若くてかわいい子がいるよ
田んぼの間を走る一本道を抜けると商店街に出た。
けばけばしい街灯に照らされた商店街はにぎわっていた。
食べ物のおいしそうな香りに、タクノお腹が鳴る。
酒の魅惑的な香りに、ふと足がそちらに向かいそうになる。
時代遅れの音楽が流れ、通りを歩く人々の、
一日の終わりを祝福するざわつきに、どこか懐かしささえ感じる。
「お兄さんどう?若くてかわいい子がいるよ」
タクはエプロン姿のおばちゃんに声をかけられた。
若い子か・・・。まあ、たまにはいいかな、
とふと思い、足がそちらに向かいそうになる。
「ちょっと、あんた、何を考えているのよ。まだ早いでしょうが」
「なんで?」
「何でって、あんた、自分が何歳かわかっているの?」
俺の年齢?
「俺、三十四歳だけど、何か問題がある?」
ゴツン。
ルルーシカの鉄拳がタクの頭に降り落とされた。
「いってぇ~~!」
「ふざけないでよ。あんた、まだ私と同じ16歳でしょうが」
「あん、俺って16歳なんだ。初めて知ったよ。ははははは」
「ふんだ。何をふざけたこと言っているのよ。バカらし」
ルル―シカは顔は赤らめ、そっぽを向いた。
何を怒ってるんだよ・・・。
冗談にきまっているじゃん。
お前だって、キスしよっなんて言って、
俺の純情をもてあそんだから、おあいこだ。
ルルーシカとタクは、居酒屋の前で左に折れ、小道に入った。
道は細く、人一人がようやく通れるほど。
道脇には、居酒屋のゴミが置かれ、掃除がされていないのか、
正直、汚い。
ど、どこに連れて行くんだ?
こんな細い道を通って・・・。
まさか、まさか、さっきの冗談を根に持って、
俺を殺すつもりなんじゃあ。
ほどなく突き進んだところで、
ブロック塀に突き当たった。
おいおい、こんなひとけのないところで、何をするつもりなんだ?
まじで、まじで、俺を殺すつもりなのか?
ルル―シカは壁が近づいてきても、いっこうに立ち止まる気配はない。
「おい、壁があるって!」
タクの叫び声が聞こえないのかルルーシカは歩を緩めることなく突き進む。
その時、ルルーシカの手がタクの手を握りしめた。
「え?」
壁が近づいてくる。
すぐ、目と鼻の先まで。
まさか、俺を道ずれにするつもりかよ。
壁に衝突は、いやだああああああああ。
「ああああああああああああああああああ」
タクの絶叫が小道に響き渡った。




