石が沢山並んでいる場所
亀裂から転がり出て、まず目に飛び込んできたのは、墓石だった。
転がり出た場所はお墓。
すでに、陽の光は落ち、闇が周囲を包んでいた。
俺、いったい何時間、閉じ込められていたんだ?
「大丈夫?」
等間隔に並ぶ墓石の間にたつレーラがタクを見下ろしている。
両手を上げ、
その両手の先には、青白い渦が広がっていた。
ルルーシカがその渦から、這い出てきたところを見ると、
どうやら、そこから出て来たらしい。
コンクリートの部屋とつながっている渦。
そして、
タクは、とある教室の絵画から、コンクリートの部屋に引き込まれた。
それなのに、何故、お墓に出たのか、タクにはよくわからなかった。
レーラの両手の先で、渦巻いていた渦が小さくなってゆき、
やがて、消えた。
「もう、あんたって、本当にどんくさいんだから」
ルルーシカはスカートをパンパンとはらう。
「悪かったよ」
「悪いですんだら、魔法警察はいらないのよ。
・・・でも、まあ、無事でよかったわよ。あんたがいなくなったら、あたしの部屋は誰がそうじするっていうのよ」
なんだよ、心配してくれたかと思ったら、
掃除をする奴がいなくなったら、どうしようかという自分の心配かよ。
「にしてもよ、私が呼んだ時、どうしてすぐに来なかったのよ。次元を開けるのって結構大変なのよ。人形なんて、今はすずしげな顔をしているけど、さっきまで息を荒げ、ルル様助けてって言っていたんだから」
レーラはルルーシカの言葉に何も言わなかった。
目は、そんなこと言っていないわと言っているように思えた。
「悪い・・・すぐに行きたかったけどさ・・・」
「なら、すぐに来なさいよ。そういたところが生意気というか、奴隷らしくないというか」
「いやいや無理だっただろ。俺の両足は幽霊みたいなぼんやりと揺らめくモノにつかまれていたんだし。それでも、なんとかして早く来いという、お前の感性を俺は疑うわ」
「はあ~?何を言ってんのよ。バッカみたい。長い時間一人で閉じ込められていたから、精神がとち狂ったのかしら」
「だから、俺の両足は幻影みたいなモノにつかまられていただろ?」
「はあ?さっきから何を言っているのよ。幽霊に、幻影?幻覚でも見ていたんでしょ。
だって、
あそこにはあんた一人しかいなかったじゃない」
「何を言ってるんだよ。他にも、女の子がいただろ。6歳くらいの女の子が」
「はあ?女の子?いくら、あんたがロリコンだからって、幻覚で見たモノを私に見ただろっと言われても、いくらルル様が寛容な女王様でもさすがに『ええ、見たわよ』なんて嘘はつけないわよ」
どういうことなんだ?
ルルには見えていなかったのか?
にしても、幻影だけでなく、ベルベットも見えなかったというのか?
「でも、まあ、いいわよ。あんたが、すごっく寂しかったっていうのはよくわかったから」
「だから、違うって」
「もういいわよ。もう、ルル様がいるから寂しくないわよ」
「なんだよ、それ」
はあ、とため息をつきながら、タクはレーラをチラリと見た。
レーラは木の幹に背をあずけ、空を見つめていた。
空に輝く、青白い三日月を見ているのだろう。
「で、これからどうしよっか?」
「ん?これからどうするって?もう、夜なんだから、帰ればいいんじゃないのか」
タクの言葉に、ルルーシカは、
大きなため息を一つつき、
「はあ?」と言った。




