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私の好きな人

 かなえはタクの腹部に、優しく手を添えた。

 次の瞬間、


「ガハッ・・・」


 タクはのどの奥から息を吐き出した。

 腹部を見ると、かなえの腕から伸びる漆黒の剣が、タクの腹部を貫いていた。

 それは、パッと見、剣のように見えなくもなかったが、

 よく見ると、注射の極太の針のようにも見えた。

 剣の内部に空洞でもあるかのように、淀んでいる。


「う・・・え?・・・タ、タク・・・タク!!」


 ルル―シカの叫び声が響いた。

 かなえの腕から伸びている剣がルルーシカにどのように見えていたのかわからない。

 もしかしたら、かなえがタクの腹部に手を添えた瞬間、

 血が噴き出したかのように見えていたのかもしれない。


「あはっ、すごくいい。すごく気持ちいいわ」


 かなえは醜く歪んだ笑みをこぼす。

 片目だけを、飛び出るかと思えるくらい、大きく見開いていた。


 かなえの顔を覆ていたグミグミの奴は体を引き伸ばし、かなえ体を包み込み始める。

 首から、肩、腰、脚、そして、足先までも、かなえ全てを支配するかのように包み込む。


「くくくくく、ルル、あなたにこれを感じさせたかった」

「グアァアアッ・・・・」


 かなえが剣を押し込み、タクは口から血を吐き出した。


「ルル、どう? 大切な存在が奪われる感じは・・・苦しい? それとも悲しい? すごく私が憎いでしょ?」


 グミグミに包まれたかなえは、その中でパクパクと口を動かし、しゃべっていた。

 ルルーシカからは、グミグミに包まれていないかなえがしゃべっているように見えているのかもしれない。

 

 かなえが言葉を零すたびに、かなえの顔と重なる巨大な目は、

 かなえの感情を表現しているかのように、形を変えた。


「か、かなえ・・・ど、どうして・・・」

「ルル、まだわからないの? 私、あなたのことを憎んでいたのよ。八つ裂きにしたいくらいに・・・。

 そして、私は心の奥深くで深く傷つき悲しんできたの。

 自分の行いの後悔と迫りくる死の恐怖、そして、報われない思い・・・うふふ、すごく笑えるでしょ」

「・・・・・・」

「ルル、悲しそうな顔をしないで、いつもみたいに私に気をつかった笑顔を浮かべてよ。でないと、私、自信をもってあなたに告げられない。『タク君のことが、ずっと好きだった』ということを」

「・・・・・・え? タクのことが・・・ずっと好きだった?」


 ルル―シカの瞳が揺れる。


「あはっ、言っちゃった。告白しちゃった。

 うふふ、ええ、私、タク君のことがずっと好きだったの。ずっと、ずっと好きだったの。

 だから、禁じられた森で、私は大切な一部を捧げたのよ。なのに―――――」


 かなえは、奥歯をガリリと噛みしめる。


「私の知っているタク君はあの時、死んでしまった。死んでしまったのよ!!

 どうしてなの、どうしてよ・・・・・・、どうして・・・・・・どうして」」


 かなえは胸を押さえる。


「ぐ・・ぐるしいよおおお・・・痛いよおおおお・・・。

 こうなってしまったのも、全部、ルル!! あなたのせいよ!! あなたが禁じられた森で死ななかったから!! だから、死んでよ。消えてよ。もういなくなってよ!!」


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