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Ⅱ-12:ヒムーニャ

 オウォッキャンで活動するようになってから、一月ばかりが過ぎた。

 解放の丘(ヒルオブリバティ)に行ったのは結局あの一回だけで、それ以降は基本的に駅馬車でヒムーニャの村まで行き、ヒムーニャ大遺跡の探索・発掘をするか、オウォッキャンでキイヨの実験を手伝う日々が続いた。ヒムーニャでは、魔導具(アーティファクト)の非常に効率的でかつ誰にもまねできない発掘方法により、当面困らない程度には現金収入を得ることができている。

 あと、「かきのきくりのきかきくけこ、きつつきこつこつかれけやき」という風に、普通にしゃべれるようになった。これは個人的には大きい。


 それともう一つ、重要な情報を入手することができた。世界を歩く者ディメンション・ウォーカーの発生についてだ。

 世界を歩く者ディメンション・ウォーカーは、二種類いる。召喚型と転生型。私やロセ、そして恐らくミーシャも後者だ。

 しかしながら、召喚型については七百年前を境に記録がばったりと途絶えており、以降は転生型のみ。

 妹も恐らく転生型だろうと、予想できる。

 だが、ここで一つ問題があった。転生型の場合、基本的には普通の生物や魔物と同じように生まれてくるのだ。

 生物でない魔物の場合は、おそらく最初から動き回れる。でも生物の場合は、動き回れるようになる、つまり成長するまでに時間がかかる。

 そして、この世界とロセと私がこっちに来る前の前の世界の日時を照合したとき、総合的な時間のずれは十月±一月のみだった。つまり、前の世界とこの世界の時間比はほぼ一対一に近いことも分かっている。

 これが何を意味するか? 妹の転生先が仮に成長の遅い種族だった場合、名前の知れ渡るまで待っていては、ただ前の世界に戻っても全く意味がないことがわかってしまったのだ。

 でも、成長するのを待たずして探す方法のあるのかと聞かれれば、無い。ならばすべきことは、ただ一つ。存在するのかは分からないが、時間跳躍の手法を見つけるしかない。

 完全に手詰まりだ。ロセの言っていたスカラーというドワーフは、時間跳躍に関してまで発見してはいるのだろうか? いや、いないだろう。

 そもそも、私の寿命って一体どのくらいなんだか。調べてみても、個体差が大きく環境によって異なるとしか記述がなかった。まあうん、私だって前の世界でもキノコの寿命とか気にしたことすらなかったしそんなもんだろう。


「おーい、サーシャ。そろそろオウォッキャンに戻るぞ」

「はーい」


 岩盤の中から出て、人形に入る。結局、一番落ち着くのは不定形なんだけど、便利なのは人形だ。

 三人はキイヨの造った音波ゴーグルを外し、既に仕分けを始めていた。


「上の地層だと魔導具(アーティファクト)が多かったから、ここでも多く出てくるかとも思ったが、ハズレだな。この地層は化石は多いが、魔導具(アーティファクト)は少ない」

「無駄だったってこと?」

「いや、違う。発掘調査に無駄なんて無いさ。この地層、そして一つ上の地層からはな、古代文明の生物たちと魔導具(アーティファクト)の死した時期が大幅にずれていることがわかるだろ? すなわち終末魔導具大戦(カタストロフィー)が思ったより長い時期にわたって行われていて、その初めの方では魔導具(アーティファクト)は動きを停止せず、生物が一方的に駆逐された。少なくとも、この地域においてはそうだったことが窺える」


 うわ、これだけでそんなことまでわかるのか。博物学者ってすごいな。


「じゃ、とりあえずこの辺にサーシャの採ってきたのを出してくれ。仕分けをする」

「はいよ」

「うーん、これは骨、これも骨……」

「ちょっと待って下さい。これは骨で作られた武器に見えます」

「魔法陣がありますね……ですがこれはただの魔道具(マジックアイテム)でしょう」


 私は効率的に掘ることはできるが、仕分けはできない。そこで、この三人に仕分けてもらって、魔導具(アーティファクト)と思われるものだけをキイヨに解析してもらっている。売りに行ってるのはトシフとローレンスだし、そこで私の掘った分の半分だけもらうことにしている。

 仕分けが終わって、ローレンスが私の発掘した物たちをしまい、ヒムーニャの遺跡の出口へ向けて歩き出す。


「今回は五日ほど潜ってたが、どうだサーシャ。こういうのも慣れてきたか」

「慣れるも何も最悪私は土の中で眠れるんだって」


 というか、そもそも睡眠自体が必要ないし。

 そんな話をしていた頃である。

 坑道の入口の方から、戦闘音が聞こえた。

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