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死に戻った兵士は皇女の救済を目指す!彼女の命の重みはーー世界の破滅そのもの   作者: 詩ノ 祈


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奇襲

 監視所の通信塔が、青白い光に呑み込まれた。直後、耳を塞ぎたくなるほどの爆発音が鳴り響いた。巨大な通信塔が中央から折れ、燃えながら俺たちのいる建物へと倒れこんてくる。


「全員外へ出ろ!」


 エレナの声で、全員が一斉に走り出した。俺も近くにいた監視兵の腕をつかみ、窓から外へと飛び出した。そのすぐ後ろに、燃えた通信塔が落ちてくる。


 地面が大きく揺れ、飛び散った木片が背中に当たった。


「全員無事か!?」


「一人、足を負傷しています!」


「動けるか?」


「はい・・・何とか」


 監視所は完全に壊れていた。通信機も、記録器も、倒れた通信塔の下敷きになっている。


「通信は・・・届いたんでしょうか?」


「分からん」


 エレナが燃える監視所を見ながら、悔しそうに答えた。


「少なくとも、敵の存在と数までは伝えた。要塞も何かがおかしいとは気づくはずだ」


 再び遠くからまた砲撃音が聞こえた。一発目より近い。


「次が来ます!」


「森へ入れ! 固まって走るな!」


 俺たちが散開した直後、二発目の砲弾が監視所へ着弾した。爆風に押され、身体が前へと吹き飛ぶ。地面を転がりながらも、すぐに起き上がった。


 相手の狙いはこちらの通信手段を完全に破壊することだ。敵は最初から、この監視所の場所を知っていたのだ。


 ただ国境を越えてきたわけじゃない。ノルヴェイン要塞の情報を、細かいところまで調べている。


「要塞へ戻るぞ!」


 エレナが叫んだ。


「負傷者を二人で支えろ! 置いていくことは許さん!」


 俺たちは負傷した兵士を支えながら、来た道を走り出したのであった。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 砲撃は数発で止まった。敵も森の中にいる俺たちの正確な位置までは分からないらしい。


 だが、やはり安心はできない。背後からは戦車の炉が鳴る音が聞こえている。さらに何台もの車両が木々を押し倒し、要塞へ向かって進んでいた。


「このままじゃ追いつかれます」


 兵士の一人が、肩で息をしながら言った。


「負傷者を置いていくつもりか?」


「い、いえ! ですが・・・」


「なら走れ!」


 エレナは一度も速度を落とさなかった。昔も・・・この人はそうだった。


 どれだけ追い詰められても、負傷した兵士を置いて逃げることだけは絶対にしない。だからこそ、俺たちはこの人を信じて戦うことができた。


「少尉、俺が代わります」


 負傷者を支えていた兵士と交代し、その身体を背負った。


「歩けます! 俺のことは置いて――」


「黙ってつかまってろ」


「ですが・・・」


「この程度の重さなら問題ない」


 未来では、もっと重い装備を持って何日も歩いた。けど・・・やはり身体が違う。


 しばらく走るだけで足が重くなり、息も苦しくなってくる。十九歳の身体は、頭の中にある経験についてこられない。


 それでも、足だけは止めなかった。ここで止まれば、また同じことになる。


 仲間を置き去りにして、自分だけが生き残る。そんなのは・・・もう二度と嫌だ。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 森を抜けた時には、太陽が高く昇っていた。


 遠くにノルヴェイン要塞の外壁が見える。その上では大勢の兵士が慌ただしく動き、固定砲台へ巨大な魔晶石を運び込んでいる。


 要塞の門も、ゆっくりと閉まり始めていた。


「届いていた・・・」


 俺は安心して、思わず足から力が抜けそうになった。前の歴史では、こんな光景はなかった。


 敵の砲撃を受けてから、ようやく何が起きたのかも分からないまま武器を取った。兵士たちは配置につく前に殺され、戦車は格納庫から出ることすらできなかった。


 だけど今回は違う。


 要塞は既に、敵を迎え撃つ準備を始めている。


「門を止めろ! 偵察隊が戻ったぞ!」


 外壁の兵士が俺たちに気づき、閉じかけていた門が止まった。俺たちは残った力を振り絞り、要塞の中へ駆け込んだ。


「シオン!」


 聞き慣れた声がした。門の近くにはカイルたち三人がいた。全員が武装し、命令を待っていたらしい。


「お前、何があったんだよ!?」


「その血・・・怪我してるじゃない!」


「俺の血じゃない。負傷者を医務室へ運んでくれ」


「分かった。カイル、手伝って!」


「お、おう!」


 カイルとカレンが負傷者を受け取り、レオンが俺の背中を見た。


「シオンも血が出ている」


「少し木が刺さっただけだ」


「そうか」


 レオンはいつも通り、それ以上何も聞かなかった。


「シオン・グレイ!」


 エレナが俺を呼んだ。


「貴様も医務室へ行け」


「俺は戦えます」


「これは命令だ」


「敵の戦車は十二両です。正面から来るのはそのうち八両。残りは森の北側を回り、要塞の側面を狙います」


 前の歴史で、要塞の守りを崩した攻撃だ。正面の戦車に全員の注意を向けさせ、その間に別動隊が北側の壁を破壊する。


「なぜ、そんなことが分かる?」


「俺ならそうします」


「信じてみるとしよう、北側の守備隊へ伝えろ。戦車の別動隊を警戒させる」


「了解です!」


 近くにいた通信兵が走り出す。


「貴様は医務室で傷を見せたあと、北側の外壁へ来い」


「いいんですか?」


「貴様の予想が正しいのか、自分の目で確かめろ」


「了解です」


 その時、要塞中に警報が鳴り響いた。


『敵部隊を確認! 正面より魔導戦車八両! 距離、三千!』


 外壁の向こうから、何度も地面を揺らす音が聞こえてくる。数十年前・・・俺たちが何もできずに逃げた、ノルヴェイン要塞への奇襲。


 でも今回は、逃げない。ここで敵を止める。


 未来を変える、最初の戦いが始まった。


 皆様こんにちは!新作です!行き当たりばったりで書き進めていくタイプの話になります。

 

 この作品は、とにかく毎日投稿することを目的に書いていきます。


 思いついた日は三千文字くらいになるかもしれませんし、どうしても書けない日は千五百文字くらいになることもあると思います。


 話数ごとの文字数は安定しないかもしれませんが、毎日投稿だけは続けます!


 よければ、シオンたちの物語に最後までお付き合いください!

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