルド)にも、注意喚起をお願いできますか?」

「ロセへの事実確認がとれ次第、速やかに行うよ」

「……ありがとうございます」


 面会を終え、キイヨの研究所へと向かう。トシフは別件で呼び出されているので、先に三人で戻ることになった。


「遅かったじゃねーっすか」

「……多少トラブルに巻き込まれまして、冒険者組合(ギルド)に報告へ行っていたのです」

「ならしゃあねーっすね。トシフはまだ冒険者組合(ギルド)に?」


 肯定の旨を伝える。キイヨは「そっすか」とそっけなく返すと、いつもの椅子に腰かけた。


「で、今回は何があったんすか?」

「肥大化したファージスライム、でございます」

「あんだって!? ってことは、ジェリーがあるっすか?」


 キイヨの声が裏返る。もしかして、ジェリーって貴重な物なの?

 聞いてみれば、やっぱり水分を抜く方が手っ取り早いので手に入らない時は本当に手に入らないのだとか。


「サーシャさん、ローレンスさん、良ければそのジェリー、あーしが買い取るっすよ! ファージスライムっすから、一シタンあたり連邦銀貨一枚相当でどうっすか?」

「とは言いましても、今はトシフはいませんし……」

「いや、ローレンス。トシフに無茶ぶりされた時に、スライム関連の報酬は三人で分けていいって約束を取り付けてる」


 まぁその無茶ぶりも勘違いだったんだけどね、約束は約束だし。

 えっと、私の持ってるジェリーはおよそ三十万個だから……。


「ならば僕の分のジェリーは全部キイヨさんに売ってしまいましょう。僕が回収したのは二万個ほどです」

「二万……!? ちょっと待ってほしいっす」

「私が回収したのは三十万だから、ローレンスが八万、ユゥが八万でいい?」


 本当は二割だけど、計算めんどくさいし二割五分ずつ渡そう。


「あ、あの……そのファージスライム、どれだけ馬鹿でかかったんすか」

「だいたい四十タンくらい」

「よく一日遅れで戻ってきたっすね……」


 そう言うとトシフは保管できる量の確認をしに奥へ入っていった。その間に、私はユゥに八万個のジェリーを渡すことにした。

 渡す、と言っても倉庫などに直置きするのではなく、設置型の収納系魔道具(マジックアイテム)に納めるだけだ。

 ユゥのは空き容量が十九タンあるらしいので、難なく納めることができた。

 で、キイヨのなんだけど、残っている容量は十五タン。到底、全てを買いきれる量ではない。

 話し合った結果、ローレンスと私がそれぞれ七万個ずつを売り、何かのために容量を一タン空けておくことにした。


「うぅ……想定外の出費っすよ。まぁ、嬉しい誤算ではあるんすけど」


 キイヨが嬉しそうに悲鳴を上げている。まぁ、私も連邦金貨七百枚の大金を得られたので、暫くは稼がなくとも旅はできそうだ。

 というか、私の場合は切り詰めれば交通費以外の出費はいらないから、もう稼がずとも暫くは旅を続けられるのではないだろうか?

 そんな事を考えていると、研究所のドアが乱暴に開かれる。慌てた様子で、トシフが入ってきた。


「サーシャ、ローレンス。重要な話がある。俺はもう、お前たちと魔導具(アーティファクト)を掘ることはできない」

★Tips:通貨

通貨は、各国ごとに異なる通貨を提供しているが、世界冒険者組合連合会(ギルドユニオン)内部では、その本部があるアナトル連邦の通貨が使われることが多い。同様に、冒険者組合総連合会(ギルドアライアンス)では神聖スコトリア皇国の通貨が利用されている。

ただし、現状どの国も金本位制であるため、外貨払いも金貨払いであるならば融通が利くようだ。

連邦金貨は、7リンオモスの金と同じ価値があり、約10000円の価値がある。

また、連邦金貨1枚は連邦銀貨100枚、連邦銅貨1000枚と等価であると定義されている。

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