あなたは、私の一部を持っている
「どうしたのよ、タク。かなえを見つめながら驚いた顔なんかして・・・」
「うふふ、ルル。タク君は頑張ったから、少しだけ疲れているのよ。そんなこと言わないの。ルルを救うために、たくさんの困難を乗り越えて来たんだもの。私だって、ミアの拘束から救い出してくれたんだし」
「え? そうなの、タク? あんた、やるじゃない」
かなえの背後では、グミグミの奴がうごめいていた。
かなえは、風に吹かれた横髪をかきあげる仕草をする。
だが、タクは、かなえが横髪をかきあげる仕草をしながらも、
色を失った瞳で、口元に笑みを描き、
肩にこべりつくように、のしかかっているグミグミの奴の体を撫でる仕草をしたのを、
見逃さなかった。
「ルル・・・かなえだったんだ。
かなえが・・・かなえが、すべての元凶だったんだよ」
グミグミの奴は、体を伸ばし、かなえの肩から、かなえの顔へと移動した。
今、かなえの顔はグミグミの奴の体に覆われ、グミグミの奴の強大な目がかなえの顔と重なっている。
奴は言葉を発しはしないが、
体を震わせ、目の形を変え、
タクを嘲笑ているかのようだった。
「何を言っているのよ。あんた・・・ふざけているの?」
ルルーシカの言葉から喜びの色が消える。
「いや、だって、お前にも見えているだろ。俺が説明した、お前が怨念か何かの類だって言っていた奴が、かなえの顔の上で、嘲笑っているじゃないか」
「・・・かなえの、顔の上で?」
ルルーシカは目を細めて、かなえを見つめた。
数秒。
「・・・・・・やっぱり、ふざけているのは、あんたよ。私にはそんなものは見えない。
あんた、おかしくなったんじゃないの?」
「ん・・・え?」
タクには、かなえの顔を包みこみ、タクを見下ろす、あのギョロリとした目を持ったグミグミの奴がはっきりと見えていた。
しかし、
ルルーシカはそれが見えないと言う。
「タク君、どうしたの? どうして、そんなひどいことを言うの?」
かなえはタクの頬に手を伸ばしてきた。
タクには、かなえの声が二重に聞こえていた。
一方は、あの高く、優しい、かなえの声。
もう一方は、低く、不気味な、淀んだ声。
「やめろ!!」
タクは、かなえの手を払った。
「タク!!!!」
ルルーシカは叫んだ。
かなえは、払われた手を見つめ、
「どうして、どうして、タク君・・・そんなひどいことをするの? 私は、私は、私は、あなたの命を救った事があるのに。どうして・・・どうして、もう一度、私を傷つけようとするの?」
「・・・俺の命を、救った、ことが、ある?」
「そうよ、私はあなたの命を救った。ほら、タク君、あなたのお腹が脈打っているでしょ。私の一部を感じるでしょ。ルル、あなたの口から教えてあげて、あの時のことを」
「かなえ・・・」




