ずっと、一緒にいよ
「ルル?」
「くそ、邪魔が入った!!絶対に逃がさないんだから!!」
天井の亀裂から顔を出しているルルーシカに、
一瞬気をとられたタクは、足を何かにつかまれた。
「なっ!!」
地面を這いずる男の幻影がタクの足をつかんでいた。
男は絶望に歪んだ顔をしており、目からは涙が流れていた。
「ほ~らつかんだよ、お兄ちゃん。これで、この子たちと同じように、私とず~~~と一緒にいられるね」
ベルベット背後にうっすらと6体の幻影が現れた。
その誰もが、哀しみに歪んだ表情をしていた。
タクが殴った女の幻影が、タクのもう片方の足をつかむ。
「くそぉぉ~!!」
「いいよ、お兄ちゃん。その腹の底から出した叫び声、最高!!」
ベルベットの手には、青く輝くナイフが握られていた。
「ねへへへへ、このナイフでね、お兄ちゃんの生きた肉体から魂を切り取るの。
お兄ちゃんを私だけのモノにするの。
お兄ちゃん、薄汚れた部分を捨てることができるんだよ。自由になれるんだよ。
そして、死ぬことができるんだよ」
ベルベッドはナイフのエッジをぺろりと舐めた。
「タク、何、ぼさっと生まれたばかりの仔馬みたいな格好をしているの!?早く来なさいよ」
タクは動こうにも、足をつかまれ、動くことができなかった。
ちくしょう・・・どうすれば・・・。
「ほ~ら、安心して。痛いのは最初だけなんだから。最初の痛みを越えちゃえば、お兄ちゃんはこの子たちと同じように、私と一緒になれるんだよ」
ベルベットはタクの目の前まで来て、
両手で握ったナイフを、大きく振りかぶった。
「やめろ。やめてくれ・・・ベルベット」
「嫌だ!!絶対に嫌だ!!
だって、だって、みんな裏切るもん。
生きている人間はみんな、ベルベットを裏切るもん!!」
「俺は裏切らない。俺は、ずっとそばにいてあげるから・・・」
「そんなことを言って、ベルベットを騙そうとする!!
ベルベットは信じないよ。ずっと、裏切られてきたんだ。ずっと、ずっと。
ほら、ゲイルお兄ちゃんも言ってるよ。知ってるよ。そんなことできやしないって。ベルベットの心を惑わし、自分が救われるためについた嘘だって・・・」
タクはベルベットの言葉に反論しようとした。
しかし、なぜか声が出なかった。
胸の奥が痺れ、息苦しく、
何度も、声を出そうとするも、
喉の奥に何かがつっかえて、言葉が出てこない。
「人はね、自分のことばかり考えているの。自分が一番大切なの。
だから!!肉体を殺すの!!そうすれば自分勝手でいる必要なんてなくなるでしょ。
だって、魂だけになれば、自分が求める夢だか、野望だと、愛だとか、そんなちっぽけなものに振る舞わされなくなる。
ああ、お兄ちゃん、逃げないで、怖がらないで、悲しまないで、痛くしないから。痛みなんて、ブスリと刺されたら、す~ぐに忘れるの。ほ~ら、もうすぐ、もうすぐで、ずっと、ず~と一緒にいられるんだよ。えへへへへ」
ベルベッドの笑い声が、木霊した。
そして、
ある瞬間、
ベルベットの笑い声は、
ふっと、
消え去り、
「お兄ちゃんを、ベルベットのモノにするの」
ベルベットは顔が大きく歪め、
絶叫を上げた。
「ぐりゃぁぁぁぁぁ~!!!」
ナイフがタクの胸めがけて走ってくる。
くそぉぉぉぉ~~~~!!!
タクは心の中で絶叫をあげた。




