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Ⅱ-9:兜割

5000PV/700UAありがとうございます!

ロクに宣伝もできていない、何番煎じかもわからぬ拙い小説ですが、これだけの方に見ていただけて光栄です!

また、よろしければ評価、ブックマーク、感想等いただけると励みになります。

それでは、これからもこの小説をよろしくお願いします!

 さらにその翌日。私とユゥは研究所を出て、オウォッキャンの西門に向かった。ユゥはいつもの足首まであるメイド服ではなく、動きやすさを考慮したのだろう、膝丈程度までのものを着て、身の丈ほどもある長いレイピアを背負っていた。

 門に行けば、トシフとローレンスはすでに待っていた。なにやら私を見てきょとんとしている二人に、ユゥがなにやら便箋を渡せば、二人はそれに目を通した。失礼な。

 便箋から目を上げた二人とあいさつを交わす。今日は解放の丘(ヒルオブリバティ)という遺跡に行くらしい。門をくぐろうとして、何かを思い出したかのようにトシフが私に話しかけた。


「あーそうだ、サーシャ。とりあえずだ、お前も人族になったということは、だ。武器も使えるようになったろう? 俺にはよくわからんが、ローレンスはこれがお前に合うと言っている」

「合うと言いますか、恐らくスペクトルが合うと思います」

「スペクトル?」

「えぇ、魔導具(アーティファクト)というのは個人の魔力の属性スペクトルと適合するものほど真の力を引き出しやすいのです。サーシャさんは水のが極めて高く、次いで土。これに合うのは、貴女と同じカチュアの森で見つけた物の中ではこの兜割だけでした」


 ローレンスからその兜割を受け取る。長さ二フト半ほどの金属部分に一フト程の柄のついたその兜割は、ずしりと重く、少なくとも百オモスはありそうだ。

 使い方はよくわからないけど、この重さだと剣道の竹刀と同じように扱っても十分な威力が出るだろう。幸いにも、私は剣道については学校の体育の授業でやったことが無いわけではないので、全くの初心者という訳ではない。


「ありがそう。結構、しっふりそ来た」

「ならよかった。正直あの毒を使われるのはこっちとしても冷や汗ものだったんだ」


 あぁ、そういえばトシフはすっごくそれを気にしてたっけ。あの時は剣を持てなかったけど、そのおかげで{渦水流(アクアヴォーテクス)}を覚えられたんだよね。でも、その後も結局キングモービィに毒をながしてたし、未だに気にするのも分かる。


「そういえば、今まではテタニ様がいらっしゃいましたから、万が一の際には解毒が可能でしたのですね」

「いや、サーシャさんの毒についてはテタニさんも匙を投げていましたよ。それほど大変な毒なんです」

「そもそも魔導埃黴(マドウホコリカビ)は毒を出さないはずですが……」


 そうなの? いや、でも確かに割とどこでもいるらしい魔物がサンプルすら少なくて研究の進んでいない毒を持っているのはおかしい気はする。でも、確かに私の中に設計図はあったんだ。

 そういえば、昔どっかのネット記事で、二十センチくらいのしっぽを持つ男の子の記事を読んだ記憶がある。遺伝子には、絶対に現れないだけで、はるか昔の、ご先祖様の設計図が残っているのだとか。

 この毒も、きっとそういうものを≪中心教義(セントラルドグマ)≫で強引に掘り起こしたのだろう。だったら、骨の設計図も私の中にあるのかな? とも一瞬思ったが、冷静に考えて脊椎動物どころか動物ですらない私に脊椎動物の遺伝子なんて混ざっているわけがない。調べるだけ無駄だろう。カビの体で上方向に巨大化するのは難しそうだ。


「まぁ、それを言い出すとテタニみたいに、人間だって毒を出さないのに毒使いがいるんだ。どうせサーシャがそういうスキルを持っているだけだろうし気にしてもしょうがない。こんなんで時間喰うのもなんだし、そろそろ行こうか」


 西門を抜け、辻馬車に二時間ほど揺られる。トシフは近場と言っていたが、この距離は果たして近場と言っていいのだろうか?

 辻馬車の人も普通に対応してくれたし、そんなに遠くはないという認識なのだろうか? よくよく聞いてみれば、オウォッキャン自体がいくつかの町の総称で、私がオウォッキャンだと認識していた範囲は西地区に過ぎないものなのだとか。それで、オウォッキャンの端から端までを最短経路で走っても、辻馬車で五時間かかるらしい。そんなに広かったのねこの町……。こりゃ、近場という感覚も麻痺するわ。

 そして、もう一つ。ヒムーニャ遺跡群、というのも、相当広いエリアを指していることがわかった。ヒムーニャ、というのはヒムーニャ遺跡群の中央に位置する町の名前に過ぎず、遺跡群自体は南北に七十五ノルル(約二百七十五キロ)もある帯状の地帯を指すらしい。そして、我々が向かっている解放の丘(ヒルオブリバティ)は、その最南端に位置する遺跡なのだとか。

 そんな説明を聞いているうちに、辻馬車は解放の丘(ヒルオブリバティ)の東の入り口に到着した。

★Tips:速度と長距離の長さの単位

人間の歩く速さを1ノルト、1ノルトで1時間歩いた長さを1ノルルと言い、1ノルル=12000フトである。


ちなみに、一般的な馬車の平均的な速度は3.5ノルト程度であり、場合によっては人間の走る速度と大して差はない。駅馬車となるともう少し速く、5ノルトに達するものもある。馬車軌道はさらにもう少しだけ速いが、それでも6ノルト程度である。

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