表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

32/133

あんなことや、こんなこと

「え?」 


 椅子に座った女子生徒は腕と脚を組み、タクを睨んでいた。

 不揃いの前髪から覗く、青い双眸はタクの顔をじっと見つめている。

 カールした横髪が触れる赤い唇が、キッと真一文字に結ばれていた。


「な、なにか?」


 タクはビクビクしながら訊いた。明らかに不機嫌な顔をしていたからだ。

 

「もう、タク、私、待っていたんだからね。何で昨日ほったらかしにしたのよ」


 その女子生徒は怒りを滲ました表情から突如、悲しげな顔をする。

 目尻には涙が溜まっていた。

 

 タクは突然のことにどうしたらよいかわからず、

 「ごめん」と反射的に謝った。


「・・・うん・・・いいよ」女子生徒は涙を指先で拭う。「でも、タクにとって、私ってその程度だったのね。すごくショックだったんだから・・・三時間も待ったんだよ」


 タクは何の約束をしたのか、覚えていなかった。


「ごめん・・・俺、記憶がなくって、どんな約束したか覚えてないんだ」


 タクはどう答えたらいいかわからず素直に答えた。

 女子生徒は、一瞬、驚いたかのような表情をしたかと思うと、次の瞬間には、悲しげな表情をし、


「タク、私のこと・・・私という彼女のことを忘れちゃったというの?」

「か、彼女?君が、俺の?」

「そう」


 女子生徒はコクリと頷く。


「お、俺たち・・・付き合っているの?」

「うん、もう、ずいぶん長いよ。・・・あんなことやこんなことも・・・したのに・・・タクにとってはその程度のものだったの?」


 あんなことや・・・こんなことて・・・。

 いったい、どんなこと?


 タクはあんなことやこんあことを思い出そうと試みたが、昨日より先の記憶がどうしても出てこなかった。

 すごく、あんなことやこんなことを思い出したいと思った。


 何で、思い出せないんだよ。

 すごく、大事なことだろ!!

 この頭、この頭、バカ、バカ、バカ!!


「ふふふ、タクって、意外とエッチだったんだね」


 女子生徒はタクの耳元で囁く。

 女子生徒の息が、タクの耳をくすぐった。


「わ、わ、わ、わ!!」


 タクは女子生徒から離れながら叫んだ。

 その時――救いの主と言わんばかりに、奴の声が聞こえて来た。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ