ううううううう、ああああああああ
タクとナイフが重なる。
ナイフの先端は、タクの胸に接触した――
――その刹那、眩しいほどの光が瞬く。
タクに接触したナイフに、ピキピキピキと亀裂が入り、
パリン!!
ガラスが割れるような音を響かせ、
ナイフは、粉々に砕け散った。
「がああああああああああああああ!!」
ベルベットは絶叫をあげ、向かいの壁へと吹き飛ばされた。
ドスッ、といった重々しい音が木霊した。
どういうことなんだ?
なんで、助かったんだ?
胸に触れると、痛みはなかった。
しっかりと、鼓動を刻んでいる。
大丈夫だ。
ははははは。
「コラ!! 早く来なさいよ。このマヌケ!!」
ルルーシカの叫び声が再び聞こえて来た。
天井に開いた亀裂から顔を出していたルルーシカは、部屋の回転のため、
今では、床から顔を出しているかのように見えた。
「あ、ああ、今行く」
タクは立ち上がる。
両足をつかんでいた男女の幻影は、
ベルベットが吹き飛ばされた時に、どうやら消えたようだった。
「悪かったな」
「何度も呼んでいたのに、遅すぎるわよ。舐めているのかしら」
「ははは」
タクは苦笑いをこぼしながらベルベットを見る。
頭からは血を流し、悲しげな表情をして、
「お兄ちゃん、行かないで。私を置いてかないで・・・」
「・・・ごめん」
タクはルル―シカの手を強く握った。
すると、
ルルーシカの馬鹿力のためか、
魔法による吸引力のためかはわからないが、
抗うことすらできず、タクは亀裂の中に吸い込まれていった。
吸い込まれる瞬間、
ベルベットの「うううううううう、あああああああああ!!!」という泣き声が、
タクには聞こえた―――ような気がした。




