05.ゲームの世界
冬野宮家の自室。私とめぐみはむかいあって座っていた。にこにこと笑う彼女とは対照的に私の眉間には皺が寄っている。傍に控えていた雪斗はそんな私の様子を面白がりながらも、自然な動作でめぐみにお茶のおかわりを差し出していた。
「つまりここは乙女ゲームの世界で、巫女が元の世界に戻るストーリーをあなたは選びたい、と」
「はい! それが龍臣様との通常エンドか、ハーレムエンドなんです。でもハーレムエンドはめんど……じゃなくて、難易度高いじゃないですか」
「今、めんどくさいを言い直したわね?」
「やだ~、椿ちゃん、そこはスルーしてくださいよ~」
てへぺろとでも言い出しかねないテンションでめぐみが笑う。
あのあと、私は興奮するめぐみに自分はこの世界の人間ではあるが、前世の記憶があるため普通とは少し違うということだけを説明して、いったん授業に戻った。
めぐみからも話を聞きたいのは、やまやまだったが、ここで二人して授業をさぼったりしたらまたどんな噂が立つかわからない。登校初日のめぐみはオリエンテーションとやらでほぼ一日拘束されていたため、放課後に我が家に招き、やっと今朝の発言の真意を聞き出すことができたというわけだ。
「何、勝手にちゃん付けしてるのよ」
「だって同い年だし~。同じ世界にいたんだし~。あ、椿ちゃんもめぐみちゃんって呼んでいいですよ?」
「……」
「よかったですね。友だちができて。椿様もついにぼっち卒業じゃないすか!――って、痛ぇ!」
にやにやと話に入ってくる雪斗に魔法で創り出した氷の塊を食らわせ、私はもう今日何度目かわからないくらいのため息を吐いた。面倒だから雪斗も転生者であることは黙っておこうと思ったのに、めぐみが私の前世の話を知っていると見るなり、あっさり自分からばらしたこの男のせいで、私のストレス値は限界を突破している。
「事情は分かったけど、では、私は身を引くわ、とはならないわね」
「えー、お願い! 通常エンドなら最終的に椿ちゃんが王妃になれるんですよ。ちょっと魔獣退治の間、私が恋人になるだけで」
「うわー、意外と下衆い結末。――っ痛! 今のは、俺、間違ったこと言ってないですよね!?」
再び氷の塊に向こう脛を直撃された雪斗が抗議の声を上げるが、それは無視。一拍置いてめぐみに尋ねてみる。
「本当にそれしか帰る方法はないの? 具体的にどんなエンディングがどれくらいあるのか教えてよ」
「あー、それは、私も聞いただけなので、正直あんまり詳しくないんですよね~」
「え? どういうこと?」
指を顎に添えて小首をかしげ、しれっと答えためぐみに私はまた眉根を寄せた。




