上には上がいる
テーブルの上には、さまざまな料理が並んでいた。
どれも高級そうで、チラリと見ただけでも、口の中が涎であふれる。
「わざわざ、ルル様は食べるのを我慢して、あんたを待っていてあげたんだからね」
「ああ、ありがとよ」
テーブルの中央には、炎を灯す蝋燭が立っていた。
大広間は、薄暗いが、それがまた食事をするのに、もってこいの雰囲気となっている。
耳を澄ますと、クラシックがかかっていた。
その流麗なメロディーを耳を傾けていると、
タクは晩餐会にでも来ているような、錯覚すら抱いた。
「さあ、食べましょ。何から食べようかしら、迷ってしまうわ」
ルルーシカは取り皿を手に、
テーブルに所狭しと並んだ料理を物色している。
「よし、決めた。めんどくさいから、近くにあるケーキから、まずは食べるわ」
おいおい、いきなりデザートからかよ。
ルルーシカは、ホールケーキをまるまる取り皿にとり、
スプーンでバクバクと食べはじめた。
よほど、お腹が減っていたのか、みるみるケーキは減ってゆく。
山盛イチゴのショートケーキだった。
「俺は、何を食べようかな」
タクは、ルルーシカのように量は食べれないので、
取り皿に、銀食器に盛られた料理を少量ずつ取った。
まずは、サラダを口に運ぶ。
「うっまい!!」
瑞々しいレタスとトマト、シャキシャキっとした玉ねぎのスライス。
そこに、粉チーズ、ベーコン、クルトン、さらにはシーザードレッシングがかかっており、
隠し味は、胡椒。
普通の胡椒とは違う。
こう、ピリッピリッと舌を刺激するだけでなく、
鼻をスッと通る森の香りがした。
次は、ステーキを食べた。
ナイフで薄くカットし、フォークで口へと運ぶ。
「ぐごっ!!」
柔らかい。
口の中に入れた瞬間に、肉がとけた。
肉そのものの繊維は繊細で、
脂に味がついている。
かといって、しつこくもなく、
肉から出た脂と絡まるステーキソースが実にさわやかで、食欲をほどこす。
タクは、ステーキの味が口の中から消える前に、
クロワッサンをかじった。
サクサクとした歯ごたえだけでなく、
今しがた焼いたばかりであるかのような、
パンの芳醇な香りに、
タクは、ほっと溜息をこぼす。
完璧に負けた。
タクは、自分がルルーシカのためにつくった料理が、
どれほどしょぼいものだったのかと思い知らされた。
「まあまあ、おいしいわよね。でも、人形、勘違いしちゃダメよ。世の中には上には上がいるの。私の料理はもっとおいしいんだから」
んな、わけあるか!!と、タクは心の中で突っ込んだ。
ルルーシカはパスタを食べていた。
取り皿には、イタリア人もびっくりするほどの山盛のパスタ。
ゆうに10人前はあるだろう。
ちなみに、明太子クリームパスタだった。
ルルーシカの、あまりの食欲を見ていると、
タクは先ほどまで言いたかったことが、
なんだかちっぽけなもののように思えてきた。
「大丈夫よ。心配はいらないわ」
ふいに、レーラがタクに語りかける。
レーラは、コーンスープをスプーンですくっていた。
突然、なにを言っているんだ?
俺、なにか口に出したか?
タクは、あまりに料理がおいしく、
普段の倍は食べてしまった。
「あ~、おいしかった。やっぱり、魔法をたくさん使うと、そこそこ食べてしまうわね。なんか、私、ちょっと眠たくなっちゃったみたい」
ルルーシカは大きく欠伸をする。
「ねえ、人形、私、もう眠たいみたい。だから、寝室に連れて行ってちょうだい」
「寝室はないわ」
「寝室がない?なら、ベッドに連れて行ってちょうだい」
「ベッドもないの」
「ベッドもない?そんなことあるの?」
「ええ、あるのよ。ちなみに、寝るところはどこにもないの」
「なら、あんたはどこで寝ているのよ」
「私、寝ないの」
「・・・嘘よね」
「ええ、嘘よ」
「ふざけんじゃないわよ!!」
といった、ルルーシカとレーラのよくわからないやり取りの後、
レーラがルルーシカを寝室へと連れて行った。




