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Ⅱ-18:反撃

話数振り直し、完了しました。


すみません、ミスで本日1/18は二話同時投稿をしてしまったみたいです。

このエピソードは、その1話目のエピソードです。

 ファージスライムの動きが止まった。

 壁の向こうを見れば、そこに残っているのはもう一タンも無い程度まで小さくなったファージスライム。


「ユゥさん、壁の向こうにいるのはもう一タンくらいだけど、行ける?」

「もうその程度でしたら問題ありません」


 トシフとローレンスにも、移動の準備をしてもらう。報告書を書くのは一旦中断だ。

 まず人形をしまい、そしてプロトタイプのガラスでできた装置をしまう。そして一旦三人を壁から離し、壁を破壊する。


「サーシャ様!」


 視界が青く染まる。さっきファージスライムの捕食メカニズムについても観察していたから、飛びかかってくるのなんて簡単に想像できた。

 でもね、私だってテタニにやられた時から何も対策をしていないわけじゃない。

 空に浮くために使っていた音響浮遊を、今度は逆向きに使ってやればいい。そうすれば、不意に液体を掛けられたとしても弾くことができることは確認済み。

 針や刃のような鋭いものならともかく、スライムの体なんていう粘性流体のようなものは、決して私には届かない。

 {ウォーターカッター}……は水なのでまずいから、{鎌鼬(カマイタチ)}でスライムを切り裂き、脱出する。なにも水を扱うだけが水属性魔術ではないのだ。

 ふと横を見れば、ユゥが再び『凍乾』の文字を刻むのが見える。ファージスライムから、水分が抜けてゆく。

 乾ききったファージスライムの体は、もう動かなくなっていた。


「これで、終わりかな?」

「……あまり人を驚かせないでくださいませ」

「大丈夫、いざとなったら体の大半をしまって火属性の魔法陣使ってたから」


 さて、ファージスライムのもう一端の方を見てみよう。

 重要なのは、このスライムが分裂して別れたのか、それとも全体がこっちに来たのか、前者なら向こうにどれだけの体があるのかだ。

 通路の下から通路の様子を観察する。……いた。五タン程の小さい、それでも十分大きなファージスライムが、数名ほどと戦っていた。

 様子をトシフに伝えて判断を仰げば、案内を頼まれる。

 で、そのスライムの近くまで来たわけだけれど。まずは、巻き込まないためにも残っている数人にも気づかせなきゃいけない。


「ローレンス、ラジングルマは行けるか?」

「通路が狭くて厳しいですね。ユゥさん、何か光か音で……」

「恥ずかしながら、妾はもうすぐマナ切れが見えております。向こうに届くほどともなれば、動けなくなる可能性が否定できません」

「……まぁ、もうSランク程度で大きさもあらかたわかってるし、挟撃に出てもいける、か」


 トシフのその言葉に、皆武器を手に持つ。私も人形に入って、右手に兜割を持ち、左の掌に魔法陣を展開できるようにしておく。


「おいサーシャ、炎は使うなよ? ここは狭いからあっという間に酸欠だ」

「それくらいわかってるって」

「ならいい。……じゃあ、行くぞ!」


 その言葉に、まず飛び出すのはユゥ。『凍乾』の文字を刻み、急激にファージスライムをしぼませる。

 そして、その水分が抜けて動けなくなった部分に、左掌を当てて、魔法陣を起動する。

 キイヨと魔法陣の実験をしている時、お遊びで改造して偶然再発見したこの魔法陣。これを実際に動かしてみたとき、キイヨが詳細に調査をすれば魔導埃黴(マドウホコリカビ)の評定がE-からE+に上がるかもしれない、と言っていた{吸熱(ヒートドレイン)}の魔法陣だ。

 この魔術は、範囲内の熱エネルギーを奪い、魔力に還元する。これは普通に魔法陣として描けば、還元された魔力が魔力を呼び、暴走してしまうタイプのものだ。

 でも私の体で描けば、還元された魔力は魔法陣だけでなく私にも流れ、マナを回復してくれる。対象から、熱を奪いながら。

 ……まあ、やりすぎると私自身も凍ってしまうから、あんまり使い勝手がいいわけじゃないんだけどね。


 閑話休題。そうして凍ったファージスライムの体を、ローレンスが砕こうとして……砕けなかった。あれ?

 トシフが何かの技能を使って砕こうとする。私も兜割で割ろうとする。ユゥも砕かんとする。できなかった。


「……表面の水分が少なすぎですね。ジェリーを一つ、頂けますでしょうか」


 ジェリー? よく分からないけど、ユゥにジェリーを渡す。

 するとユゥは、ジェリーをレイピアの先につけてファージスライムに『碎』の文字を書き、凍結したファージスライムを砕いた。

★Tips:魔法陣

魔法陣は、魔力を循環させることで起動時に魔力を流せば理論上は半永久的に、そして連続的に魔術を発動できるものの総称である。

ただし、それでも発生する現象による魔力の消費は抑えられないため、魔法陣の多くは定期的に魔力を補給する必要がある。

中には外部のエネルギーを魔力に還元する魔術の魔法陣もあるが、こういった魔法陣は流れる魔力が増幅し続けて制御不能となってしまうので暴発魔法陣と呼ばれている。これは単独使用は厳禁ではあるものの、通常の魔法陣との組み合わせで見かけ上の系全体の魔力消費をゼロにする永久魔法陣の研究が日々行われている。しかしながら、扱いは難しいのかちょくちょく事故が起きているようだ。

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