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最終話

 俺は家に帰りたかった。


 ――俺はただ家に帰りたかっただけなんだ。


 彼女の顔を見たかった。


 ――母ちゃんの顔を見たかった。


 今日は彼女の誕生日だった。


 ――今日は母ちゃんの命日だった。



 あいつがやってきて村を滅ぼした。王都の連中は自分たちだけ裕福に暮らして、誰も俺たちを助けなかった。ならば、俺たちには奪う権利がある。そうだろう同志たちよ。

 轟音が前へと背中を押す。

 ●●の部下が俺の記憶を奪って力を失った●●の世話係にした。●●は何人も殺して自分だけ平気で暮らしている。

 家に帰らないと。



 ●●は眠っていた。

 記憶が戻ったのなら、こいつが目を醒ましたら魔王だ。今のうちに殺さないと。

 あの日々は揺蕩う夢のようだった。

 記憶がなければ幸せだった。

 だが、記憶が戻ったのなら殺さなくてはいけない。

 包丁を持つ手が震えた。

 ●●が目を開けた。

 そうしてキスを受け入れるように目を閉じた。


「さようなら、グレイス。愛していたよ」


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