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死に戻った兵士は皇女の救済を目指す!彼女の命の重みはーー世界の破滅そのもの   作者: 詩ノ 祈


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偵察

 翌朝、まだ空が暗い時間に俺は要塞の門へと向かった。


 門の前には、既にエレナと三人の兵士が集まっていた。全員がフルで武装した状態で、背中には食料や予備の魔晶石が入った荷物を背負っている。


「遅いぞ、シオン・グレイ」


「時間には間に合ってますけど・・・」


「上官より遅く来た時点で遅刻だ」


「・・・すみません」


 どうやら昨日の模擬戦で負けたことを、まだ少し怒っているらしい。


「今回の任務は国境付近の偵察だ。ここ数日、森の中で奇妙な光を見たという報告がある」


「奇妙な光?」


「夜中に青白い光が何度か見えたそうだ、推測では魔術を行使したときに発する光と思われる。密猟者か、魔物の可能性もある。だが・・・」


「セルディキア軍の可能性もある、ということですか?」


「そうだ」


 エレナが俺の顔を見た。


「怖くなったか?」


「少しだけ」


「嘘が下手だな、貴様は」


「よく言われます」


 実際、怖い感情なんてなかった。この森でこれから何が起きるのか、俺は既に知っている。森の中にいるのはセルディキア軍で、森の奥に兵器と物資を集め、数日後にはノルヴェイン要塞を奇襲する。

 

 「出発するぞ」


 それを今日・・・俺が止める。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 国境の森は、要塞から歩いて約二時間ほどの場所にある。


 森の木々が高く、昼間でも太陽の光がほとんど入ってこない。少し離れれば仲間の姿すら見失いそうなほど、草や枝が生い茂っていた。


「足元に気をつけろ。できるだけ音を立てるな」


 先頭を歩くエレナが、小さな声で指示を出した。俺は一番後ろを歩きながら、周囲を確認する。


 懐かしさがあった、この森には嫌な記憶がたくさんある。戦争が始まってから何度もここで戦い、何人もの仲間が死んだ。木陰に敵が隠れ、足元には罠が埋められ、上からは弾丸の嵐が降っていた。


 今は鳥の鳴き声すら聞こえているが・・・戦いが始まれば、それすらも聞こえなくなる。


「止まれ」


 エレナが片手を上げた。全員がその場で動きを止め、武器を構えた。


「どうかしました?」


「前に何かいる」


 茂みの奥から、ガサガサと草を踏む音が聞こえてきた。音は一つじゃない。二つ・・・いや、三つ。


 みんなの顔に緊張が走る。俺も銃へ手を伸ばした。その瞬間、昨日と同じように銃身が僅かに熱を持った。まだ何もしてないのに。


 まただ・・・だが、今は確認している場合じゃない。茂みが大きく揺れ、黒い影が飛び出してきた。


「撃つな!」


 俺は反射的に声を上げた。


 飛び出してきたのは、角の生えた三頭の鹿だった。鹿たちは俺たちの前を横切ると、そのまま森の奥へ逃げていく。


「ただの鹿か・・・」


 兵士の一人が安心したように銃を下ろした。


「なぜ撃つなと言った?」


 エレナが俺へ振り返る。


「足音が軽かった。それに、敵兵なら三人揃って同じ場所から飛び出したりしません」


「あの一瞬で・・・?」


「昔森の育ちで」


「・・・今はそういうことにしてやろう」


 エレナは呆れたように言ったが、俺を見る目は昨日よりもさらに怪しくなっていた。だめだったか・・・?


 でもここで銃を撃てば、森の中にいる敵へ俺たちの存在が知られてしまう。


 まだ見つかるわけにはいかないんだ。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 それから一時間ほど森を進んだが、敵の痕跡は見つからなかった。


 それも当然。 俺たちが進んでいる道とは、真反対にいるんだから。


「報告にあった場所は、この辺りか」


 エレナが地図を投影し、周囲の地形を確認している。このまま真っ直ぐ進めば、何も見つからないまま要塞へ戻ることになる。


 どうする・・・?敵の補給拠点があると直接言えば、きっと怪しまれる。何か理由を作らないといけない。


「少尉」


「なんだ?」


「あそこを見てください」


 俺は近くにあった木を指差した。幹の表面が少しだけ削れ、地面の草が一方向に倒れている。


「何かが通った跡です」


「動物じゃないのか?」


「この高さまで木を削る動物はいません。それに・・・」


 俺は地面に膝をつき、土を触った。表面は乾いているが、その下は不自然なほど固くなっている。重い物が何度も通った跡だ。


「恐らく、搬送車両です」


「この森の中を?」


「はい。西へ向かっています」


 もちろん、この傷を見つけたのは偶然じゃない。前の戦争でも残っていた、戦車が通った跡だ。


「どうしますか?」


 エレナは地図と木の傷を何度か見比べたあと、俺を見た。


「西へ進む。ただし、ここからはさらに慎重に動け」


「了解です」


 どうにかうまくいった。これで・・・敵の補給拠点へ向かうことができる。


 だが、安心したのも束の間。


「シオン・グレイ」


「はい?」


「先頭を歩け」


「俺がですか?」


「車両の痕跡を見つけたのは貴様だ。どこまで見えているのか、私にも見せてもらおう」


 完全に疑われているな・・・。仕方なく俺はエレナの前へ出て、森の西側へと進み始めた。


 記憶を頼りに道を選ぶ。ただし、迷わず進めば未来を知っていることがバレる。時々足を止め、地面や木を調べるフリを死ながら、少しずつ進んだ。


 しばらくすると、どこからか低い音が聞こえてきた。


 ゴォォォ・・・という、獣の声にも似た音。だが、俺はこの音を知っている。


 魔晶石を動力にした、魔導戦車の炉が動く音だ。


「全員伏せろ」


 エレナの声で、俺たちは茂みの中へと身を隠した。少し先に、一人の兵士が立っている。


 灰色の軍服。そして肩には、セルディキア王国軍の紋章。


 やはり・・・いた。


 兵士が立ち去ったのを確認し、俺たちはゆっくりと斜面を登った。そして、その先にある窪地を覗き込んだ。


「これは・・・」


 エレナが小さな声を漏らした。


 木の枝と迷彩布で隠された十二両の魔導戦車。大量の砲弾。積み上げられた食料と魔晶石。


 百人を超えるセルディキア兵が、出撃の準備を進めていた。


 ただの偵察部隊じゃない。


 ノルヴェイン要塞を落とすために集められた・・・敵の部隊だ。


 皆様こんにちは!新作です!行き当たりばったりで書き進めていくタイプの話になります。

 

 この作品は、とにかく毎日投稿することを目的に書いていきます。


 思いついた日は三千文字くらいになるかもしれませんし、どうしても書けない日は千五百文字くらいになることもあると思います。


 話数ごとの文字数は安定しないかもしれませんが、毎日投稿だけは続けます!


 よければ、シオンたちの物語に最後までお付き合いください!

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