タイムリープ・・・?
「なんだシオン? なんで泣いてんだお前?」
カイルが不思議そうな顔で、俺を見た。カイルだけじゃない。レオンも、カレンも俺の方を見ている。
さっきまで・・・全員死んでいたはずなのに・・・
「なぁ、カイル・・・」
「あぁ?なんだよ?」
「本当に・・・カイルなのか・・・?」
「はぁ?」
考えるよりも先に、身体が動いた。俺はベットから降りると、そのままカイルの肩をつかんだ。
「痛ぇ! なんだよ!?」
生きてる・・・あの時のような血も、焼けた臭いもしない。顔だって、身体だって、どこも欠けていない。
生きている・・・本当に、生きてる。
「良かったぁ・・・」
「な、何がだよ・・・朝から気持ち悪いぞ、お前」
「みんなが・・・生きている」
「そりゃ生きてるだろ!」
カイルが俺の手を鬱陶しいそうに振り払った。その声を聞いただけで、また涙が出そうになっいた。
「シオン頭でも打ったんじゃない?」
窓際にいたカレンが、呆れた顔でこちらに近づいてきた。カレンの腕もちゃんとある。肘から先も、指も・・・全部ある。
俺はまたしても無意識に、その腕をつかんでた。
「ちょっと! 今度は何!?」
「腕が・・・ある」
「だからあるに決まってるでしょ!もう朝から何なのよ、あんた!」
カレンの拳が、俺の頬に向かって飛んできた。避けようと思えば避けられた。けど、俺は避けなかった。頬に痛みが走り、口の中に少しだけ血の味が広がった。
・・・懐かしい痛みだ。
「殴られて笑ってるよ! 怖いわよ!」
「ごめん・・・」
「お前、本当に大丈夫か?」
今度はレオンが俺の顔を覗き込んできた。もちろん、彼も無事だった
「レオンも・・・生きているんだな」
「・・・見れば分かる」
相変わらず、言葉が少ない。それが何よりも嬉しかった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
俺は三人から少し離れ、自分の体を確認した。両手があり、腹にも、胸にも傷がない。数十年の戦場で刻まれた傷跡も、きれいにすべて消えていた。
壁に掛けられた小さな鏡には、すごい若い頃の俺の顔が映っている。
シオン・グレイ・・・十九歳の時の俺だ。ヴァルフィシア帝国軍へ入隊し、ノルヴェイン要塞へ配属されたばかりの頃だ。
「夢・・・じゃないよな・・・」
頬には、カレンに殴られた痛みがまだ残っている。もし夢なら、こんなに鮮明なはずがない。軍用暦の日付も覚えている。帝国暦六一二年、白陽月一日。
俺たち四人が、初めて同じ部隊になった日だ。
そして・・・アウレシス・ヴァルフィシア第一皇女が暗殺される数か月前。
あの日、帝都で行われた戦勝記念式典。負傷兵への勲章授与中、受章者の一人が隠し持っていた銃を取り出し、皇女を至近距離から撃った。
その男はその場で近衛兵に殺され、遺体からはセルディキア王国軍の所属を示す証拠が見つかった。帝国は皇女暗殺を敵国による宣戦布告と判断。数日後には国境を越え、長い・・・長い戦争が始まった。
だが、今の俺は知っている。あの暗殺には、何かがおかしい。
戦争が始まった当時は、誰も疑わなかった。だが戦争が長引き、帝国も王国も滅びかけた頃、暗殺に使われた証拠の一部が偽物だったという噂が流れた。
真相を確かめる前に、古の封印が破られ・・・世界はああなった。
「止めないと・・・」
皇女の暗殺を止める。
そうすれば戦争は起きない・・・いや、少なくとも、あの時と同じ形では始まらないはずだ。いちゃんも、ばあちゃんも、ノエルも救える。
目の前にいる三人だって、死なずに済む。
「よし・・・」
やることは決まった。皇女に会い、暗殺のことを伝える。
・・・でも。
「どうやって会うんだ?」
今の俺は、昨日まで訓練所にいた新兵だ。皇女どころか、要塞の司令官に会うことすらできない。仮に会えたとして、数十年後から死に戻ってきました。数か月後に皇女が殺されます・・・なんて言って、誰が信じるんだ?
下手をすれば頭のおかしい奴として軍から除隊を言われる。未来の知識だけでは足りないんだ。
皇女の近くへ行けるだけの地位と、俺の言葉を信じさせるだけの実績が必要だ。
「シオン、ぼさっとしてないで着替えなさい」
カレンが軍服の上着を投げてきた。
「あと十分で集合よ。配属初日から遅刻する気?」
「集合・・・?」
「昨日説明されたでしょ。新兵の実力を見るための訓練」
その言葉を聞いた瞬間、古い記憶が蘇ってきた。そうだ・・・今日はあの日だ。
ノルヴェイン要塞に配属された新兵と、古参兵による模擬戦。俺たち新兵は何もできずに負けた。
あまりにも一方的で、カイルが一週間も笑いものにされていたのを覚えている。だが・・・今の俺は、あの頃の俺じゃない。
身体は十九歳に戻っている。それでも頭の中には、数十年分の経験と記憶が残っている。
「そうか・・・これが最初か」
「何が?」
「いや、何でもない」
俺は軍服へ袖を通し、ベットの横に置かれていた銃を持ち上げた。手に吸いつくような感覚。何千回と握ってきたこの武器だ。
俺が銃を握ったその瞬間・・・銃身に刻まれた魔導回路が、青白く光った。
「えっ?」
カレンが目を見開いた。
「今、銃が勝手に・・・」
「み、見間違いだろ」
俺はすぐに銃を背負った。こんな現象は、未来でも見たことがない。死に戻りと関係がしてるのか・・・?
「新兵ども! いつまで寝ている!」
鋭い女の声が、部屋の中に響いた。銀色の髪を後ろで束ね、軍服を一切の乱れなく着こなした若い女性士官。
エレナ・クロイツ少尉。
この時の俺はまだ知らなかったが、彼女は後に俺たちの上官となり・・・数え切れないほど、俺たちの命を救ってくれた人物だ。
「五分以内に訓練場へ来い! 遅れた奴は、その場で国境警備へ放り込む!」
エレナはそれだけ言い残し、扉を閉めた。カイルも慌てて軍服を着始める。
「やべぇ! あの女、本気でやりそうだぞ!」
「急ぐわよ!」
三人が兵舎を飛び出していく。俺は少し遅れて、その背中を追った。 未来を変えるために、まず皇女へ近づかなければならない。
そのためには・・・一兵卒のままでは駄目だ。
数十年間戦場を生き続けた俺が、果たしてどこまでやれるのか・・
まずは、この模擬戦で試させてもらう。
皆様こんにちは!新作です!行き当たりばったりで書き進めていくタイプの話になります。
この作品は、とにかく毎日投稿することを目的に書いていきます。
思いついた日は三千文字くらいになるかもしれませんし、どうしても書けない日は千五百文字くらいになることもあると思います。
話数ごとの文字数は安定しないかもしれませんが、毎日投稿だけは続けます!
よければ、シオンたちの物語に最後までお付き合いください!




