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かなえの過去

 視界に広がった光景は、教室だった。

 ルルとかなえの二人がいる。

 夕暮れ時の赤く染まった教室で、二人は楽しそうに笑っている。


「ねえ、かなえ、わたしたち、ずっと友達だよ」

「うん、ルル」

「かなえ、約束だからね」


 二人は指切りをした。





 場面が変わる。

 教室に、ルルはいない。かなえ一人。

 窓の外は、いつの間にか、闇に染まっていた。

 かなえは机に座り、虚空を見つめていた。


「ルル・・・ごめんなさい。私、どうしても、タク君が好きなの。

 好きで、好きで、たまらないの」





 再び、場面が変わる。

 深い深い森の奥だった。

 細かい雨がしとしとと降り注いでいた。


 ルルの泣き声が聞こえる。


「嫌だ、タク!! 死なないで、私を一人にしないで!!」


 石の上で横たわっているのは、俺。

 制服が血に汚れている。

 俺は、最後の力をふりしぼるように、ルルの頬に手を伸ばしていた。


「ごめんなさい・・・、私が悪かったの。私が、私が」


 俺はルルに何かを呟き、

 ルルの頬に触れていた手が、

 石の上へと落ちる。


「嫌だ・・・嫌だ・・・いやだああああああああああ」


 かなえの意識が俺に入り込んでくる。


 ルル・・・私、決めたよ。

 タク君のために、そしてルルのために・・・。

 ――――犠牲になる覚悟を。


 かなえはタクのぽっかりひらいたお腹に手を置いた。

 淡い光がかなえを包む。


「あぐっっ」


 かなえは口から血を吐き出した。


「か、かなえ・・・、その魔法は駄目・・・、駄目だよ」


 いいの。

 だって・・・ルルにすごく悪いもの。

 すごく痛いの、心が・・・。

 辛くて、辛くて、しょうがないの。


 だからね、私は犠牲になるんだよ・・・それが一番いいんだよ、きっと。


 かなえの視線に、ルルは何かを感じ取り


「かなえ・・・私は見捨てないから・・・。絶対に絶対に見捨てないから、

 だって、私たち―――――」


 ルルもタクの腹部に手を当てる。

 二人の手が重なる。

 ルルもかなえ同様、淡い光に包まれ、

 黒かった髪が、灰色に変化してゆく。

 

「―――――ずっと友達だもんね・・・」


 ルルは笑顔をこぼした。


 ルル・・・ありがとう。

 ありがとう・・・。

 あり・・・





 場面が変わる。

 そこは、病室。


「ルル・・・その髪・・・」

「うん、染まっちゃったの。でも大丈夫よ。綺麗でしょ」


 ルルは灰色の髪をかき上げる。


「うん・・・綺麗だね」





 場面が変わる。

 病院の診察室。

 同じ病院?

 目の前には医者がいる。


「よくなってきたようだね。あともう少しだよ」

「そう、ですか」

「君の友達はどうしたんだい? 最近、来ていないようだけど・・・」

「ルルのことですか?」

「ああ、彼女のことだよ。彼女に伝えてくれないかな。来ないといけないって・・・」

「ルル、どこか悪いんですか?」

「いや、そうじゃないんだけれど・・・彼女、髪が灰色になってしまっただろう。ああいうのって前例がないことなんだ。万が一っていうのもあるから、彼女に伝えてくれないかな・・・」





 場面が変わる。

 図書室。

 かなり古い趣だ。

 秘密の図書室にも見えるが少し違う。


 かなえが机に顔を伏せ、泣いていた。

 机には、古い本が積み上げられていた。


「ルル・・・あなた、命の大半を犠牲にして・・・、私を・・・私を・・・。ごめんなさい、ごめんなさい・・・ごめんなさい」


 顔を上げると、涙に泣きはらした目にある輝きが飛び込んできた。


「なに? ・・・・・・この図書室には、隠された秘密があると、お父様がおっしゃっていらしたけれど」


 かなえは輝きに触れた。

 壁が消え去り、通路が現れた。

 かなえは通路を歩き、ある部屋にたどり着く。


「なに、この部屋は?」


 一冊の黒表紙の本が、部屋中央に置かれていた。

 かなえは恐る恐る、それを手に取る。


「ぐふふふふ、心傷つき、死を望む、我が愚かな末裔よ!! その入れ物がいらぬのなら、俺様がいただいてやるわ!! 我が復活の礎となるがよい!! うひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ」


 黒い蒸気が噴き出し、黒のローブをまとった骸骨の幻影が、かなえの躰をつかんだ。


「―――――――――!!!」


 黒い蒸気が、かなえの口や耳から入り込む。


「いや、いや、いやだ・・・」


 黒の蒸気がすべて消え去ると、


「あひゃひゃひゃひゃ、すばらしい。目が見える、指が動く、体が自由に動く。なんたる快感。なんたる喜び。

 さあ、まずは、この魔法学園を支配してやるわ!!」


 かなえの顔には歪んだ笑みが浮かんでいた。





 場面は変わる。

 闇一色の空間。

 そこに、かなえは一人、ポツリとしゃがみ込んでいた。


「ルル・・・タク君・・・ごめんなさい・・・私、私・・・ごめんなさい。ごめんなさい・・・ごめんなさい」


 かなえは泣いていた。

 この闇しかない世界で一人、

 泣き続けていた。


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