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Ⅰ-41:人形

「なるほどねぇ、サーシャさんを『内臓』にするっすか」

「そういうことでございます」


 いや、何を言っているのか全く分かんないんだけど。


「あっと、じゃああーしらがどーゆー研究をしてっかっていうとこから話した方がいいっすかね」


 話を聞けば、もともとは二人とも魔法陣を専攻していたのだという。

 キイヨはそこから派生して、魔道具(マジックアイテム)、そして魔導具(アーティファクト)へと研究の対象を広げていった。

 ではユゥも同じルートかと言えば、全くそうではない。

 ユゥの専攻は、魔術人形(オートマタ)という、魔道具(マジックアイテム)の一種。

 どう違うのかというのは言葉にはしにくいが、前の世界で言えば、機械工学とロボット工学みたいな関係だろう。

 そして、発掘された魔導具(アーティファクト)の中にあった人形に惹かれ、そこからキイヨと同じ道へ進んだのだという。


「現在の魔術人形(オートマタ)……いや、魔道具(マジックアイテム)全般に言えることですが、それらは予め指定された動きしか取ることができないのです。しかし、魔導具(アーティファクト)の一部には、完全に自律行動をすることができるものがあるのです。この不肖ユゥ・バンチャオ・タイパック・ヂォンフゥアはそれを作成することを課題とさせていただいております」


 なるほどね。でも、それを聞いてもどこが内臓なのか全く分からないのだけれど……。


「実はっすね、大古の魔導具(アーティファクト)に近しい存在が既にいるんすよ。

 その存在を考えっと、自律行動をする魔導具(アーティファクト)は一種の精霊を宿らせているのでは、ってゆー仮説があるっす」

「妾共は、この仮説を船霊仮説と呼称しております。サーシャ様にはこの精霊となっていただきたいのです」

(私はこの分野あんまり詳しくないから確認しておきたいんだけど、私は精霊じゃないよ?)

「それは存じておりますが、不定形という面では精霊が肉体を形成している最中の状態に近いのです」


 詳しく話を聞けば、その人形自体はすでに結構な数制作しているのだが、同調させた精霊を定着させるプロセスがどうもうまくいかないのだとか。

 そこで、私に実際に人形に入ってもらって問題点を洗い出してほしい、その代わりに私はその人形を貰ってもよい、ということらしい。うん、なんとなく話は読めてきた。


(できるかどうかはわからないけど、協力するよ)

「ありがとうございます。では、工房まで案内しますね」

「じゃ、あーしゃ仮眠取っからよろしくっす」

「……おやすみなさいませ」


 ユゥに連れられて、地下にある彼女の工房までやってきた。

 工房の壁には、ずらーっと人間の足のようなものが並んでいる。研究の成果を流用して造った義足だと言っているが、普通に足にしか見えないので背筋が寒くなる(ような気がした)。

 そして工房の奥、ローレンスの身の丈ほどもある一つのカプセルのようなものの前でユゥは立ち止まった。この中に、件の人形が入っているのだという。

 ここまで大げさなのは、人形に宿らせる精霊以外の魔力の影響を極力なくすためらしい。そうしないと、精霊に人形が同調すらしてくれないのだとか。同様の理由で、ある存在に一度人形を同調させてしまうと、他の存在には同じ人形は同調しないこともわかっているとのこと。

 ああ、だからその人形を私にくれるなんていう太っ腹な事言ってたのか。


「それではサーシャ様。今から妾の人形の中に入っていただきます。

 本来は精霊核というものを人形に埋め込み、それを中心に精霊を呼び出すのですが、今回はサーシャ様を直接注入した後人形内部を特殊な魔力伝導流体(エーテル)で満たして同調の術式を発動させます。

 その際に眠気を催すかと思われますが、先ほどご覧いただいた義足の同調時にも報告されている正常なものですので、体を委ねていただいて構いません。

 では、心の準備はよろしいでしょうか?」


 肯定の旨をユゥに伝えると、カプセルの上の方の小さな窓からカプセル内部に入れられる。

 窓を閉められ、視界が完全に閉ざされる。視点をカプセル外部に持っていこうとしたが、どうも上手に行かない。

 なるほど、このカプセルは魔力を通さない素材でできているようだ。魔力の流れも、自分の外部にはまるで存在していない。

 そして、暫くすると床のハッチが開く。体の力を抜いて、その中へと流れ込むように入っていく。しばらく進むと、広い空間に出た。ここが、人形の中だろうか?

 広い空間の先に体を伸ばせば、網目状の長短広狭な管が迷路のように伸びていた。さらに体を伸ばし、その迷路の隅々まで体を巡らせる。全体的には、人体の形をしていた。

 そして、さっき通ってきた管だから、とても心地よい、懐かしい感触のものが流れ込んでくる。どこかで、触れたことのあるような……。

 あ、思い出した。この世界に来てすぐのころに出会った不可思議流体だ。あれ、魔力伝導流体(エーテル)だったんだね……。

 そしてその魔力伝導流体(エーテル)の流れが止まると、間もなく体がポカポカしてくる。

 体がどんどん広がるような感触と共に、だんだんと心が安らぎ、眠気に襲われる。

 これがユゥの言っていた眠気なのだろう。私はその心地よい眠気に身を任せて、意識を手放した。

 どこかで、大霊樹(アカシック・セカンド)様の声が聞こえた気がした。

明日の投稿ですが、ちょうど年の境目で章終わりを迎えられそうなため、本編は正午に投稿ののち、キャラクター設定を16時に投稿いたします。

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