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Ⅱ-19:救出

すみません、ミスで本日1/18は二話同時投稿をしてしまったみたいです。

このエピソードは、その2話目のエピソードです。


これからしばらく、主人公が空気です……。こんなはずじゃなかったのに

 表面の、ユゥが水分を抜いた部分さえ突破してしまえば、あとはもう簡単だった。

 凍らせて、砕く。凍らせて、砕く。マナ切れの心配すらない、単純な作業だ。

 それも、体を思いっきり動かす、比較的派手なタイプの。トシフの剣をふるう姿が輝いて見える。

 いや、比喩ではなく輝いている。トシフが五割、素手で砕いているユゥが三割、破片を回収しながら砕いている私とローレンスが合わせて二割くらいだ。

 途中で壁の裏から魔法陣で凍結させるという方法に気付き、効率もさらに上がった。壁の裏だと、大きな魔法陣も形を安定させられるからね。

 そして、二タン程削り進むと、ファージスライムの上側がようやく洞窟の天井から離れた。


「このファージスライムの向こうにいる方、聞こえますか? 聞こえたら返事をお願いします、どうぞ」


 トシフが叫ぶ。するとすぐに返事があった。


「そちらにどなたか、いらっしゃるのですか!? ……皆、神は我々を見捨ててなどおらなかったのですぞ!」


 その言葉に、スライムの向こう側から歓声が聞こえる。……思ったより元気じゃないか!


「申し訳ないのですが、我々には余力がなく、攻撃を防ぐので精一杯なのです。攻撃は、貴殿達に一任してもよろしいでしょうか、どうぞ」

「……了解。こちらも注意して攻撃を行うが、あなたたちも巻き込まれぬよう注意していただきたい。

 聞こえたとおりだ、ローレンス、サーシャ、ユゥ。行くぞ」


 破片が向こうに飛んでしまわないようにしながら、攻撃を再開する。

 ファージスライムは、どんどん薄くなってゆく。そして、最後にユゥがもう一度『碎』の文字を刻めば、スライムの壁はなくなり、私達の目の前に三人の男女が姿を現した。

 その中で、最長老と思われる長い白髪の老人が、深く頭を下げて口を開いた。


「我々を助けで下さり、ありがとうございます。そして、貴殿達を巻き込んでしまったことを、深くお詫び申し上げますぞ」

「いえいえ、こちらとて討伐しなければ命はありませんでしたから、お互い様です。……して、巻き込んでしまった、とは?」


 トシフのその声に、老人は申し訳なさげに答える。


「いえ、貴殿達もご存じでしょうが、このファージスライムは千カスクを超えるほどに肥大化していたのですぞ。それは、我々の責任であり、我々で処理をせねばならぬ問題なわけですな。我々は、それを貴殿等に押し付けた」

「……帝国単位か。礼がわりも含めて、その過程を詳しく聞かせてほしい」


 確か一カスクが約三百八十一・四シタンだから、確かに私の推定と大差ない。

 と、いうことは。この老人は状況を確りと把握できていた、ということになる。

 老人の説明はこうだ。老人は、研究都市(ユニヴァーシティ)の学生たちのグループを率いて、今朝方タカバン(ヒムーニャの北にある村)を出ておよそ五十名ほどでこの遺跡に来たのだそうだ。最初は順調だったのだが、一リーヴ――一リンタンより少し多いくらい――程のファージスライムを見かけた際、一人の学生が突然「例えば、こんな雑魚なら素手でも倒せる」と豪語し、止める間もなく戦い始めてしまったのだという。


「ファージスライムなんて、下手したら鎧ごと食われるのだが。そもそも素手で戦おうってのが信じられないが……」

「だから我も必死に止めたのですぞ。しかし、彼奴は言うことを聞きませんでしたな」


 そして彼は案の定鎧を食われ、狂乱して失禁。ファージスライムはそれすらも食らい、少しずつ大きくなっていった。

 彼の周りにいた物も彼を助けようとしたが、彼を傷つけてしまうこと、そして自分も同じように食われてしまうこと、その両方が怖かったのだろう、過度に丁寧になりすぎた。助けようとしたものも武器を食われてしまった。


「だから私は言いましたぞ。『貴殿殿、死にたくなければ彼から離れることですな』、と」


 そして老人は彼の周りから学生たちを放して、火属性の魔術でスライムだけを焼き始めたのだという。

 だけれども。どこにでも、余計なことをしでかす馬鹿がいる者はいる者である。学生たちの中に、老人の意図を理解もせず、老人を抑えつけた者がいたのだ。

 そのような邪魔さえ入らなければ、老人にとって炎の制御などたやすい事。食われかけている彼を残し、スライムだけを焼き切ることなど、失敗するはずもない。

 だが……それは、適切に集中できれば、という注釈が入るのだ。精密な魔術を行使するときに邪魔をされては、歴戦の魔術師とて成功などできない。その愚か者は、老人の炎の制御を不能としてしまった。

 だが、それだけなら犠牲は食われた学生だけで済んだはずだった。しかし、その愚か者はさらなる大禁忌を犯してしまったのだ。

★Tips:帝国単位

帝国単位は、アイヌア帝国で発明され、神聖スコトリア皇国でも使用されている単位であり、時間の単位を除けば互換性は無い。

長さの単位は、セントルが基準であり、1セントルは10センチメートルに等しい。

また、体積の単位は、一辺1セントルの立方体の体積により定義されるリポル、1日に人間1人が必要とする水の量により定義されるリーヴ、樽の体積により定義されるカスクなどがあり、1リーヴが3リポル、1カスクが36リーヴである。

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