Ⅱ-21:ノリュークへの報告
翌朝。夜行の駅馬車でオウォッキャンに戻ってきた私達は、キイヨの研究所へ寄らずに直接冒険者組合に向かった。
昨晩、駆け込みでヒムーニャから緊急連絡を入れたことが功をなしたか、スムーズに組合長と会うことができた。
「お久しぶりです、ノリュークさん。こっちがパーティのローレンス、サーシャ、ユゥです」
「いやー、待たせちゃって、すまないねぇ。僕がオウォッキャンの組合長、ノリューク・オウォッキャンさ。昨日送ってもらったレポートには一応目を通しておいたから、まずそっちの記載内容から確認させてもらっていいかな? まず、ファージスライムを討伐したという件だけど……」
「見てもらうのが早いかと思います。サーシャ、ガラスのを」
ノリュークに机の上に置いていいか確認し、装置を机の上に置く。こうやって見ると、この装置意外と小さいな。
「成る程ね、これだったら確かに時間はかかれど討伐はできるね」
「……疑ってるのでしたら、ジェリーを出して証明しましょうか? 三万個くらい」
「ははは、サーシャ君、冗談はやめてよ。そんなことしたらここは大混乱さ。そもそも、昨日目撃報告も既にいくつか上がってたんだ、その存在を疑ったりはしないよ」
ノリュークは半笑いをしながら「僕だってキングモービィの話も聞いてるからね」と言うと、机の中から紙を取りだして記述する準備を整え、一転真面目な顔になってトシフに質疑を投げかけた。
「それでだね、トシフ君。このファージスライムの発生要因と総連とがどう関係しているのか、君の考えを聞かせて欲しい。僕はね、あの総連が危険な魔物をわざわざ生み出すとは思えないんだ」
「えぇ、まずあの場にいた総連の者共の発言ですが……」
まずトシフは、あのアヴという老人の言っていた話、素手で殴った学生と水を与えた学生の話を伝えた。
「……そのアヴという老人の言葉は、本当に信用できる言葉なのかい? スライムに素手だの水だのなんて、俄かには信じがたいが」
「あの場でユーキという者がアヴの説明に反駁をしていましたが、事実に対してではなくアヴの言い方に反駁をしている様子でした。故に俺は事実だと認められると思います。それともう一つ、そのユーキという者の言葉に気になる単語がありました。ユーキは確かに『喚ばれた』と発言していました。ここからは、俺達の推測ですが……」
「ここまでは事実、ということだね。聞こう」
それからトシフは、あの場で私達のまとめた仮説を話した。世界を歩く者の召喚の事を。
「うーん、突拍子もない話だけど、確かに筋は通るね。昨日もスコトリアは休戦協定を破ってアナトルに侵攻を始めたようだし、きな臭い匂いは感じる」
そうノリュークが言うと、急にローレンスが立ち上がった。
「ノリュークさん、それは本当の事ですか。ここ十年休戦協定は……」
「本当の事だよ」
「そうですか。トシフ、後で話をさせてください」
「この報告の後でな。言いたいことは察しがついている。ノリュークさん、すみません、横やりを入れてしまって」
そう言うとトシフとローレンスは頭を下げる。
「ローレンス君はアナトルの出だったね、心配するのは無理もないさ」
「寛大なお心遣い、ありがとうございます」
そして二人は椅子に掛け、改めてノリュークの方を向いた。




