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深い、深い、森の奥で失ったもの

 ルルーシカは躊躇いながらも、過去に三人にあった出来事を話してくれた。

 禁じられた森の奥深く、

 禁じられた魔法を習得しようとした際、

 仕掛けられていたトラップで、タクが重傷を負い、それを救うために、

 かなえが、自らの体の一部を犠牲にし、救ったことを、言葉につまりながら、

 ルルーシカは、語ってくれた。


「俺は、死にそうになったことがある?」


 雨音が聞こえて来た。

 空には分厚い雲が覆い、影絵のように色を落とす木々の梢が見える。

 目の前には、雨にぬれ、涙を流すルルーシカが、自分に向かって叫んでいる。

 ルルーシカの制服は血で赤く染まっていた。


「あんたの命を救うために、かなえは使ってはいけない、かなえだけが使える《ある魔法》を使ったの」


 その代償が、臓器の一部だったという。

 タクは教科書で読んだあるページを思い出す。

 その魔法は禁じられた魔法だった。確か、その代償も臓器だったはず。


「タク、あなたのお腹は貫かれていた。損傷もひどかった。だから、回復魔法を使ってももうどうしようもなかったの。だから、かなえは・・・あなたを救うために・・・」


 ルルーシカは顔を歪め、言葉を切った。

 唇を噛み、これ以上は話せないと言った感じで、目を伏せた。

 続きを、かなえが話す。


「私は、タク君を救うために私の一部を犠牲にした。私の使った魔法は、私の家系で代々受け継がれていたものだった。決して、使ってはいけないと釘を刺されていた。でも、使ってもいいとされる場合が一つだけあった。それは――――自分にとって、大切な存在を救いたいと思った時」


 かなえの言葉に、ルルーシカは顔を上げた。

 その言葉を、初めて聞いたらしく、ルルーシカは目を見開いていた。


「タク君、あなたを救うために、私は、私の一部をあなたに捧げたの。私は、不完全になってしまったけれど、刹那的にはすごくうれしかった。でも、今は悲しい。私とあなたは、肉体的には繋がっていても、あなたの心は、私を拒否している。それがどうしようもなく悲しい」


 タクは、ルルーシカとかなえの話に衝撃を受けていた。

 タクの耳には、雨音が響いていた。

 そして、ルルーシカの「タク!!」と何度も叫けぶあの声が耳の奥で響いていた。

 かなえの嗚咽を漏らす声すら聞こえていた。


 そのため、タクはかなえが目の前でしゃがんでいることに気がつかなった。

 かなえの両手はタクの頬にそえられ、かなえはタクの顔を凝視している。

 と、同時、かなえの顔を覆たギョロリとした目も、タクの顔を覗きこんでいた。


「―――――――!!」


 瞬間、タクは自分の置かれている状況に気がつき、体を動かそうとするも、動かすことができなった。

 声も出せない。

 かなえは、タクの耳元で囁く。


「やっと、やっと、捕まえた。――――――――俺様の一部を!!」


 かなえの声ではない、低く淀んだ男の声が、かなえの口からこぼれ出たのだ。

 

  




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