序-5:スキル
五日ほどして、この方法がそもそも目がものを見るプロセスとほとんど同じだということに気づいた瞬間、白黒ではあるが急に視界が開けた。
そして、視覚情報をある程度得られたことで、いろいろなことがわかるようになってきた。
私の体は不定形で、基本的には地面にべったりと張り付いている。だいたい体を楽にした状態で、直径がミーシャの身長の二割弱程度の円盤状の大きさだ。
今日も、いつものように魔力操作の練習をしながら土の中を駆け巡っていた。食事兼運動である。
どうも、この体はキノコをはじめとした菌類やバクテリアを食べているようだった。
食べる、と言っても、土の中を移動して――地上だとすぐに体が乾いてしまうのだ――いる間に、体の表面にくっついてしまった彼らを消化している感じだ。
あの不思議物質――マナ――の無いところでも土の中をうろうろするだけで、満腹、という感覚が出てくるのだから、おそらく間違ってはないだろう。
そんな中で、私は、自分で流している魔力とは違う、それはすごく弱く――まるでそよ風のような――やさしい魔力の流れに気づいた。その瞬間、
【アカシック・セカンドが告知します。
個体名:サーシャ・タカトオ・ナガノ・ニホンが、以下のスキルを獲得しました。
≪基礎魔力感知≫≪基礎魔力操作≫
これに伴い、同個体に変異分化が発生しました。以上です】
頭の中に声が響いた。
っていうかちょっと待って。スキルって何、変異分化って何だ。何が起きたのかさっぱりわからない。
私は全速力を以てミーシャの家に戻って問いただした。
(あれぇ、ボク説明しなかったっけぇ?)
(聞いてない。全く)
(うぅん……? あ! あの日教えようと思ってたけど忘れちゃってたんだぁ!)
この一週間で分かったことだが、ミーシャはどこか抜けているところがある。「サーシャの前の世界の話が興味深かったからぁ」なんて言ってるけど、多分単純に忘れていただけだ。
まあ、抜けているけれども、千年近く生きているだけあって知識は多いのだけど。
(まず、変異分化ってのはねぇ、種族が変わることなんだぁ。姿とかぁできることとかぁ、強さとかが変わるんだよぉ。ボクも、最初は楢だったしねぇ。でぇ、スキルっていうのはぁ……ボクもよくわかんなぁい)
(……どういうこと?)
(いやぁ、ボクもねぇ、スキルは持ってるよぉ。その中には努力の結果手に入れたのもあればぁ、ひょんなことから手に入れたのもぉある。でも、使えるんだよぉ。スキルがいったいどういう仕組みなのかもぉ、まぁったくわからなくてもねぇ。不思議だよねぇ)
(簡単に言えば、できることってこと?)
(うーん、それもちょぉっと違うような気がするんだよねぇ。使おうと思わないと動かないものもあればぁ、勝手にぃ、それも気絶している時でさえ発動するものもぉある。本当に、よくわかんないんだよぉ。……あ、そうそう、大霊樹様が情報を管理しているって話はぁ、前にしたと思うけどぉ、自分や、自分の持ってるスキルの情報は≪自己閲覧≫っていうスキルで見られるよぉ。このスキル自体は大霊樹様が情報を持ってる子ならだれでも使えるからねぇ)
(その話は名前つけた直後くらいに言ってくださいよ……)
(だってぇボクはこのスキル十年に一回使うか使わないかだもぉん。忘れちゃってたんだよぉ)
そりゃ、自分の情報なんて頻繁に見る必要もないだろうけどねぇ。
そう不満を思い浮かべつつ、私は≪自己閲覧≫を使った。
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個体名:サーシャ・タカトオ・ナガノ・ニホン
種 :魔導埃黴
スキル:ユニーク≪水平獲得≫
ユニーク≪中心教義≫
≪念話≫AT
≪自己閲覧≫A
≪基礎魔力認知≫SA
≪基礎魔力操作≫AT
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不思議な、文字のようなものが目前に浮かぶ。
読めない。だけれども、理解はできる。奇妙な感覚だ。
それにしても、魔導埃黴かぁ……。ただのカビどころかホコリカビって、なんかすごく馬鹿にされた気分だ。今さらだけど。
で、このスキルの後ろについてるSATは……何なんだろう。
(ねぇミーシャ。このユニークって言うのは何?)
(ユニークスキルっていうのはぁ、強いかどうかはともかくぅ、スキルを手に入れた時にぃ、この世界で他にそのスキルを持っている人がいなかったスキルだねぇ。直接聞いたわけじゃないけどぉ、多分大霊樹様の管理の都合か何かだから気にしなくていいよぉ。でぇ、その質問が来るってことはぁ、持っているんだねぇ、サーシャ)
(まあ、一応、あるけど……)
(じゃあ一つ言っておくとぉ、≪自己閲覧≫で見られるのってぇ、大霊樹様が知ってる情報だけなんだよぉ。だからぁ、ユニークスキルはどんなスキルかはわからないこともぉある。大霊樹様だってぇ何でも知ってるわけじゃぁないからねぇ)




