Ⅰ-14:流れと波と
さて、三人とも昼前にはそれぞれの調べ事は終わったようで、昼食の時間である。
本当になぜか発達している嗅覚が憎たらしい。
せめてもの抵抗として、視覚をシャットアウトして、今までの情報を整理する。
いつからかはわからないが、私は文字を読むことができた。でも、どうしてだろうか?
気になるのはあの意味不明なユニークスキル、≪水平獲得≫。
その説明は確かこうだ。
『・体外の情報が体内に入ってきたとき、それを自らの概念に転写できる。』
これ、実はやってることただの翻訳なんじゃないだろうか?
文字情報。それは、光の情報として外から私の中に入ってきた情報だ。
そしてその文字列が、概念――つまり、その文字列の持つ意味――に変換されて私の概念に転写される。
そうすると、私の中ではそれは意味として処理される。つまり、内容がわかるのだ。
でも、なんでこんなめんどくさい書き方になっているんだ。
でも、一つ不思議な点がある。
それは最初に≪水平獲得≫の情報を見た時、そこにはNO DATAと記されていた点だ。
一回使って詳細がわかった≪中心教義≫とちがって、こっちのスキルは使った記憶がないのである。
これだけならば、私より後に≪水平獲得≫を入手した人がたまたまいて、その人が先に使うことができた、と説明することができる。
でも、それでは使った記憶の無い≪水平獲得≫が効果を発動している理由にはならない。謎だ。
起動と誘発の違いだろうか?
分からない。とりあえず、再び≪自己閲覧≫を眺める。
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個体名:サーシャ・タカトオ・ナガノ・ニホン
種 :魔導埃黴
スキル:ユニーク≪水平獲得≫T
ユニーク≪中心教義≫A
≪念話≫AT
≪自己閲覧≫A
≪基礎魔力認知≫SA
≪基礎魔力操作≫AT
≪水属性魔術≫SAT
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……なんか一個変なの増えてるな? 確認しよう。
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スキル:≪水属性魔術≫
常在
・周囲の波と流れを感知できる。
起動
・習得した属性が水である魔法を唱えずに発動する。
誘発
・属性が水である魔法を唱えたとき、マナを消費してそれを習得する。
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いつの間にこんなの手に入れたんだ? まあいいや。
今は≪基礎魔力認知≫で魔力の流れを感知しているけれども、≪水属性魔法≫だとどうなるんだ?
それに、確か視覚情報も、光の波を一度魔力に変換して認識している。でも、これなら直接認識できるのではないだろうか?
やってみた。
……うん、これは、酔う。
いや、魔力の流れに関してはこっちの方が便利――ただし、体内は≪基礎魔力認知≫じゃないとダメ――なんだけど、問題は光の波。
何せ空マナを並べなくとも視覚情報が入るるのはいいんだけど、その視点が自分の周囲の空間全てから三百六十度見えるのだ。
もちろん、三人称視点から自分の姿も見える。美しい正四面体だ。
さらに、直接光の波と流れが認識できてしまうので衝立も何も関係なく向こう側が見える。
一種の透視スキルとしても使えるだろうけど、非常に気持ちが悪いというか、情報量が多くて酔う。
そして……、今三人が昼食をとっていることを忘れていたのがまずかった。広い視点で、店中においしそうな食べ物がいっぱい見える。完全に自滅だ。
視覚に関しては、今まで通りの方法を使おう。
あと、波と言えばもう一つ。音波だ。そう、音も聞こえるようになった。けれど。
ジュウウウゥゥゥゥゥ~~ッ!
ええ、一番最初に聞こえてきたのは肉の焼ける音でしたとも。ちくしょう、ちくしょう!
目の前のおいしそうなものを食べれず、その辺の土に潜って微生物モグモグしてる私への当てつけか!
いや、うん。自滅だよ、完全に自滅だけどさあ……。
結局、三人の食事が終わるまでは、どうあがいても切れない嗅覚以外の感覚を、再びすべて遮断したのだった。




