ブロック塀の向こう側
ルル―シカはそのまま壁に突進した。
タクは壁にぶつかる瞬間、目をつぶった。
しかし、ぶつかったはずなのに――痛みはない。
「あれ?」
タクはゆっくりと目を開けると、広場のような場所に立っていた。
背後には、先ほど突っ込んだブロック塀が不自然に一枚だけ立っている。
正面には、レンガ道が走っており、その道沿いには、一定間隔で並ぶ街灯が、
黄色い光をレンガ道へと落としていた。
ここはどこかで・・・あ!
「ここってお前の部屋の前にあった道だよな」
「そうよ」
「へえ~やっぱり」
林立する木の間から、ドアが顔を覗かしている。
それも一枚や二枚ではない、何十枚も。
「あのドアって、誰かの部屋に繋がっているのか?」
「ええ、そうよ。当然でしょ」
ドアの向こう側には何もないけど、
ドアを開けたら、部屋に繋がっているってすんぽうか。
なんか、ネズミが嫌いなロボットが、
パンツみたいなポケットから出していた、
なんとかドアみたいだな、とタクは思った。
タクとルルーシカがレンガ道を歩いていると、ある一つのドアが開いた。
パジャマ姿をしたぼさぼさ頭の女が顔を出した。
「こんばんは」
ルルーシカが挨拶をすると、女はコクリと頭だけ下げる。
人見知りなのか、もともとの性格なのか、かなり不愛想だった。
タクは女が出てきたドアの向こう側を覗くと、玄関が見えた。
本当に、部屋に繋がっているんだ。
「・・・なあ、あの人、知り合いなのか?」
「う~ん、たぶん先輩だと思うけど・・・」
「たぶんって、いい加減だな、おい」
「だって、学年が違えば、ほとんど交流がないもの。クラスが違ってもそうよ」
「そんなものなのか?」
「う~ん、私はヘッドリッジ魔法学園しか知らないから、何とも言えないけど、言われてみるとちょっとおかしいかもしれないわね。でもね、有名な先輩は知っているわよ。あの人は、有名ではないから知らないだけ。どう見ても有名じゃない感じでしょ」
まあ、なんか、負のオーラが漂っていたからな~。
でも、そういった人って、とんでもない才能を持っていたりするんじゃあ。
例えば、ゲームの才能とか、文章を書く才能だとか。
ルル―シカは十字の立札を越えると、右に曲がった。
朝見かけた立て札だった。
タクは立札を見ると、『ヘッドリッジ魔法学園第二女子寮』と書いてあった。
おいおいおい、ここって女子寮なのかよ。
俺、男なんだけど。問題ないのかよ。
「さあ、なに、ボ~と突っ立ているのよ。早く入りなさいよ」
ルル―シカは自分の部屋のドアを開け、中から顔を出していた。
「お、おお、悪い、悪い」
タクはルルーシカの部屋に足早に入っていった。




