Ⅱ-13:ファージスライムとの遭遇
★おしらせ
突然ですが、明日14日未明、主に序盤の改稿作業を行います。
大幅には話の流れは変わりませんので、既に読まれた方は読み直していただく必要はありません。
これに伴って、話数・章番号が最大五つずれますのでご注意ください。タイトルも変更されますが、サブタイトルの話数は変更しません。
即座に戦闘態勢になりながら、静かに、警戒して近寄る。
ローレンスはゴーグルを掛け、壁を見やる。
「おおよそ三百フト先、人族十余名が、何者かと交戦中です」
「判るか?」
「いいえ。少なくとも、音を吸収してしまうことは確かです」
通路に沿って視点を広げる。確かに、この先で五人が、青い何かと戦っているのが見えた。ついでに、彼らの声も拾ってみる。
「久々にヒムーニャまで来たと思ったら、いきなりこれかよ」
「うるさい! 戦闘に集中しろ! 喰われるぞ! じーさん、とっとと焼いてくれよ!」
「無茶を言わないでほしいですぞ。こんな狭い中であの巨体を焼くなど、我々も鉄板焼きになってしまいますぞ!」
「……火が有効、喰われる、でかい、というとこまでは聞けた。あと、青い触手のようなものが見える」
「おいおい、マジかよ。その人たちには悪いが、あの頂点捕食者は起こしてしまうのが悪い。見捨てた方が良い奴だ」
少なくとも、こんな狭い通路じゃ戦いたくない、と吐き捨てるトシフ。
でもね、彼ら退却しながらこっちに来てるんだ。
私達も、静かに、そして速やかに坑道の奥へと逃げる。
「次を左、その次を右に行けばそれなりの広い空間に出ます。そこの、入った所から数えて左から二番目の道を進むと、また別の広い空間です」
ユゥの言うとおりに二つ目の広間へ出る。こういうのは袋小路に追い込まれたら一環の終わりである。
まぁ、相手が何なのかはまだよくわかってないけど。
「あぁ、正直テタニが抜けた状態じゃ一番会いたくなかった奴だよ、あのファージスライムという魔物は」
「なるほど、ファージスライムですか。スライムの類は基本的にテタニさんが薬剤かけて終わりでしたからね」
スライム、か。ファンタジーではお馴染みのアレだ。でも、この二人の反応を見る限り、この世界のスライムはだいぶ厄介な奴らしい。
っていうか、あの人前々から薬ぶっかけてたんだね……。
「っていうか、ファージスライムってそんな厄介なの?」
「何を言ってる? ただのスライムならともかく、ファージスライムは動く物全てを食らいつくす。多分奴らも対応見誤って剣でも呑まれたんだろうな」
「皆さま、呑気な事を言っている場合ではないようです。気づかれました、ファージスライムに」
ユゥの視線の先を見れば、青いぷよぷよしたものが、恐るべき速さでさっき通ってきた通路を駆け上がってくるのが見えた。
「しょうがねーな、いいか、この広間の入り口で押さえろ。決してこの部屋には入れるな! それから、サーシャとローレンス。奴の体の一部を切り離したら、奴が自食するより前にしまってくれ」
「わかった。行こう、兜割」
「頼みますよ、ラジングルマ!」
「ユゥ。炎以外で奴の水分を抜く方法があれば」
「たやすい御用です」
ローレンスが、大きな雷撃をファージスライムに投げる。
私も爪先から菌糸を伸ばし、魔法陣の展開準備をする。
その間に少し伸びてきたファージスライムに対し、ユゥが『凍乾』の文字を刻み付ければ、ファージスライムはその部分からしぼみ始める。
追い打ちをかけるように文字を刻み続けているユゥを追いかけ、兜割で乾いたファージスライムの体を適度な長さに叩き割り、しまう。
前の広間との中間程度まで行ったところで、ユゥは『碎』の文字を刻み、パリッパリに乾かした部分を砕いた。菌糸を伸ばして、それらをすべて回収する。
「戻りましょう。これ以上は、分断される危険性があります」
ユゥは思ったよりもマナを使ってしまったらしい。どうも、想像以上にこのファージスライムは大きかったのだとか。
「トシフ様。あまりお役に立てず申し訳ございません」
「いや、俺なんてまだ何もしてねぇし……。大きさの検討は……その様子だとついてないようだな。さっきの奴らが水でもかけたか? 下手したら、キングモービィよりでかいか……。計画変更だ。あの通路を塞いで、奴が撤退するのを待つしかねえ!」
「分かった、やってみる!」
まず、念のためローレンスがラジングルマを放ち、そして私が{石弾連砲}で道をふさぐ。
もちろん、それだけではファージスライムはすり抜けてしまうので、採掘の際の岩屑やおやつのために大量に持ってきていた土などをありったけ注ぎこむ。少し水を入れて、トシフとローレンスが大槌で突き固め、そしてユゥが『烤』の文字を刻んで焼き固めれば、簡単な蓋の完成だ。正直、この道が上り坂だからできる芸当である。
さて、脱出口を見つけるのと、ファージスライムが壁を突破するのと、どちらが先だろうか?




