序-6:旅立ち
スキルの情報が見られない? どういうことだろう。
とりあえず、≪念話≫の情報を見てみる。
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スキル:≪念話≫
起動
・近傍の他の個体と思念をもって通信を行う。
誘発
・他の個体から≪念話≫またはそれに準ずるスキルを受けたとき、その相手と思念をもって通信を行う。
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なるほど。こんなふうにスキルの情報が見られるのか。それに、AとTってそういうことなのね。じゃあ、これをユニークスキルだと……
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ユニークスキル:≪水平獲得≫
NO DATA
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うん、なるほど、まったくわからん。≪中心教義≫も、似たような感じだ。
つまり、これは……大霊樹様ですら情報を入手していないスキル。自分でスキルを使って、どんなスキルか確認しないといけない。
≪水平獲得≫って事は何かを獲得するスキルなんだろうけど、いったい何を獲得するのだろうか。
それに、≪中心教義≫の方は……そもそも字面からどんなスキルなのかすら予想がつかない。
魔力操作・感知の練習に加えて、スキルの検証もここでできるならやってから旅に出よう。いったいいつになるのか、見当はつかないんだけどね。
その日の夜。この体は体が乾いた時を除けば、なぜか眠くなることがないので、夜は格好の練習時間だ。
スキル≪基礎魔力感知≫のおかげで、視覚情報は(相変わらず白黒ではあるが)前の世界での自分と同程度までは得られるようになった。しかも、感度をあげれば夜でも昼間と同じようにものを見ることができる。ならば、次は色だ。
でも、その前に……一つ気になっていたことがある。私はいったいどうやって空マナを並べられたのか?
少し視界が開けたその時は、そっちにばかり気をとられていた。でも、おかしな話だ。
そもそも空マナをどうやって並べればいいのかわからなかったからこそ、先に魔力感知のトレーニングをしていた。にもかかわらず、視界が開けた。明らかにおかしい。だけど、なぜだかわからなかった。
でも今日、判断材料が一つ増えた。スキルだ。
さっきミーシャは、気絶している時でも発動しているスキルがあると言っていた。そういうスキルが、空マナを並べていたのだとしたら?
今、情報を見られる四つのスキルにそんなことができそうなものはない。つまり、情報を見られない二つのユニークスキル――≪水平獲得≫と≪中心教義≫――のどちらかがそういうスキルなのだろう。
地中に体を伸ばして、その中に空マナが並んでいるさまをイメージする。空マナは魔力を吸収するから、空マナを突き抜けて魔力を流せば、前後で魔力の流れに差が出るはず。
まずは、≪水平獲得≫を使ってみる。そして、魔力を流す。
……何の変化もなかった。この獲得というのは、どうやら感覚を獲得することとは違うらしい。
ならば、≪中心教義≫はどうだろう。同じことをする。
……お? 微妙に魔力が減っている? 確認のために、その部分を地上に出す。……見える! 見えるぞ! 成功だ!
どうやら、空マナを並べられたのは≪中心教義≫によるものだったようだ。
これで、少し≪中心教義≫の情報は得られた。ならば、≪自己閲覧≫にも反映されるのかな?
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ユニークスキル:≪中心教義≫
起動
・設計を基に素材を組み立てる。
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……これだけ? わぁお、シンプル。これのどこが中心でどこが教義なのか全くわかんないけど。
まあ、まだわかってない能力もあるのだろう。そのうち増えてくるか。
じゃあ、次は色だ。≪基礎魔力操作≫のおかげで、どうも単純な流れであれば繊細に調整ができるようになったようだ。
並べた空マナの外側に、空マナに流してしまわないように注意して、薄ーく細ーく、そして均質に魔力の流れをいくつか作る。
そして、その間隔を少しずつ、少しずつ狭めていく。
どんどん世界が暗くなって……ある瞬間から、まるで万華鏡のように光がうつろう。
CDを斜めから眺めたとき、角度によっていろいろな色が見えることがある。この性質を使えば、光の波を色ごとに分けられるはず。
そしてその赤い光の景色、緑の光の景色、青い光の景色なんかの合成は……組み立てなら≪中心教義≫がやってくれるのかな?
そう思って≪中心教義≫を使うと……ぐちゃぐちゃの景色が目前に広がった。駄目だ。でも、どうしてだ……?
そんなこんなで視覚を復帰できぬまま、その日のトレーニングは終了した。
その先に行き詰って、半月ばかりが過ぎたころ。ミーシャが、強く強く魔力を流すと光を当てた時に特定の色の光が魔力に変換されることを教えてくれた。それをいくつかカラーセロファンのように空マナの上を流せば、特定の色の光だけを通すことができる。やっと、色覚を得ることができたのだ。
そして、色覚を得た、ということは……ミーシャとの別れを意味する。そろそろお世話になり続けているのもいたたまれなくなってきたし、それに、いい加減妹を探しに行かなければ。
(と、いうわけで、ミーシャ。私はそろそろここを出て旅をしようと思っている)
(……そっか。ボクからした、約束だもんね。でも、絶対帰ってきてねぇ。お話の続きも、旅のお話も、聞かせてくれなかったら怒っちゃうぞぉ)
(ありがとう、ミーシャ。行ってきます)
(行ってらっしゃい、サーシャ)
★Tips:スキル
スキルは、この世界で最も謎の多い存在である。ただし、スキルを獲得すると何かが変わるようで、大霊樹はそれを認知してスキルの有無を確認することができている。
また、それらの能力は、主に常在能力、起動能力、誘発能力の組み合わせではあるが、これらの区別も大霊樹が便宜上つけただけのものである。




