Ⅱ-17:SSランク
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さて、明日の未明までにも引き続き第Ⅱ章の話数を振り直し、章別話数となって53話繰り下がります。
よろしくお願いします。
ファージスライムは、貪欲だ。
そして、スライム属に共通して言えることだが、切断されることをあまり恐れない。むしろ金属を捕食できる種ともなれば、肉を切らせて骨を断つと言わんばかりに剣に突っ込んでくる。それは、今まで多くの冒険者が使っていた剣が金属製だからである。
流石に火は恐れるようではあるが、それさえなければ何も考えずに食事に突っ込む。それが罠であるかなど、気にすらもせずに。
その習性を利用した、対巨大ファージスライムの切断装置が、今、完成した。
石の刃を取り付け、往復運動を開始する。そして、左右一つづつ動いていない口から菌足を伸ばし、奥の通路との間の壁を吹き飛ばせば、ファージスライムの津波が押し掛ける。
伸ばした菌足をしまい、最後の一対の刃を起動する。
最初にガラスで作った時の百六十倍近い効率を発揮する、スライム切断施設の完成である。
私の仕事は、毎秒落ちてくるジェリーをしまうだけ。当初の予想通りなら、あと一時間ちょいもすればファージスライムは全てジェリーと化すだろう。
「三人とも、お疲れ様。今回も、俺は何もできなかったよ……」
「そんな事は無いよ。トシフからファージスライムの具体的な倒し方を聞かなかったらこんなことできなかったし」
「そうですよ。それに、僕だって最初の器械と刃を四つ造っただけですよ? それも、炉の火力はユゥさん任せでしたし」
「いえいえ、妾こそ炉の火の番の他は、刃の動作設計を行っただけでございます」
「お前らに謙遜されると俺の肩身が狭くなるからやめてくれよ。でも……まだ、気を抜くなよ」
わかっているさ。だって、まだあの壁の向こうは青一色なんだから。
「ちょっと落ち着いたし、本当にどこまでつながっているのか見てくるね」
右手から伸びた菌足はジェリーをしまっているから、左手から発掘の時のように、岩の中に進んでゆく。
通路の中は……うわ、まだ満杯だ。広間の床に進み、ファージスライムの繋がる先へと進む。流石にこの広間が満杯になるほどではなかったようで、その体は、私達が来た道ではない別の道へと続いていた。
……ん? まだ、ファージスライムがそちらの道からは撤退していない? ってことは、さっきの人たち、まだ戦っているのか?
いや、でも。この辺のファージスライムの体は、私達の方に進んでいるように見える。じゃあ、この先は?
聞こえる。爆発音が。まだ、あの十余人――今何人残っているのかはわからないが――は、戦っているんだ。
爆発音の方に近寄る。何か結界があるようで近づけないが、ファージスライムのもう一つの端を、やっと見ることができた。体積は、推定四十タン。とすると、すべて処理するのにかかる時間は、三時間半?
「見てきた。推定体積、四十タン、単純分裂で四千体分」
「マジか……。また報告書案件じゃねえか」
「貴女は一月間隔で二回目ですが、本来こういうのって一年に一回あるかないかなのです」
「むしろそれだけの頻度である方が驚きだよ……」
連合では、Bランク以上の組合員が自分基準、パーティの場合は一番ランクが上の人のランクを基準として二つ以上上のランクと認められ、なおかつ敵対する魔物個体と遭遇した場合には報告書提出義務が生じる。
スライム属の場合、基本的には体の大きさと保有マナは比例する。これは、スライム属が基本的には生命維持以外に魔力を使用しないためだ。そして、一般的なスライム属は、エサが無ければ体が二倍以上になると分裂する。
つまり、四千体分の体積を持つファージスライムの場合、少なく見積もって一般的なファージスライムの二千倍はマナを保有している。ケタが三つ上なのだ。一般的なファージスライムはBランクだから……。
「SSランク、かぁ……」
「そんな遠い目をするなよ。キングモービィも表向きはSSSで報告しただろ? しかもアイツ、古い記述を見る限りは天災ランクはあるから」
なんせ魔王になりかけた個体だからな、と笑いながら言うトシフ。
おぅ、知りたくなかったぞその情報。っていうか、そもそも魔王って何だ。それに、天災ランクに効くハニー・トラップってどれだけヤバい毒なんだよ……。
まぁ、神経も筋肉もなさそうなファージスライムには出しても効かなさそうなんだけどね。
「ですが、報告書ということは、あの十余人からも話を聞かなくてはなりません。僕は間違いなく発生要因に絡んでいると思います」
「同感だ。まだ生き残ってるなら、終わったら助太刀に行くしかねぇな。でも、今は書ける分だけでいいから、報告書を書いておこうか」
床に寝転がり、鉛筆を握る。ただ待つだけの戦いよりももっとめんどくさい戦いが、そこにはあった。
★Tips:魔物のランク
魔物のランクは、平均的な同一のランクの組合員が3人がかりで無傷で倒せる程度、で定義されている。
ただし、これはあくまでもBランク以下の話で、Aランク以上は平均的なBランクの魔物の保有マナ量を基準として、保有マナ量が10倍になるたびランクが一つ上がる。
こちらは定義上Sランクより上のランクも存在し、SSランク、SSSランク、特ランク、天災ランクと上がっていく。天災ランク以上はもう区分が無意味と考えられている。




